見慣れた日常に異化をもたらす|「still moving」展

2015年 5月 1日 08:00 Category : Art

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騙し絵のようにフェンスと一体化したベンチは、本展で元・崇仁小学校を含む崇仁地区一体の空間構成を手がける建築家、長坂常によるストリート・ファニチャー。彼は2010年に代官山にあった奈良県所有の空きビルを使った、オランダと日本のデザイナー、建築家が参加して行われたインスタレーション展「LLOVE」でも、中心的な活躍をした建築家。本展でもその際に出会ったオランダ、アムステルダムにあるデザインホテルを運営するスザンヌ・オクセナーも会期中にこの地を訪れ、オランダのデザイナー、イナマットとともにフェンスに囲まれた空地の一区画でワークショップを開催。地域の子供たちや大人たちが参加して賑やかに行われた。

Photo by STUDIO INAMATT

Photo by STUDIO INAMATT

崇仁地区内の屋外展示作品を探すために家々の間の路地をさまよい歩いていると、現代美術作品のような水色のフェンス越しにポップな京都タワーが目の中に飛び込んできた。低層のアパート、昭和住宅とトタン壁、置き去りにされた植物や自転車。世界的な観光都市の中心に位置しながら、界隈の賑わいとは対照的に時が止まったかのようなこの場所。今後、約10年の時をかけてこの町の佇まいは永遠に失われていく運命にある。

町中でフェンス越しに作品を見る体験は、美術館のガラス越しにアートを見る体験とは、似て非なるものだ。時間、場所、人、さまざまな関係性の中で創造されるこれらアート作品は、リアリティをもってここで暮らす人々と土地の記憶と結びつきながら今も少しずつ更新されている。目に見える風景の向こう側にある気配を、それらの作品の内側に内包しながら。


<展覧会情報>
「Still moving」
会期 開催中〜2015年5月10日(日)(元・崇仁小学校会場は期間中の金・土・日・祝、4/30のみ開館)
会場:元・崇仁小学校、崇仁地域周辺、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
開館:元・崇仁小学校 12:00~18:00、崇仁地域 終日、@KCUA 11:00~19:00
公式サイト

文、撮影/加藤孝司

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