さまざまな体験からみちびかれるアート|ホンマタカシ「Seeing Itselfー見えないものを見る」

2015年 5月 18日 12:00 Category : Art

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さらに注目したいのは竈門神社社務所裏手にある、大宰府の街を一望できる展望デッキに設置された観光双眼鏡で、参道に生い茂る樟に吊るされた直径90センチの丸い鏡をみる屋外展示作品。

現代では紅葉や桜の名所としても親しまれる竈門神社の境内。そこにあっていわゆる観光地に置かれる硬貨を投入して風景を見る大型双眼鏡が、サイトスペシフィックな意味をともなった前衛的な現代美術作品を目撃する装置になるのがおもしろい。

場所との関係性をもちながらこの場所でしかみることができない作品といえるだろう。


これまでも装置を使って自身の写真をみるという作品を、東京や金沢、丸亀などで手がけてきたホンマ氏だが、今回はその装置を使って写真を見るのではなく、鏡の映り込みだけをみる作品。もはや写された写真を見るという行為を超越し、有史以来人間という存在が向き合ってきた、見ることに問いを投げかける、『見る』ことそれ自体により近づいた作品といえるだろう。


デッキからは天気が良ければ、太宰府の街並み、九千部山、金山、井原山、そして竈門神社のある宝満山とともに霊山に数えられる脊振山などの山並みを、遮るもののない状態で眺めることができるこの場所。これら信仰の神聖な舞台ともなったこの地で、樹々に吊るされた鏡に映り込む抽象的な風景を見る体験は、目に見えるものを通じてあたかも見えないものを見ているような感覚をもたらしてくれる。

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