今週末見るべき映画「涙するまで、生きる」

2015年 5月 29日 08:00 Category : Art

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アルベール・カミュの短編小説「客」(「転落・追放と王国」所収・新潮社・窪田啓作 訳)が映画になった。「涙するまで、生きる」(RESPECTレスぺ、スプリングハズカム配給、太秦配給協力)という。おそらく、カミュの言葉「涙が出そうになるくらいに、生きなさい」からのタイトルと思われる。原作は文庫本で、わずか25ページ。登場人物は3人の男だけである。果たして、映画になるのかどうか。


原作は、このような話である。雪の舞う、荒涼としたアルジェリアの高原。小学校の教師ダリュが学校に住み込んでいる。もう子供たちは、学校に来ない季節になっている。そこに、老憲兵のバルデュッシ(表記まま)が、殺人を犯したという容疑で、アラビア人(表記まま)の男と現れる。憲兵はダリュに、隣の村タンギーまで、このアラビア人を連れていけと、命令口調で言う。断るダリュを無視して、憲兵は、アラビア人を置いたまま、学校を出ていく。その日、ダリュは、アラビア人を自由にしたのに、アラビア人は逃げずに、学校に残っている。翌朝、ダリュは、アラビア人を連れて、タンギーを目指す。


アルジェリア独立戦争のさなか、いわば、これだけの話だが、短編集のタイトル「追放と王国」が示すように、これは追放された人間、自由を束縛された人間の物語である。自由を希求し、常に、人間の尊厳を保とうとしたカミュの思いが痛切に伝わる、傑出した短編だと思う。

映画は、カミュの思いを、まさに映画的に、大きく膨らます。ただならぬサスペンス、独立をめぐるアルジェリアとフランスの戦闘、アラビア人同士の対立、ダリュとアラビア人との交情、独立を支援しフランス軍と戦うフランス人、ダリュの出自、アラビア人の置かれた現実などなどが、荒涼としてもなお美しい、アルジェリアの高原を舞台に綴られる。独立をめぐる、これは戦争である。カミュの問いは、人間にとっての自由とは何か、人間性とは何か、人間にとっての尊厳とは何か、だろう。監督のダヴィド・オールホッフェンは、カミュの問いへの、明確なひとつの答えを提出する。

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