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今週末見るべき映画「涙するまで、生きる」

2015年 5月 29日 08:00 Category : Art

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主人公のダリュに扮したヴィゴ・モーテンセンが、圧倒的にいい。口数は少なく、意志は強固。元は、イタリア軍と戦闘を交えた軍人という設定である。原作には詳しく描かれないアラブ人モハメドとの、一歩また一歩深まる交情を、きめ細やかに演じきる。ヴィゴ・モーテンセンの父はデンマーク人、母はアメリカ人。ニューヨーク生まれだが、ベネズエラ、アルゼンチンにも居住。アルゼンチン映画「偽りの人生」(イズムで紹介)では、双子の兄弟を二役で、見事に演じわけた。


暗闇、光、炎、高原、砂漠、砂嵐、雨、上る月、廃村、洞窟…。映像がことごとく美しく、息をのむほど。静かだが、緊張感みなぎるオリジナル・スコアが、印象に残る。スコアは、ロック界の詩人と言われている才人のニック・ケイブとワーレン・エリス。さらに付け加えられた音楽が、ラスト近くで流れるアルゼンチンの大歌手、カルロス・ガルデルの唄う「エル・ディア・ケ・メ・キエラス」というタンゴだ。日本では「想いの届く日」と訳されている。「偽りの人生」では、チャルロの唄う「マレバーヘ」が使われたが、どちらも、スペイン語に堪能なヴィゴ・モーテンセン主演作品らしい。それぞれ、ドラマ展開を巧みに暗示した選曲で、唸ってしまう。

アルジェリアに生まれ、育ったカミュは、フランスとの戦争に心を痛めていた。停戦を訴えたカミュは、誹謗中傷を受け、沈黙する。このいきさつは、カミュの自伝的小説を映画化した「最初の人間」(イズムで紹介)で、詳細に描かれている。原作の「客」では、誰が書いたか分からないが、教室の黒板にこうある。「お前は己(おれ)の兄弟を引き渡した。必ず報いがあるぞ」と。カミュは、作中で、一言も説明しない。映画は、原作を骨格にして、かなり肉付けし、結末さえ変更している。それでも映画は、カミュの意図したことを、だからフランスの暗部を、アルジェリア戦争の本質に迫りながら、的確に伝える。しかも、カミュが「客」では書かなかった「希望」さえも。

映画に出来るのかなと思った原作を、ここまでの映画に仕上げたのは、フランス人の監督ダヴィド・オールホッフェンのお手柄だろう。

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