今週末見るべき映画「画家モリゾ マネの描いた美女」

2015年 6月 12日 08:00 Category : Art

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19世紀のフランスである。女性が画家として自立することなど、考えられなかった時代である。絵を描きながら、ベルトはマネのモデルを続ける。やがて、プロシアとの戦争が始まる。映画は、妻のいるマネとベルトの、恋愛にも似た関係を、冷静に綴っていく。また、酷評に晒されるマネの画家としての苦悩や、マネの絵、才能に惹かれながらも、マネの人となりを知るに連れて感じるベルト自身の苦慮が、巧妙に挟み込まれる。ベルトがモデルとなったマネの傑作「バルコニー」が成立するまでの経緯が、前半のハイライトだろうか。マネの多くの傑作が登場する。「オランピア」、「草の上の昼食」、「笛を吹く少年」などなど。

姉妹がマネのアトリエで、フローベールの小説「ボヴァリー夫人」を見つける。後日、姉妹が、この小説を読むシーンがある。それぞれの人生を重ね合わせるかのように、読む。「あくる日のエマは、周りのすべてが重苦しく、現実でないように感じた。廃墟となった城に寒風が吹くように、心は悲しみに満ちた」。

やがて、エドマは結婚し、ベルトは時代に逆らうように、マネのモデルを務めながら、絵を描き続ける。
歴史に残る画家マネ、ベルト・モリゾの映画だから、という訳ではないと思うが、室内、窓辺、階段、建物、庭、海辺などなど、各シーンが、絵のように美しい。光と影のバランス、色彩、構図が、緻密に計算され尽くしている。後半、ベルトが、姉エドマの嫁いだロリアンの海辺を訪れるシーンがある。息をのむほどの美しさ。

監督は、長編劇映画は初という、女流カロリーヌ・シャンプティエ。ジャン=リュック・ゴダールの「右側に気をつけろ」、「ゴダールの決別」や、レオス・カラックスの「ホーリー・モーターズ」、マルガレーテ・フォントロッタの「ハンナ・アーレント」(イズムで紹介)、クロード・ランズマンの「不正義の果て」などの撮影監督である。初の演出とは微塵も思えない。納得である。この巧さは、劇中の音楽にも現れる。「カヴァティーヌ」などのフランスのトラディショナルが、アカペラで唄われたり、ハイドンのピアノ・ソナタの第38番が、さりげなく添えられる。

マネや印象派の絵画好きには、たまらないほどの映画だろう。絵画はイマイチの人には、画家と画家志望のモデルとの、疑似恋愛さながらのやりとり、駆け引きが、存分に楽しめる。ともかく、深く見入ってしまうほどの映像美に溢れた小粋な映画。

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