今週末見るべき映画「コングレス未来学会議」

2015年 6月 19日 08:00 Category : Art

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アンドレイ・タルコフスキー監督の映画「惑星ソラリス」の原作者で、ポーランドの作家スタニスワフ・レムの小説「泰平ヨンの未来学会議」(改訂版・早川書房・深見弾、大野典宏 訳)を、「戦場でワルツを」を監督したアリ・フォルマンが映画にした。「コングレス未来学会議」(東風、gnome配給)という。これだけの情報で、どのような映画なのか、見たくなる。


1971年に発表された原作の主な舞台は、南米のコスタリカ。世界の人口問題、食料問題を解決するための国際未来学会議が、アメリカ文明を象徴するようなホテル、コスタリカ・ヒルトンで開催されようとしている。世界じゅうから未来学の学者が集まり、泰平ヨンもその一人。会議中のホテルで、テロ事件が起こる。過激派を鎮圧するために、軍は薬物たっぷりの覚醒剤爆弾を投下する。当然、ヨンも、この薬物を吸入、2039年の世界に出くわす。その世界でヨンは・・・、といった奇想天外で、現実と幻覚の世界が渾然一体となる話である。


破天荒な小説である。ヨンが液体窒素に浸る場面では、1ページそれぞれに、「無」、「無」、「無。完璧な無。」、「なにかありそうに思えた。だがなにもなかった。無。」などと出てくる。しかも、ホテル内外の混乱が、スタニスワフ・レムの該博な知識に裏打ちされて、まるで、スラップスティック・コメディさながらのドタバタぶりで、精細に描かれていく。比喩の巧緻さも相俟って、もう、爆笑の連続である。まるで、読んでいるほうが、幻覚剤を服用しているかのような酩酊に陥る。


原作をそのまま映画にしても、これは痛烈な、一級の文明批評になるはず。1971年当時のアメリカのおぞましさ、暴力や覚醒剤の蔓延といったアメリカの堕落ぶりを、たっぷりと揶揄できるSF映画になると思う。アリ・フォルマンは、原作の背景設定、雰囲気を忠実に再構築し、まったく別のストーリー・ラインを提出する。実写の途中からアニメーションに移行、さらに結末に少し、実写を添える。アリ・フォルマン監督の映画だから、アニメーション表現は当然のことだろう。

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