今週末見るべき映画「サイの季節」

2015年 7月 10日 08:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

2012年、第13回東京フィルメックスの特別招待作品で、クロージング上映されたバフマン・ゴバディ監督の「サイの季節」(エスパース・サロウ配給)が、やっとこのほど日本で公開される。すでに3年近く、経過している。配給側のさまざまな事情があると思うが、このこと自体が、いまの日本における外国映画事情を象徴しているのではなかろうか。はなはだ主観だが、優れた映画でも、配給、公開されないことがある。興行を考えると買い付けに至らない。買い付けても、すぐ公開できない。いろんな理由があると思うが、優れた映画には、自ずと作品の持つ力があると考えている。いささか時間がかかったけれど、このほどの公開は、喜ばしい。

ほぼ3年ぶりに見た。骨太、しかも詩情豊か。静謐、そして豊穣なイメージ。リアリズムとリアリズムを超えた映像が交錯する。


イスラム革命時、反体制とされ、27年間も投獄されたクルド系イラン人の詩人サデッグ・キャマンガールの体験に基づいた映画である。1977年、詩人サヘルは、詩集「サイの最後の詩」を出版する。結婚してまだ2年、妻のミナは、軍の大佐の娘で、幸せそのものの日々である。イランに革命が起こる。ミナに想いを寄せる男アクバルの企みで、サヘルとミナは拘束される。30年後、サヘルは釈放され、生き別れたミナの行方を探す。ミナはすでにサヘルが死んだと聞かされている。ミナを諦めきれないアクバルは、執拗にミナに迫る。シンプルなストーリーだが、現在と過去を行き来しながら、サヘルの心象風景を絡めて、ドラマは進行する。

劇中、クルドの女性による朗読で、サヘルの書いた詩がいくつか、ドラマを牽引するように挿入される。この詩たちが、どれも、素晴らしい。基本的には、愛する人と引き裂かれた哀しみを詠んだ詩だが、豊富な語彙で、暗喩に満ちた言葉の数々。蜘蛛や、馬、亀、そしてサイが登場する。いずれも、深い哀しみに沈んだ、見事な言葉たち。

Related article

  • 今週末見るべき映画「終わりゆく一日」
    今週末見るべき映画「終わりゆく一日」
  • 今週末見るべき映画「インフォーマント!」
    今週末見るべき映画「インフォーマント!」
  • 2014~2015|年末年始おすすめDVD映画
    2014~2015|年末年始おすすめDVD映画
  • 映画『トロン』のように光り輝くヘルメット
    映画『トロン』のように光り輝くヘルメット
  • 今週末見るべき映画『さあ帰ろう、ペダルをこいで』
    今週末見るべき映画『さあ帰ろう、ペダルをこいで』
  • 今週末見るべき映画「シャネル&ストラヴィンスキー」
    今週末見るべき映画「シャネル&ストラヴィンスキー」

Prev & Next

Ranking

  • 1
    フォトイメージングエキスポ2007
  • 2
    レイングッズだから楽しめるド派手カラーの雨の日アイテム
  • 3
    今週末見るべき映画「1001グラム ハカリしれない愛のこと」
  • 4
    ドワネルさんがおすすめする、夏のさわやかワイン
  • 5
    ドイツのデザイン家電が100台!ミーレのショールームが目黒に
  • 6
    大人の炭酸で乾杯したい「トゥモローランド」
  • 7
    シュールに歪んだデビアス銀座が3/20オープン
  • 8
    現代アートの最先端から次世代の「視点」を見る、森美「六本木クロッシング2013展」
  • 9
    中島かずき氏インタビュー|どんなときでも、とりあえず手を動かす
  • 10
    2018年12月15日~2019年2月2日(土)Ahn Jun「One Life」展 CASE TOKYO

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加