今週末見るべき映画「ヴィンセントが教えてくれたこと」

2015年 9月 3日 08:00 Category : Art

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映画を見て、悲しいから泣くばかりではない。心ふるえて、泣けることがある。「ヴィンセントが教えてくれたこと」(キノフィルムズ配給)は、そのような映画の一本。舞台はニューヨークのブルックリン。ビル・マーレイ扮するヴィンセントという老人が、可愛がっている猫と住んでいる。身だしなみは雑、けっこう若いつもりの出で立ちで、ウォークマンを耳に、たぶん60年代、70年代のロックやフォークなどを聴いていると思われる。それは、バーのジュークボックスで、ジェファーソン・エアプレインの1967年のヒット曲「あなただけを」を聴きながら踊る、ということから分かる。ヴィンセントは、酒が好き。アメリカのクラシック三冠の最終レース、ベルモント・ステークスが行われるベルモントパーク競馬場に通うほどの競馬好き。また、ヴィンセントは、妊娠中のストリッパーとねんごろになっている。人づきあいは嫌い、気むずかしく、毒舌を吐く。家を抵当に入れた金を使い果たしたのに、古めかしいバーに入り浸っている。バーでの、くだらないジョークに、反応はゼロ。車は、クライスラーのルバロン・コンバーチブルで、いまや時代遅れの車だが、そこそこのクラシック・カーである。ヴィンセントの現実と不釣り合いな車だが、ともかく、いろいろとこだわりのある老人である。ヴィンセントは、ある少年と出会い、心を通わせる。一瞬、クリント・イーストウッドの監督・主演した「グラン・トリノ」(イズムで紹介)を思い浮かべたが、映画そのものの雰囲気は、かなり異なる。基本的にはコメディで、大笑いではないが、ニヤリするシーンが続出する。


ヴィンセントの隣に、シングルマザーと小学生のオリバーという男の子が引っ越してくる。ひょんな縁から、ヴィンセントは、オリバーのシッターを引き受けることになる。まるで、子供のようなところのある老人と、華奢だが、賢くて、大人びたところのあるオリバーは、仲良くなっていく。映画は、ヴィンセントという老人が、どのような人物なのかを、少しずつ、明らかにしていく。


こういう映画を「バディムービー」というらしいが、あまり好きな言い方ではない。ともあれ、映画の前半は、ヴィンセントとオリバーの交情が、それぞれに重要な変化をもたらしていく。笑えるシーンの多い前半から、終盤には、心ふるえる展開が待ち受けている。数多くの伏線が用意され、充実したドラマに結実していく。なにより、よく出来た脚本である。脚本を書き、監督したセオドア・メルフィによると、映画化のきっかけは、ある宿題だった、とのこと。セオドア・メルフィの姪が高校生になった。「感銘を受けたカトリックの聖人と、知人のなかで聖人にもっとも近い人物を一人ずつあげなさい」という宿題が出た。姪は、叔父を、聖人に近い人物として挙げた。

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