今週末見るべき映画「顔のないヒトラーたち」

2015年 10月 2日 08:00 Category : Art

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いまでこそ、ユダヤ人を強制収容し、虐殺したアウシュヴィッツの実情は、世界じゅうが知っていると思う。ところが、ドイツ敗戦後の10数年、1958年当時、ナチスによるアウシュヴィッツのユダヤ人虐殺の事実を知るドイツ人は少なかった。アデナウアー政権による戦後の経済復興が進むさなか、戦時下のナチス・ドイツが、アウシュヴィッツで、どのようなことをしたのかは、ほとんど闇の中であった。


「顔のないヒトラーたち」(アット エンタテインメント配給)というドイツ映画が公開される。1958年、ドイツ、フランクフルト。映画の始めのほうで、20歳になる女性が、アウシュヴィッツでの出来事を「知らない」と言う。ナチスの残党として生き残った多くのドイツ人は、沈黙し、犯した罪を忘れようとしている。ユダヤ系のジャーナリストが、かつて、アウシュヴィッツ強制収容所の元ナチス親衛隊だった人物が、一般市民として生き延びていることを突き止める。容疑者となる元ナチスの党員は、ふつうの一般市民としての生活を送っている。収容所での罪状は、幅があるが、殺人や殺人ほう助の容疑には、時効が成立しない。映画は、理想に燃える若い検察官とその仲間、ユダヤ系のジャーナリストたちが、1963年、フランクフルトで、アウシュヴィッツ裁判が開かれるまでの地味な捜査を、丁寧に描いていく。


連合国が、戦後すぐ、ドイツ戦犯を裁いたことで有名なのは、映画にもなったニュルンベルグ裁判(公開時のタイトルは「ニュールンベルグ裁判」)で、この裁判は、1946年に決着している。だが、「顔のないヒトラーたち」は、ドイツ市民が、同じドイツ市民を裁こうとする。「悪」はヒトラーだけではなく、一般市民も、である。市電の車掌をしているふつうの女性が、かつて収容所で働いていた。殺人ほう助になるのかならないのか。ベルンハルト・シュリンクの小説「朗読者」を映画化した「愛を読むひと」の後半で描かれていたのが、このフランクフルト・アウシュヴィッツ裁判である。

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