今週末見るべき映画「ヴィオレットーある作家の肖像ー」

2015年 12月 18日 08:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

もう50年近く前になるだろうか。シモーヌ・ド・ボーヴォワールが絶賛したという「私生児」(二見書房 榊原晃三、浅野八郎訳)という小説が話題になった。2段組で500ページもある大作である。作者はヴィオレット・ルデュックという女性。序文を書いたボーヴォワールがあまりにも有名だったが、作者ヴィオレット・ルデュックの名は、日本ではあまり知られていないようだ。このほど、このヴィオレット・ルデュックの人生を描いた映画「ヴィオレットーある作家の肖像ー」(ムヴィオラ配給)が公開される。


学生時代、一時、ボーヴォワールに興味を持った関係で、ヴィオレットの名は、かすかな記憶に残っていた。女性が、自らの私生活や同性異性との性体験を綴る。3作目の「破壊」は、検閲後の出版となったほど。男性作家が、たとえばジャン・ジュネが男色を描いても検閲はないが、ヴィオレットの性描写には、検閲の手が入る時代だった。

ヴィオレットがどのような女性、作家だったかを、映画は丁寧に描いていく。決して、いい性格ではなかったようだ。貪欲で、わがままで、勝気。同棲した男色の作家モーリス・サックスや、ボーヴォワールに触発され、私生活を元にした小説を書き続ける。ボーヴォワールやジュネたちが絶賛して、出版されても、さほどの反響はない。ボーヴォワールは、ヴィオレットの書いた作品を褒めたけれど、ヴィオレットと親しくなろうとはしない。むしろ、冷淡に突き放していく。映画は、ヴィオレットの苦悩やあせりを、濃密に綴っていく。


劇中、香水で有名なジャック・ゲランの別荘で、ジュネの監督する映画の撮影シーンがある。セルゲイ・エイゼンシュテインが監督した「戦艦ポチョムキン」の有名なシーン、オデッサの階段に似せたあたりは、ジュネのエイゼンシュテインへの敬意だろう。ヴィオレットは、この映画に出演するが、途中で放り出してしまう。これがきっかけで、ヴィオレットはゲランのサポートを受けることになる。出会いが人生を大きく変える見本のようなエピソードだ。

Related article

  • 今週末見るべき映画「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
    今週末見るべき映画「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」
  • 今週末見るべき映画「殯の森」
    今週末見るべき映画「殯の森」
  • 今週末見るべき映画「スポットライト 世紀のスクープ」
    今週末見るべき映画「スポットライト 世紀のスクープ」
  • 今週末見るべき映画「ストリート・オーケストラ」
    今週末見るべき映画「ストリート・オーケストラ」
  • 今週末見るべき映画「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」
    今週末見るべき映画「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」
  • マンチェスター・バイ・ザ・シー【今週末見るべき映画】
    マンチェスター・バイ・ザ・シー【今週末見るべき映画】

Prev & Next

Ranking

  • 1
    2本の紐で編み上げられた、革新的なスニーカー『UNEEK』
  • 2
    今週末見るべき映画「ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実」
  • 3
    ミラノの街で太陽光の新しい提案が輝いた!パナソニック現地報告
  • 4
    今週末見るべき映画「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」
  • 5
    今週末見るべき映画「マダム・イン・ニューヨーク」
  • 6
    世界で最も知られる日本の建築運動「メタボリズム」って?
  • 7
    太宰府 竈門神社新社務所計画プロジェクト。Wonderwall 片山正通氏、ジャスパー・モリソン氏インタビュー。
  • 8
    ウィメンズ|色彩溢れるパリスナップ(3)
  • 9
    元フランスの一流メゾン革職人が来日、受注会開催
  • 10
    最新リノベ物件事情、東京・目黒の「マンション雅叙苑」

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加