今週末見るべき映画「あやつり糸の世界」

2016年 3月 4日 08:00 Category : Art

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もう10年ほど前に、アメリカのダニエル・F・ガロイの書いた「模造世界」(創元SF文庫 中村融 訳)というSF小説を読んだことがある。原題は「シミュラクロン3」。 


小説が書かれたのは1964年だから、もう50年以上も前になる。REIN社という企業連合が、「シミュラクロン」という社会環境シミュレーターなるものを作ろうとしている。シミュレーターは、すべての世論調査を不要にし、いわば権力を独占し、多大の富を蓄える手段になる。またシミュレーターは、仮想社会を創造して、そこに仮想人間たちを住まわせることを目指している。ところが、シミュレーター開発の技術監督ハノン・J・フラーが死ぬ。後任の技術監督が、主人公のダグラス・ホールである。保安主任のモートン・リンチが、ホールに告げる。「フラーは事故死ではない」と。直後、このリンチが姿を消す。ホールの周囲の人間は、リンチという保安主任は存在しない、と言う。ホールは、シミュレーターの隠された秘密を探ろうとするが・・・。

いまほど、コンピューターが発達していない頃のフィクションである。1964年といえば、日本では東京オリンピック、東海道新幹線が開通し、中国が核実験を行った年。すでに、スーパー・コンピューターで仮想社会を創るといったフィクションが書かれていたことに驚いた記憶がある。「模造世界」は、設定の巧緻さ、展開の面白さに、謎解きのサスペンスが加わるSF小説で、実によく出来ている。この「模造世界」を原作に、1973年、ドイツのライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が、テレビ向けに映画化したのが、「あやつり糸の世界」(アイ・ヴィー・シー配給)だ。特集上映などで、ご覧になった方もいると思うが、いまだ一般公開はされず、映画が出来てから44年、やっと、このほどの公開となった。

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