今週末見るべき映画「孤独のススメ」

2016年 4月 8日 08:00 Category : Art

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 冒頭にバッハの言葉が引用される。「演奏は難しくはない。正しい時に正しい鍵盤を叩けばいい」。その通りだが、言うのは簡単である。誰しもが、正しく鍵盤を叩けるわけではない。


 舞台はオランダの田舎。初老の男フレッドは、ひとり暮らし。家に戻ると、「ヨハン 8歳」と書かれたカセットテープに聴き入る。バッハの「マタイ受難曲」の第47番「憐れみたまえ、わが神よ」だ。アルトのアリアだが、ふつう、ボーイソプラノで唄われる。「憐れみたまえ、わが神よ、わが涙のゆえに。こを見たまえ、心と眼 御前にいたく涙するを。憐れみたまえ!」(高橋昭・訳)。

 フレッドは、他人とのつきあいを避け、夕食の時間や食べるもの、日曜の教会通いなど、まるで判で押したような生活をおくっている。ある日、なかばホームレスのような無口の男と知り合う。フレッドは、この男の面倒をみるうちに、決まりきった日常が少しずつ変化していく。

 「孤独のススメ」(アルバトロス・フィルム配給)は、おおげさに言えば、人が生きることの意味を問いかけてくる。所詮、人は孤独なもの、ひとりで死んでいくものと信じている人がいるかも知れない。だが、何かしら支え合う他者の存在が、それぞれの人生を、かけがえのないものにすることだってある。いろいろと窮屈な人生ではあるが、なにも我慢することはない。他人を気にせず、自由に生きればいい。映画は、そんなちょっとした勇気を与えてくれる。

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