今週末見るべき映画「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」

2016年 5月 27日 08:00 Category : Art

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 オランダの映画監督、マイク・ファン・ディムは、1997年に撮った長編初監督作品の「キャラクター/孤独な人の肖像」で、1998年の第70回アカデミー賞の外国語映画賞を受けている。受賞後すぐ、ハリウッドからのオファーが殺到した。監督は、撮りたい企画ではないと、ことごとく拒否。そのセリフがいい。「ミシュランで星を獲ったのに、ハンバーガーなんか焼くものか」。


 まことに気骨ある作家と思う。雌伏18年、マイク・ファン・ディム監督の長編第2作目が「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」(松竹配給)だ。さすが、多くのハリウッドの企画を蹴った監督の新作である。満を持していたのだろう、これはとびきりの発想、あざやかな展開の傑作コメディだ。柳の下のドジョウ狙いが多く、お金はかかっているとは思うが、いったいに企画が貧困なハリウッドだから、これまた、「ハリウッドがリメイク権獲得」ということになるのかもしれない。ドルを積まれても、リメイク権は与えないことを望む。

 本作の主人公ヤーコブは、孤独なオランダの貴族である。広大な敷地の豪邸に住み、大勢の使用人を抱えている。高級な自動車が何台もある。幼い頃、ヨットの事故で父を亡くす。以来、顔から笑いが消え、ずっと自殺願望を持ち続けている。ヤーコブは、老いた母親が亡くなったのを機に、土地や豪邸などの莫大な財産を寄付し、自殺を図ろうとする。豪邸とはいえ、あちこちに使用人がいる。なかなか、死ねない。ふとしたきっかけで、ベルギーのブリュッセルにある奇妙な旅行代理店「エリュシオン」という会社を知る。ヤーコブは、「サプライズ」という、いつ、どのように死に旅立つかが分からないコースを提案され、契約する。そこで、ヤーコブと同様、人生に絶望し、「エリュシオン」を訪れていた若い女性アンネと出会う。ここから、話は一気に加速、二重三重のドンデン返しに、観客は、いい意味で翻弄されることになる。


 あざやかなストーリー・テリングだ。ベルギーは、法的に尊厳死が認められている国である。ありうるビジネスと思わせる設定に説得力がある。劇中で、「エリュシオン」の社長が言う。「ベルギーも老齢化が進んでいる。このビジネスは非合法だが、やがて合法化される」と。隣国オランダ人が、ベルギーの事情を知らないはずはない。背景にベルギーの現実をほのめかし、見事なエンタテインメントに仕上げた監督の演出力に、ただただ驚く。

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