今週末見るべき映画「イレブン・ミニッツ」

2016年 8月 19日 08:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

 上映時間は81分だが、「イレブン・ミニッツ」(コピアポア・フィルム配給)は、タイトル通り、さまざまな人たちの、午後5時から5時11分までの、11分間の出来事を描く群像劇だ。そもそも人生には、短い時間のあいだに、何が起こっても不思議はない。わずか11分のあいだに、とてつもない事件に出会うことだってある。何でもない日常に、とつぜん、たいへんなことが身の上にふりかかることもあるだろう。


 製作、監督、脚本は、ポーランドのイエジー・スコリモフスキである。前作の「エッセンシャル・キリング」では、アメリカ軍の追跡から、必死に逃げ延びる兵士の辿った道を、セリフのないまま、鮮やかに描ききった。ことに、生き延びようとする兵士役のヴィンセント・ギャロの力演が、光った。本作は、一転、クセのありそうな多くの人物が登場する群像劇だが、ここでもまた、少ないセリフ、きめ細かい心理描写から、監督の鋭い人間観察が堪能できる。

 精緻なまでに計算された構成、編集だ。スリリングである。わずか11分に展開する11人の人物たちの行動。いわくありげに見えるが、市井の人たちである。人間の欲望や愛、嫉妬、憎しみといった、さまざまな感情が、きめ細かく、描き込まれている。


 いずれのドラマも、実人生で起こりうることである。ところが、5時11分、起こりうるようなドラマが、突如、まったく信じられないような「出来事」に収斂していく。

 変化のある見せ方、撮影である。低いアングルから俯瞰、スローモーションなど多彩。飛行機やバイクの音、救急車のサイレンなど、エピソードの繋がり、重なりに、絶妙の効果を添える。精彩に富むサウンドスケープといえる。

 早いテンポで、驚愕のラストに突入する。こういった表現は、映画というメディアだけにしか出来ないのではないかと思う。人間を、そして世の中を、知り尽くした人にだけ、なしうる表現と思われる。

Related article

  • 今週末見るべき映画「コロンブス 永遠の海」
    今週末見るべき映画「コロンブス 永遠の海」
  • 今週末見るべき映画「メッセージ そして、愛は残る」
    今週末見るべき映画「メッセージ そして、愛は残る」
  • 今週末見るべき映画「アーティスト」
    今週末見るべき映画「アーティスト」
  • 上映作品を発表、第13回 東京フィルメックス
    上映作品を発表、第13回 東京フィルメックス
  • 今週末見るべき映画「涙するまで、生きる」
    今週末見るべき映画「涙するまで、生きる」
  • 今週末見るべき映画「ミステリーズ 運命のリスボン」
    今週末見るべき映画「ミステリーズ 運命のリスボン」

Prev & Next

Ranking

  • 1
    ニーシングの日本上陸30周年を記念する、限定リング登場
  • 2
    時を経た植物の美しさ。叢(くさむら)小田康平氏インタビュー
  • 3
    グリーン ポルシェ!  パナメーラS e-ハイブリッド
  • 4
    東京フィルメックス「木下惠介生誕100年祭」銀座メゾンエルメスでの無料上映も
  • 5
    ドイツ、インテリアファブリックの祭典で見つけたアイディアと新作
  • 6
    #謎1|パーク ハイアット 東京、その謎
  • 7
    銘酒「Ohmine」 を誕生させた秋山剛志氏に聞く―Bamboo Stylus duoで生まれる「伝え方」
  • 8
    Go East! #02:老舗道具街に新風を。「釜浅商店」
  • 9
    ベロニカとの記憶 【今週末見るべき映画】
  • 10
    ラッキー 【今週末見るべき映画】

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加