今週末見るべき映画「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」

2016年 10月 6日 08:00 Category : Art

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 編集者といっても、いろんな編集者がいる。文字通りの黒子もいれば、カリスマ的なスター編集者も多い。「ニューヨーカー」や「ヴォーグ」などの歴代編集長は、やはり、スター編集者だろう。持論だが、スター編集者がいて、その元で、縁の下の力持ちといった役割を果たせる編集者などは、理想の形ではないかと思っている。


 おなじ編集者でも、雑誌と単行本では、編集という意味では基本的に同じだが、その仕事は、いささか異なっているように思う。単行本もまた、その内容によって、編集者に求められる才覚は、大いに異なるだろう。単行本で単独の著者の場合、ひとつ言えることは、著者と編集者は、相互の信頼関係で成り立つ、ということである。

 文学作品の場合、それこそ一字一句、完璧な表現の作家もいる。編集者はラクである。では、文章表現が優れていながら、本にする場合、削除や修正が必要な場合もある。編集者は、たいへんである。

 「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」(ロングライド配給)は、後者の場合のいい例だろう。映画は、1929年から始まる。ニューヨークにある老舗の出版社チャールズ・スクリブナーズ社に在籍、アメリカの文学作品の編集者だったマックス・パーキンズと、マックスがその才能を見抜いた作家トマス・ウルフとの友情を、濃密に描いた映画である。


 実在した人物たちである。劇中には、マックスが編集を担当した作家、スコット・フィッツジェラルド、アーネスト・ヘミングウェイが、実名で登場する。

 トマスは1900年生まれ。マックスより16歳ほど若い。詩のような文章で、自伝的小説「失われたもの」を書き、あちこちの出版社、編集者に持ち込むが、どこも出版してくれない。マックスは、まだ無名だったフィッツジェラルドやヘミングウェイを売り出した、すでに辣腕の編集者である。

 トマスのパトロンで愛人だったアリーンが、マックスのもとに、トマスの原稿を持ち込む。マックスは、詩的な輝くばかりのトマスの文章に魅せられ、大幅な削除を条件にして、出版を決意する。タイトルを「天使よ故郷を見よ」と改め、トマスの処女作が世に出る。これが、ベストセラーになる。

 トマスとマックスは、あらゆる犠牲をはらいながら、次回作に取り組む。マックスには、妻と幼い娘たちがいる。アリーンは、トマスとマックスの関係に嫉妬する。やがて、トマスの2作目「時と川の」が出版される。

 「暮しの手帖」という雑誌と、何冊かの単行本の編集を、約40年ほど経験した。編集の具体的な作業は、当時といまではいささか異なるが、作家トマスと、編集者マックスのやりとりの一部始終が、痛いほど、よく分かる。強烈に羨ましいと思う。

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