今週末見るべき映画「われらが背きし者」

2016年 10月 20日 08:00 Category : Art

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 「王子たち、此処に 背きしわざは愛すれど、背きし者は忌み嫌ふ」。ジョン・ル・カレの小説「われらが背きし者」(岩波書店・上岡伸雄、上杉隼人 訳)の冒頭に、イギリスの詩人サミュエル・ダニエルの書いた詩の一節が掲げられる。ル・カレの小説は、どれもおもしろい。その多くが、映画化されている。東西冷戦後、もはやスパイ小説は成立しないかのように言われているが、とんでもない。


 ル・カレ自身、イギリスの外務省の諜報部に所属したこともあるせいか、時代背景や状況設定がリアルに描かれる。スパイものにありがちな、スーパーマンのような人物は登場しない。派手なアクションも皆無。1974年に書いた「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」(映画化されたタイトルは「裏切りのサーカス」)などは、大傑作。主人公のスパイは、妻に浮気される風采のあがらない中年男だ。スパイではあるが、家族との確執を抱えた、ふつうの人間である。


 このル・カレが2010年に書いた小説が映画になった。小説と同じタイトルの「われらが背きし者」(ファントム・フィルム配給)だ。本作もまた、スパイ小説が原作ではあるが、優れた人間ドラマ。旧ソ連から引き継いでいると思われる、ロシアでのマネー・ロンダリングをめぐって、ごくふつうの大学教授が、ロシア・マフィアとMI6(イギリス秘密情報部)の絡んだ事件に巻き込まれていく。

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