「今週末見るべき映画」2016年を振り返って選んだ10本

2016年 12月 27日 08:00 Category : Art

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 2016年が過ぎようとしている。今年も、たくさんの優れた映画を見せてもらった。日本の映画では、大ヒット作がいくつかあったが、作品の質で、特筆するほどの作品には行き当たらなかった。その点、いいなあ、また見たいなあと思った外国映画は多かった。

 映画を評価するには、いろんな方法がある。いろんな媒体で、100点満点で何点とか、満点が★5つで、★がいくつといった採点がついているが、あまり意味がないと思う。採点する人の価値観、物差しひとつで、いかようにもなるし、いくら複数の人の採点や、★の数を比べても、ただそれだけのことである。高い点数や、★の数が多いからといって、それが見る人にとっていい映画かどうか、まったく別物である。いい映画に出会える方法はひとつ。数多く見て、好きな映画、何度も見たい映画を見つけること。あまり、他人の評価に左右されないことだ。

 同じ意味で、ベスト10とやらのランク付けも、あまり意味がないと思っている。映画には、順位などはない。いいなあと思うか思わないか、また見てみたいと思うか、の2点だけである。鑑賞者ひとりひとりの価値観はバラバラである。映画に詳しい人たちの順位付けを集計、寄せ集めてのベスト10などは、価値観の相違をごっちゃまぜにして、順位を決めるようなものである。とりあえずは、最大公約数のような順位になるかもしれないが、さしたる意味はない。

 そこで、順位付けはなしに、今年公開された多くの優れた映画のなかから、いいなあ、また見たいなあと思った映画を、なんとか10本、選んでみた。公開日の関係で、レビューしたくても出来なかった映画もある。もちろん、選者の好み、価値観で選んだものだから、押しつける気持ちはさらさらない。なぜ、この映画が入っていないのかと言われても、そこはご勘弁のほどを。また、たまたま、優れた映画でも、見逃していいたこともある。あくまでも、ご参考までに、ということである。以下、公開順に列記する。

2月
レッキング・クルー 伝説のミュージシャンたち


 1960年代、70年代に、アメリカン・ポップスを聴いた人にとっては、涙の出るほどのドキュメンタリー。旧来の音楽アレンジを破壊するほどのアレンジを創造、多くのヒット曲のレコーディングに協力したミュージシャンたちの群像である。ママス&パパスの「夢のカリフォルニア」などは大傑作。イントロだけで、当時の日々を思い浮かべるほどである。

(ポニーキャニオンからDVD、ブルーレイが発売中)

4月
さざなみ


 シャーロット・ランプリングの魅力が炸裂。女の性(さが)が鬼気迫る。結婚して45年。空気のような存在の夫婦間に立ったさざなみが、大きな荒波となって、のしかかる。ささなみは、ささいなことから起こる。強靱なように見える男と女の関係は、所詮、もろくて弱い。男と女の本質を言い当て、変わることのない人生の真実を切り取る。

(TCエンタテイメントよりDVDが発売中)

5月
神様メール
 フランス映画の魅力が詰まっている。神様の存在や、聖書まで、皮肉たっぷりに笑い飛ばす。あらかじめ余命を知るとはどういうことかを問いながら、それぞれの人生の意味を問いかけてくる。キリスト復活の奇跡は、起こりうると信じることができるようだ。洒落っ気、才気にあふれたジャン・ヴァコ・ドルマル作品。

(KADOKAWA / 角川書店からDVDが発売中)

6月
シチズン・フォー スノーデンの暴露


 アメリカの国家機密が、ジャーナリストの手で暴かれる。国家による監視体制が、あちこちに敷かれていることが明白になる。インターネットが世界じゅうに張り巡らされているいま、SNS社会の盲点、欠点が露わになる。便利さの裏にひそむ恐怖である。暴露した本人のスノーデンが登場し、未来への警鐘とも言えるドキュメンタリー。

帰ってきたヒトラー


 ヒトラーのそっくりさんが現代に登場。その演説が、いままたドイツで受け入れられていく。歴史は繰り返す。一見、ドタバタのコメディに、現在、近未来の恐怖がじわじわと押し寄せる。いまの日本とて、人ごとではない。「目的は国民の幸せ」、「生き残りをかけてドイツを浮上させる」。まるで、いまの世界を象徴するかのようなセリフだ。

(ギャガからDVD、ブルーレイが発売中)

7月
映画よ、さようなら


 映画への愛に満ちあふれたウルグアイの映画。あるシネマテークが閉鎖するが、そこに勤務していた映画ひとすじの男が、自らの人生を見つける。優れた映画を上映しても、多くの観客を動員できない。別に南米の都市に限ったことではない。いまの世界的な映画状況を言い当てて、なお、映画への思いがこもっている。何度も見たくなる。

9月
チリの闘い
 これまたドキュメンタリー。チリのアジェンデ政権の崩壊を真っ正面から描く。アメリカの影は、南米にまで及び、他国の思想、富や財産、人命までも奪い去る。3部構成で4時間43分の長編だが、事実の重みに、映画の時間を短く感じる。共産党書記長の演説にある。「アメリカ企業とCIAが政府転覆を試み、今また企んでいる。チリには、人民の意志に沿って、統治する権利がある」と。

11月
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に


 アメリカの大学生たちの青春が、1970年後半からのアメリカン・ポップスとともに描かれる。いささか品のない20歳前後の若者たちだが、二度と戻らない日々を謳歌する。ことに大きな事件はおこらないが、確実におとなへの一歩を踏みだそうとする輝きに満ちている。リチャード・リンクレイター監督の、過去への慈愛に満ちたまなざしが、鋭く、優しい。

12月
ヒッチコック/トリュフォー


 かつて、トリュフォーがヒッチコックをインタビューして、「映画術」という本を書いた。映画は、この本を基にしたドキュメンタリー。全編、映画への愛に満ちている。ヒッチコックが、少しずつ、胸襟を開き、トリュフォーと心を通わせていく。思わず、トリュフォーとヒッチコックの映画を見直したくなるようなドキュメンタリー。

SMOKE デジタルリマスター版


 デジタルリマスター版による21年ぶりのリバイバル公開。原作、脚本はポール・オースターである。虚実皮膜のうちに、いろいろな人間模様が、ブルックリンの町で交錯する。人生はタバコの煙のようにはかないけれど、人間、まんざら、捨てたものではない。何度でも見続けていたい珠玉の一本。(文・二井康雄)

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