マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ 【今週末見るべき映画】

2017年 1月 20日 08:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

雑誌「暮しの手帖」の元副編集長で、映画ジャーナリストの二井康雄さんが、多くの映画の中から「今週末見るべき映画」をレビューします

 女性ふたりと男性ひとりの三角関係である。独身女性のマギーは、ニューヨークの大学に勤めていて、妻子のある文化人類学者のジョンと、いわば略奪結婚を果たす。マギーは、ジョンと暮らすうちに、ジョンがいまなお前妻のジョーゼットを愛していることに気付き、ジョンをジョーゼットに返すプランを実行に移そうとする。


 「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」(松竹配給)は、いわば、これだけの話だが、秀逸な脚本と達者な俳優が揃うと、ガラリと風格のあるコメディになる。男と女がともに暮らす意味、子どもを産み育てることの意味を、深く考えさせる。


 監督、脚本は、女優、小説家でもあるレベッカ・ミラー。著名な劇作家、アーサー・ミラーの娘で、夫が俳優のダニエル・デイ=ルイスだ。


 男性との仲が半年も続かないというマギー役は、グレタ・ガーウィグである。「フランシス・ハ」や「トッド・ソロンズの子犬物語」でも、ほどほどの美人なのに、男とのつきあいが不器用、表裏のない、いわゆる「いい人」役を、じつに軽快に演じてきた。ここでも、マギーは、やや自分勝手でお節介、善意から出た行動が裏目裏目に出る。まことに人間味あふれたキャラクターを、丁寧に演じる。脚本を書き、監督業にも進出しているほどの才人だ。

 イーサン・ホークが演じるジョンもまた、自分勝手なダメ男で、マギーと元妻のジョーゼットと、ふたりの女性の狭間で、揺れ動く男の心理と生理を、コミカルに演じる。家庭ではまるでダメ女だが、大学教授というキャリアウーマンのジョーゼット役は、ごひいきのジュリアン・ムーアである。無条件で見たくなるキャスティングだ。


 世の中には、よかれと思ってとった行動が、裏目に出ることがある。まして、他人の人生などは、とてもコントロールできるものではない。それでも、誠実に生きることは、たいへん重要だろう。生きていくことは、他人と共存することであって、いろんなトラブルの連続である。たいへんだけれど、それでも誠実に生きよう。レベッカ・ミラーのそんなメッセージが聞こえてくる。これは、レベッカ・ミラーの、まさに人間考現学といえるだろう。


 等身大のニューヨークの風景が、あちこちに出てくる。グリニッジ・ヴィレッジのワシントン・スクエア、レベッカ・ミラーが映画の勉強をしたニュースクール大学、ブルックリンにある大きな公園のプロスペクト・パークなどなど、楽しめる。


 ちょっぴり野暮ったいけれど、昔ふうの出で立ちのグレタ・ガーウィグ。洗練された衣装のジュリアン・ムーア。これまた楽しめる。

 映画のなかの人物に、自分自身を重ね合わせる。きっと、だれしも、思い当たるふしがあることと思う。笑って、楽しんで、自らの人生を考える。その意味で、「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」は、とても贅沢で、見て損のない、お徳用の映画と思う。

●Story(あらすじ)

 ニューヨーク。もう30歳を過ぎたマギー(グレタ・ガーウィグ)は、大学に勤めている。男性とのつきあいはあるものの、その仲は、半年も続かない。もはや結婚はあきらめ、シングルマザーを承知で、せめて子どもを産みたいと思っている。マギーは、大学時代の同級生で、ピクルス屋を営んでいるガイ(トラヴィス・フィメル)に、人工受精の相談をする。

 ある日、マギーは勤めている大学で、文化人類学者のジョン(イーサン・ホーク)と出会う。ジョンは、苦みばしったいい男で、見るからに知性を感じさせる。学者のジョンは、小説を書いていて、なにかとマギーに意見を求めるようになる。マギーとジョンの仲は、急接近する。

 ジョンは妻帯者である。妻のジョーゼット(ジュリアン・ムーア)は、コロンビア大学の教授で、並のキャリアウーマンどころではない。多忙にかこつけて、家事や育児はからきしダメである。ジョーゼットになりかわって、家事や育児に励むジョンは、いささかくたびれているようだ。

 一方、マギーは、ジョンの小説を「好きだ」と言ってくれる。いい仲になるのに、多くの時間はかからない。形の上では、不倫の結果の、略奪結婚となる。ジョンとマギーは結婚する。

 3年の月日が流れる。マギーに娘が生まれる。一見、幸せそうなマギーとジョンだが、現実は厳しい。ジョンは大学の仕事を辞めて、作家への夢を叶えようとしている。そんなジョンと暮らしていて、マギーは不安を覚えるようになる。当初、すべてよく見えたジョンの仕草ひとつも、いまやよく思えない。

 マギーは、ジョンとジョーゼットの子どもであるジャスティンとポールの面倒もみるようになる。やがて、マギーとジョーゼットは、親しく会話を交わすようになる。「ジョンのいうほど、ジョーゼットは悪い女性ではない」と、マギーは思うようになる。

 そして、マギーは重大なことに気づく。「ジョンはまだ、ジョーゼットを愛している」。マギーは、ジョンとジョーゼットをふたたび夫婦に戻せるよう、ある計画を思いつくのだが・・・。

<作品情報>
「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」
(C)2015 Lily Harding Pictures, LLC All Rights Reserved.
(C)Jon Pack, Hall Monitor Inc.

2017年1月21日(土)、全国ロードショー
公式サイト

Related article

  • 今週末見るべき映画「愛、アムール」
    今週末見るべき映画「愛、アムール」
  • 今週末見るべき映画「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」
    今週末見るべき映画「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」
  • 今週末見るべき映画「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」
    今週末見るべき映画「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」
  • 今週末見るべき映画「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」
    今週末見るべき映画「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」
  • 今週末見るべき映画「スポットライト 世紀のスクープ」
    今週末見るべき映画「スポットライト 世紀のスクープ」
  • 今週末見るべき映画「さよなら、人類」
    今週末見るべき映画「さよなら、人類」

Prev & Next

Ranking

  • 1
    日本橋三越本店でこの秋を彩る
  • 2
    ミラノサローネ、キッチンにルネッサンス時代が始まる?
  • 3
    今もっとも注目すべき作家・名和晃平「シンセンス」
  • 4
    ハンターバレーのワイナリー&レストラン/オーストラリアを旅する(9)
  • 5
    マンダリン オリエンタル 東京の22人のソムリエが、お気に入りワインを紹介
  • 6
    ゲラン「アクア アレゴリア」に加わる新たな香り、「リモン ヴェルデ」
  • 7
    シンガポールビエンナーレに「マーライオン・ホテル」
  • 8
    130人の渋い男が百花繚乱|写真集『JAPANESE DANDY』  
  • 9
    星のや 京都で、優雅な一人旅
  • 10
    特撮にみる職人の技術と匠の技。『館長 庵野秀明  特撮博物館  ミニチュアで見る昭和平成の技』

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加