ナイスガイズ! 【今週末見るべき映画】

2017年 2月 17日 08:00 Category : Art

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雑誌「暮しの手帖」の元副編集長で、映画ジャーナリストの二井康雄さんが、多くの映画の中から「今週末見るべき映画」をレビューします

 1977年のロサンゼルス。当時のアメリカでは、日本の車が普及、席巻する前で、一部の輸入車はあったけれど、アメリカの車がまだ幅を利かしていたころのこと。映画「ナイスガイズ!」(クロックワークス配給)には、豪華な車がズラリと出てくる。映画の冒頭、民家に突然、飛び込んでくるのはポンティアック・ファイヤバード。ほかに、オールズモビル・トロネード、フォルクスワーゲン・タイプ181、メルセデス・ベンツSEコンバーチブルW111、ポンティアック・GTO、キャデラック・ドゥビルなど。車に興味のある人なら、思わずうっとりするかもしれない。


 腕力のある示談屋と、弱々しい私立探偵がコンビを組み、失踪した若い女性を捜索する。私立探偵には、13歳のしっかりした娘がいて、ダメおやじたちに協力して、捜索を手伝う。やがて、失踪した女性が、ある映画にまつわる話に関係があり、さらに、車の排ガス規制と関連して、州司法省高官の陰謀まで絡んでくる。

 ほぼドタバタ調のコメディだが、なかなか見心地がいい。当節の映画での、目まぐるしいアクションシーンやカーチェイスには、すでに目が付いていけない身には、程良くゆるいアクションや、カーチェイスが、ちょうどいいのである。


 シリアスなドラマにしろ、コメディにしろ、よく出来た映画は、その時代背景や、人間そのものがうまく描かれている。本作では、示談屋、私立探偵、その娘の3人が活躍するが、それぞれ、どのような人物なのかが、説明過剰になることなく、巧みに描かれる。


 もちろん、当時の政治状況や、車の排ガス規制にちなんだネタが仕込んである。さらに、当時のテレビ・ドラマが頻出、ポルノ映画産業の一端が見える。また、登場人物たちの衣装への凝りかたや、60年代から80年代ころにヒットした音楽が挿入されるなど、この時代がどのような時代だったかを、さりげなく見せてくれる。

 あちこちに挟まれる音楽が楽しい。もはや定番、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの「ブギー・ワンダーランド」、「セプテンバー」をはじめ、ザ・テンプテーションズの「パパ・ワズ・ア・ローリン・ストーン」、キャプテン&テニールの「恋のデュエット」などなど。懐かしいところでは、1950年代に流行ったケイ・スターの「(エブリバディズ・ウェイティン・フォア)ザ・マン・ウィズ・ザ・バッグ」までが飛び出す。


 示談屋ヒーリーに扮したのは、ラッセル・クロウである。よくいえば貫禄、悪くいえば、ちと肥りすぎだが、元海軍にいたという設定の示談屋を、さも楽しそうに演じる。相棒になる私立探偵のマーチ役は、ライアン・ゴスリング。気弱でアル中気味、まったく「ナイスガイ」ではないが、これまた、いままで演じたことのないようなキャラクターを、さも楽しげに演じている。ライアン・ゴスリングは、この2月27日(日本時間)に発表される今年のアカデミー賞で、たくさんの部門でノミネートされている「ラ・ラ・ランド」(日本公開は2月24日)の主演男優とはとても思えないほどのコメディ演技を披露する。

 私立探偵の娘ホリーに扮したアンガーリー・ライスが、とてもいい。まだ、15、6歳と思うが、しっかりと父親たちの捜査に協力、父親以上の活躍ぶりを見せる。


 出番は少ないが、州司法省の高官役ジュディスにキム・ベイシンガーが出ている。

 これだけの俳優たちが、リラックスして演じる。しかも、時代背景がきっちり書き込まれた脚本である。おもしろいはずである。監督、脚本は、シェーン・ブラック。「リーサル・ウェポン」を書いているし、「キスキス、バンバン」で監督業にも進出している。

 人生の意味を深く考えるといった映画ではないが、きちんと時代、人間が描かれている。70年代に青春を過ごし、アメリカの車や音楽シーンに憧れた人なら、たまらなく懐かしく思うはず。


 「バッドガイズ」のふたりが、はたして「ナイスガイズ」になれるのかどうか。笑えるシーンが続出、犯罪コメディとしては優れた映画、肩のこらない、良質のエンタテインメントと思う。

●Story(あらすじ)

 いきなり、ブルーのポンティアック・ファイアバードが民家に突入してくる。自殺か他殺か分からないが、乗っていた半裸の女性が息絶える。

 1977年のロサンゼルス。腕っぷしの強い示談屋のヒーリー(ラッセル・クロウ)が、未成年の少女に手を出している男に、パンチを見舞う。

 ヒーリーは、アメリア(マーガレット・クアリー)という女性の依頼で、私立探偵のマーチ(ライアン・ゴスリング)を訪ねて、パンチを一発、見舞う。そして、アメリアからの「私を探すな」というメッセージを伝える。マーチは、妻に先立たれ、安い酒ばかり呑んでいるダメ探偵で、娘のホリー(アンガーリー・ライス)からもバカにされている。マーチは、認知症を患っているような老女から、姪ミスティの行方について依頼を受けている。なんでも、姪のことをよく知るのはアメリアという女性で、まず、アメリアを探してほしい、という依頼だった。ヒーリーの、マーチへのパンチは当然である。

 ある夜、ヒーリーが殺し屋ふうの2人組に襲われる。もちろん、ヒーリーは、持ち前の腕力や隠し持った武器で殺し屋たちを撃退する。殺し屋たちも、どうやらアメリアを探しているらしいことを悟ったヒーリーは、安い金額でマーチに、半ば強引に捜査協力をとりつける。

 マーチは、「アメリアの居るのは、たぶん、環境保護団体のデモ現場だろう」と、市庁舎前のデモ現場に、ヒーリーを案内する。アメリアは、いない。3日前にアメリアの恋人ディーンが亡くなり、そのためにデモ現場にいないことが分かる。

 ヒーリーとマーチは、映写技師のチェット(ジャック・キルマー)の案内で、ディーンの家に向かう。ところが、ディーンの家は全焼している。聞き込みの結果、ディーンは映画を作っていて、撮影したフィルムが引火しての火事だと分かる。さらに、ディーンの撮影していたのはポルノ映画で、そこにミスティが出演していたことも判明する。

 マーチとヒーリーは、ディーンの映画のプロデューサーであるシドという男をつきとめ、シドの主催するパーティに潜入する。

 パーティで、殺人事件が起こる。アメリアの行方はいまだ分からない。やがて、ヒーリーとマーチは、州の司法省長官ジュディス(キム・ベイシンガー)に呼び出され、アメリアを見つけるよう、依頼される。

 排ガス規制をめぐっての裁判で、州と車メーカーがもめている。ポルノ映画の規制もまた、ジュディスの管轄である。

 マーチとヒーリーは、アメリアの行方不明の裏に隠された陰謀に、まだ気付いていない。やがて、マーチとヒーリーは、ホリーの協力を得て、事件の真相に近づいていくのだが。(文・二井康雄)

<作品情報>
「ナイスガイズ!」
(C)2016 NICE GUYS, LLC

2017年2月18日(土)、新宿バルト9ほか全国ロードショー
公式サイト

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