カフェ・ソサエティ【今週末見るべき映画】

2017年 5月 4日 08:00 Category : Art

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雑誌「暮しの手帖」の元副編集長で、映画ジャーナリストの二井康雄さんが、多くの映画の中から「今週末見るべき映画」をレビューします

 このところ、かつての毒舌、皮肉は少なくなっているが、相変わらず達者な語り口の名人芸で、楽しませてくれる。ウディ・アレンの新作「カフェ・ソサエティ」(ロングライド配給)は、1930年代のハリウッドとニューヨークを舞台にした、大笑いのラブ・コメディ。


 1930年代のハリウッドが前半、後半は舞台をニューヨークに移す。ハリウッドを夢見て、成功を手にしようと、多くの若者がやってくる。ニューヨークから、ごく平凡な青年ボビーもそのひとり。ボビーの叔父フィルは、ハリウッドの映画業界の大物のひとりで、1930年代、多くの歌曲を書いたリチャード・ロジャースから電話が入るくらい。ボビーは、叔父のもとで働くが、なんと恋した女性ヴェロニカが叔父の愛人だった。

 ニューヨークで、ボビーは別人のヴェロニカと出会い、その面影を、ハリウッドのヴェロニカと重ね合わせる。そして、ボビーは、ふたりのヴェロニカとつきあうことになる。


 当然、ハリウッド黄金時代の1930年代の映画にちなんだセリフが続出する。フィルは、舞台に出ているポール・ムニを映画に出させようとする。そのほか、電話や打ち合わせ、食事、パーティなどなどで、ベティ・デイヴィス、ロナルド・コールマン、フレッド・アステア、ゲーリー・クーパー、グレタ・ガルボ、ルドルフ・ヴァレンチノ、バーバラ・スタインウィック、ウィリアム・パウエル、ジュディ・ガーランド、ビリー・ワイルダー、ジョン・フォード、アイリーン・ダン、バスビー・バークレー、ウィリアム・ワイラーらの名前が出てくる。そのやりとりのことごとくが、たまらなく、おかしい。


 1930年代の音楽が、コメディを彩る。クラリネット奏者にして、ジャズに造詣の深いウディ・アレンだからこその渋いナンバーがズラリ。映画のために演奏するのは、ヴィンス・ジョルダーノ&ザ・ナイトホークスという贅沢さ。レビューのためにロレンツ・ハートが詩を書き、リチャード・ロジャースが曲をつけたナンバーがズラリ。「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」、「マウンテン・グリーナリー」、「マンハッタン」、「マイ・ロマンス」などを、軽快に奏でる。さらに、ベニー・グッドマン楽団による「時さえ忘れて」、レスター・ヤングのテナーでカウント・ベイシー楽団の「タクシー・ウォー・ダンス」などなど、うっとり、ほのぼのする。


 名手ヴィットリオ・ストラーロによる撮影が凝っている。舞台となるハリウッドと、ニューヨークのブロンクスの彩度の対比。セレブが集うクラブやレストランの雰囲気。ウディ・アレン、ヴィットリオ・ストラーロともに、はじめてのデジタルカメラ撮影だそうだ。みごとな映像に、軽快な音楽がからむ。もう、無条件に楽しい。

 ボビー役は、ジェシー・アイゼンバーグ。叔父のフィル役に扮したスティーヴ・カレルが絶品。ふたりは、それぞれの役どころをいかにも楽しんで演じている風情。ハリウッドのヴェロニカ役は、傑作「アクトレス~女たちの舞台~」で、達者なところを見せたクリステン・スチュワート。ニューヨーク社交界のヴェロニカ役は、「ロスト・バケーション」に出ていたブレイク・ライブリー。


 シャネルの提供になる、ふたりのヴェロニカの衣装が、シックこの上ない。さらに、アクセサリ類が豪華そのもの。

 ウディ・アレンは、一時、パリやロンドン、ローマ、バルセロナに「浮気」をしたが、このところ、アメリカに戻ってきたようだ。あこがれの1930年代のアメリカを、描きたいように描くウディ・アレンは、自信に満ちている。


 「カフェ・ソサエティ」を見ると、久しぶりに、ウディ・アレンの旧作「アニー・ホール」や「マンハッタン」を見直してみたくなった。

 ウディ・アレン、今年82歳。次回作は、1950年代のアメリカを舞台に、ケイト・ウィンスレット、ジャスティン・ティンバーレイクを起用して描いた「Wonder Wheel」である。まことに、しあわせな監督と思う。

●Story(あらすじ)

 1930年代のハリウッド。さまざまな夢を実現しようと、多くの人がやってくる。ニューヨークから来た、ユダヤ人の青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)もそのひとり。ボビーの叔父のフィル(スティーヴ・カレル)は、映画業界の大物エージェントである。人脈は豊富、多くのスターを顧客にかかえるフィルは多忙である。

 ボビーはやっと、フィルと会う。ボビーはどこかのんびりしていて、フィルからみれば、あまり野心を感じない。とりあえず、フィルの周辺の雑用係となる。ボビーは、ハリウッド見学の案内役を、フィルから世話してもらう。フィルの秘書、ヴォニーことヴェロニカ(クリステン・スチュワート)である。若いボビーは、美人のヴォニーに一目惚れ。「恋人がいる」というヴォニーの言葉などを無視し、ボビーは、ヴォニーに猛然とアタックする。

 ボビーは、なんとか、ヴォニーの家を訪ねるところまで行くが、突然のキャンセル。それもそのはず、なんと、ヴォニーの恋人は、叔父のフィルで、いわば不倫の仲である。ボビーは、まだなにも、気が付いていない。

 家庭のある身のフィルは、迷い苦しみ、ヴォニーに別れ話をもちかける。傷ついたヴォニーは、ボビーに言う。「恋人と別れた、もうすべて終わった」と。ボビーとヴェニーの仲が急接近する。

 幸せの絶頂にあったボビーだが、なんと、フィルが離婚を決意、ヴォニーとのよりを戻そうとする。

 ニューヨークのブロンクス。あっさり失恋したボビーは、ギャングの兄、ベン(コリー・ストール)の経営するナイトクラブで働いている。ボビーは、ハリウッドで知り合ったモデルのエージェントの女性社長、ラッド(パーカー・ポージー)の協力で、兄のクラブを大改造する。これが、ニューヨークのセレブに支持され、いまや、生のバンド演奏もある「レ・トロピック」として、名所のひとつにまでなる。

 ある夜、ボビーは、店にやってきたひとりのブロンドの美女(ブレイク・ライブリー)を見そめる。ハリウッドで恋したヴェロニカと同じ名前である。

 時間が経過する。ヴェロニカと結ばれたボビーは、仕事も含めて、幸せの絶頂にいる。そんなある日、ひとりの女性がボビーの店に現れるのだが……。(文・二井康雄)

<作品情報>
「カフェ・ソサエティ」
(C)2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC
Photo by Sabrina Lantos


2017年5月5日(金)、TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
公式サイト

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