「第30回東京国際映画祭」閉幕ー東京グランプリは「グレイン」に

2017年 11月 7日 08:00 Category : Art

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 11月3日(金)、第30回東京国際映画祭が閉幕した。30回という節目の開催なのに、著名な俳優、監督のゲスト参加が少なかったせいか、いまひとつ、盛り上がらない雰囲気だった。期間中の土曜、日曜が雨だったせいもあるけれど。

 いろんな部門で、多くの映画が上映され、スケジュールの許す限り、先行試写などを含めて、たくさん見た。

 コンペティション部門は、15作品、すべて見た。開幕前の10月11日、本欄の「注目作をプレビュー
」という記事で、こう書いた。“……以上15作品。どれもまだ見ていないので、何とも予想できないが、「さようなら、ニック」、「マリリンヌ」、「グレイン」あたりが、なんらかの賞に絡みそう”と。

 結果、「グレイン」が東京グランプリを受賞。「マリリンヌ」に主演したアデリーヌ・デルミーが主演女優賞を受けた。

「グレイン」(トルコ、ドイツ、フランス、スウェーデン、カタール)
© KAPLAN FILM / HEIMATFILM / SOPHIE DULAC PRODUCTIONS / THE CHIMNEY POT / GALATA FILM / TRT / ZDF / ARTE FRANCE CINEMA 2017

 もともと、映画を見て、点数や星の数で採点するのは、あまり意味のないことと考えている。見た人の価値観、判断基準が、それぞれバラバラだし、同じ映画でも、傑作とする人もいれば、駄作と切り捨てる人もいる。

 ただし、コンペティションとなると、どれが優れているかを、相対的に評価しなければならない。映画祭の審査員を気取って、見た直後に、一応、ABCDの4段階で採点した結果をお目にかけよう。

●コンペティション部門
D・「アケラット―ロヒンギャの祈り」(マレーシア)
C・「ナポリ、輝きの陰で」(イタリア)
C・「ペット安楽死請負人」(フィンランド)
A・「さようなら、ニック」(ドイツ)
B・「グレイン」(トルコ、ドイツ、フランス、スウェーデン、カタール)
C・「グッドランド」(ルクセンブルク、ドイツ、ベルギー)
B・「ザ・ホーム 父が死んだ」(イラン)
A・「迫り来る嵐」(中国)
D・「最低。」(日本)
A・「マリリンヌ」(フランス)
B・「泉の少女ナーメ」(ジョージア、リトアニア)
C・「シップ・イン・ア・ルーム」(ブルガリア)
C・「スパーリング・パートナー」(フランス)
B・「スヴェタ」(カザフスタン)
D・「勝手にふるえてろ」(日本)

「さようなら、ニック」(ドイツ)
©Heimatfilm

「マリリンヌ」(フランス)

 15作品中、A評価は、「さようなら、ニック」、「マリリンヌ」、「迫り来る嵐」の3作品。B評価は、「グレイン」、「ザ・ホーム 父が死んだ」、「泉の少女ナーメ」、「スヴェタ」の4作品だった。ちなみに、ほかの賞を受けたのは、審査員特別賞に、「ナポリ、輝きの陰で」(C評価)。最優秀監督賞に、「アケラット―ロヒンギャの祈り」のエドモンド・ヨウ(D評価)。最優秀男優賞に、「迫り来る嵐」(A評価)のドアン・イーホン。最優秀芸術貢献賞に、「迫り来る嵐」(A評価)。最優秀脚本賞に、「ペット安楽死請負人」(C評価)。

 観客の投票で選ぶ観客賞を受けたのは、「勝手にふるえてろ」(D評価)だ。独特の映画文法で斬新な表現だった点は評価できるが、映画としての共感は、いまひとつ。映画祭に、どのような観客が多かったかを象徴的に示した結果と思われる。

 もし、審査員だったら、以下に授けたい。

「迫り来る嵐」(中国)
©The Looming Storm

●東京グランプリ 「迫り来る嵐」
●審査員特別賞 「さようなら、ニック」
●最優秀監督賞 ギヨーム・ガリエンヌ(「マリリンヌ」)
●最優秀女優賞 イングリッド・ボルゾ・ベルダル(「さようなら、ニック」)
●最優秀男優賞 ドアン・イーホン(「迫り来る嵐」)
●最優秀芸術貢献賞 「グレイン」
●最優秀脚本賞 「マリリンヌ」

 コンペティションの15作品は、世界じゅうの新作映画、1538作品から選ばれたという。ざっと、100本に1本である。選ばれた15作品で、A評価が3本だった。コンペティションは、15作品も選ぶ必要があるのかと思う。さらに絞りに絞って、せいぜい7、8作品程度にとどめてはいかがだろうか。

 他の部門で、これはいいと思った作品をいくつか。すでに公開されたり、近日公開も含まれるが、いずれ、日本でも公開されると思う。その折りにはまた見たい作品をあげておく。

「アジアの未来」部門
●「ある肖像画」(フィリピン)

「日本映画スプラッシュ」部門
●「Of Love&Law」(日本、イギリス)

「特別招待作品」部門
●「エンドレス・ポエトリー」(フランス、チリ、日本)
●「シェイプ・オブ・ウォーター」(アメリカ)
●「スリー・ビルボード」(アメリカ)
●「Ryuichi Sakamoto: CODA」(アメリカ、日本)
●「リュミエール!」(フランス)

「ワールド・フォーカス」部門
●「ガーディアンズ」(フランス、スイス)
●「イスマエルの亡霊たち」(フランス)
●「サッドヒルを掘り返せ」(スペイン)
●「Have a Nice day」(中国)
●「詩人の恋」(韓国)
●「ナッシングウッドの王子」(フランス、ドイツ)
●「こんなはずじゃなかった!」(香港、中国)

「ディスカバー亜州電影」部門
●「超級大国民」(台湾) デジタル・リマスター版

 映画祭だから、規模を大きくして、あれもこれもといった企画を実現したい気持ちもわかるが、あくまでも、作品の質を第一とすべきだろう。「えっ、これがコンペ」などといった声が、あちこちで聞かれた。

 東京国際映画祭には、多くの企業が、パートナー、スポンサーに名を連ねる。いろんな形でのサポートには頭が下がるが、「船頭多くして船山に登る」ことなく、上映作品の質を第一に、映画祭全般、ぶれることなく、とりあえずは、質、量ともに、アジア第一級の映画祭を目指してほしい。(文・二井康雄)

第30回東京国際映画祭(2017)

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