不都合な真実2:放置された地球 【今週末見るべき映画】

2017年 11月 16日 08:00 Category : Art

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雑誌「暮しの手帖」の元副編集長で、映画ジャーナリストの二井康雄さんが、多くの映画の中から「今週末見るべき映画」をレビューします

 アメリカの元副大統領だったアル・ゴアの登場するドキュメンタリー映画「不都合な真実」は、2006年に作られ、地球の温暖化を憂慮した優れたドキュメンタリーだった。第79回のアカデミー賞では、長編ドキュメンタリー賞を受けている。


 映画は、2005年、地球的な規模で気温が高かったと指摘する。パタゴニアの75年前と現在を比較する。キリマンジャロの万年雪が減少し、あと10年で雪が無くなると予想する。地球の温暖化は、世界中で進行すると警告する。2005年8月、ハリケーン・カトリーナがニューオーリンズを襲う。北極の氷が急速に溶ける。海面が6メートルも上昇すると訴える。フロリダは水没し、水面が上昇した結果、犠牲者は、上海で4000万人、カルカッタで6000万人と予想する。世界ニューヨークの世界貿易センターの跡地も海に沈むと警告する。こういった異常気象は、地球の温暖化が原因と指摘。そして、訴える。いま人間は、地球規模の危機に対処すべきだ、と。そして、いま、人類の危機だ、とも。

 一連の異常気象が、温暖化のせいだとの因果関係に、科学的な根拠があるのかとの批判もあるが、ここ10年、さらに地球の異常気象は事実と思う。


 このほど、第30回東京国際映画祭のクロージング作品として上映されたドキュメンタリー映画「不都合な真実2:放置された地球」(東和ピクチャーズ配給)は、「不都合な真実」の続編にあたり、このほどの公開となる。再び、アル・ゴアが登場し、前作からここ10年、温暖化がさらに進行した結果、ますます異常気象が起こりつつある現状に警告を発する。

 日本のあちこちでも豪雨が続く。猛暑が続く。では、地球上のみんなが、どんどんエネルギーを使い、地球上の温度が上がるとどうなるか。北極や南極の氷が溶ける。海水の温度が上がる。水分の蒸発が増えて、雨が多く降る。海面が上昇する。珊瑚礁のような立地の国は、海面に沈むことも考えられる。


 海水の温度が上がると、魚などの生態系にも大きな影響がある。日本近海にやってくるはずのウナギが来なくなる。庶民は、食べたくても食べれない。

 アル・ゴアは、訴える。地球温暖化は進行し、その影響ははっきりしている、と。さらに、温暖化を防ぐ方法は分かっている、とも。国や企業もバカではない。この10年、世界は、温暖化を防ぐことの重要性を認めている。そして、アル・ゴアは言う。「人間のひとりひとりがライフスタイルを見直し、政治家を動かすこと」と。

 先進国は、すでに、あらゆる便利さを手中におさめている。それでもなお、経済成長を目指し続けている。アホか、と思う。問題は、これから発展しようと考えている国のことである。すでに多くのエネルギーを豊かさに変えた国は、これ以上、経済成長などは考えなくてもいいのではないか。

 いまから20年前、1997年11月に発売された「暮しの手帖」(第3世紀71号)に、「グルリン新知事の決意」という記事が出ている。日本を思わせるシキシマという国の、東京を思わせる大都市、グルリンの新しい知事が、環境問題の現状を分析し、その解決に取り組む決意を語るという記事だ。もちろん知事は、大量生産、大量消費、大量廃棄に異を唱える人物で、反原発である。あるとき、知事に手紙が届く。ざっとの要旨はこうである。「あと50年も経つと、シキシマという国は大混乱となる。経済成長を目指してエネルギーを使った結果、環境問題が起きた。人間の活動が拡大し、人間の生きていける条件が悪化する。地球の温暖化ということだけでも、一つの国が海に沈んでしまうようなことがおこる。フロンなどによるオゾン層の破壊で皮膚ガンになる。空気汚染でのゼンソク、食べ物の農薬汚染、放射線、電磁波……」。知事はさらに手紙を引用する。「持続可能な、循環型の社会を目指すのなら、まず私たちの使うエネルギーの量を減らすべき。産業のほうはエネルギーの節約をすすめているが、産業で作りだすクルマやモノを、私たちがせっせと使うのなら、エネルギーの節約にはならない」と。最後に手紙は、こうしめくくる。「エネルギーのもととなる石油、石炭、天然ガス、ウラン……これには限りがある。水力、風力、太陽光、地熱などの技術を開発すること」と。

 「不都合な真実2:放置された地球」を共同で監督、撮影したのは、ジョン・シェンク。2011年には、「南の島の大統領ー沈みゆくモルディブー」を監督している。もうひとりの監督はボニー・コーエンで、「南の島の大統領ー沈みゆくモルディブー」の製作者でもある。「暮しの手帖」の記事は、すでに、海に沈みゆく国のあることを言い当てている。


 本作では、テキサス州のジョージタウンが、100%、再生可能エネルギーで電気がまかなえるようになった事例が紹介される。アル・ゴアは、グリーンランドにあるスイスの基地を訪ね、氷の動きを調査している地質学者に取材する。

 2015年11月、テロ騒動と同じ頃、パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で、パリ協定が結ばれるまでのアル・ゴアの活動ぶりが紹介される。


 さらに、アル・ゴアは、あちこちで講演する。アル・ゴアは言う。「やるべきことをやろうと思う。皆それぞれ自分に合った使命があり、人によって正しいと思うことは異なる。これは傲慢ではなく、皆がよく知っている感覚だ。私は長い間この活動をしてきたので、何が正しいかはよく分かる。迷いはない」と。

 いまのアメリカの大統領は、まるで、武器商人のよう。「不都合な真実2:放置された地球」を見ると、アル・ゴアのほうが、まっとうな大統領ではないかと思う。(文・二井康雄)

<作品情報>
「不都合な真実2:放置された地球」
(C)2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


2017年11月17日(金)、TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
公式サイト

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