ウイスキーと2人の花嫁 【今週末見るべき映画】

2018年 2月 16日 08:00 Category : Art

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 年代ものの高価なウイスキーは、ほとんど呑んだことはないが、ブレンドやシングルモルトの12年ものなら、いくつか呑んだことがある。いつも呑む安いウイスキーより、どれも、うまいなあと思う。


 構想を得て、時間をかけて、映画を撮る。どこか映画作りは、熟成させたウイスキーに似ている。「ウイスキーと2人の花嫁」(シンカ配給)は、完成までに10年、要したという。時間をかければ、いい映画ができるわけではないが、これは、時間をかけて熟成したウイスキーのような、ほんわか、幸せだなあと思わせる映画。


 実話である。1941年、ドイツ軍はロンドンを空襲する。ウイスキーは配給制で、やがて、呑めなくなってしまう。その頃、スコットランドのエリス島沖で、大量にウイスキーを積んだ貨物船が座礁、沈没する。ウイスキーはアメリカに向けての輸出品で、5万ケース、約26万本、乗せていた。関税消費税庁が、ウイスキーを回収しようとする。島民たちもまた、ウイスキーを回収しようと、大騒ぎになったらしい。


 1947年。イギリスの作家コンプトン・マッケンジーが、この海難事故をヒントに、小説「Whisky Galore」(たっぷりのウイスキー)を書く。映画にしない手はない。1949年、アレクサンダー・マッケンドリック監督が、初の長編劇映画として、「Whisky Galore!」を撮る。アメリカで生まれ、グラスゴーで育ったマッケンドリックは、その後、「マダムと泥棒」、「成功の甘き香り」といった優れた映画を撮っている。

 子どもの頃、「Whisky Galore!」を見て感動したイアン・マクリーンが、映画のリメイク権を取得、「ウイスキーと2人の花嫁」のプロデューサーとして、完成までに10年、費やしたという。いわば、10年ものの,熟成されたウイスキー、いや、映画である。


 リメイクは、原題通りで、日本語のタイトルが「ウイスキーと2人の花嫁」。代々、郵便局長を務める一家に、ふたりの娘がいる。ふたりは、やがて結婚を控えているが、結婚をめぐっては、なにかと人が集まり、ウイスキーが必需品である。そのウイスキーが、ない。

 そこに、ウイスキーを山のように積んだ貨物船が座礁し、沈没寸前となる。島の人たちは、競って、ウイスキーの回収に向かう。積み荷を見張る民兵の大尉がいる。国からは、関税消費税庁が回収にやってくる。はたして、ウイスキーの行方は……。


 スコットランドの人たちの、ユーモア感覚があふれている。国民性だろう、そのやりとりのことごとくが、皮肉たっぷりで、ニヤリとさせる。登場人物たちの、ウイスキーへの愛、情熱がハンパではない。映画のすみずみに、その愛、情熱がみてとれる。

 監督は、ギリーズ・マッキノン。1986年のエディンバラ国際映画祭で賞を受けたが、そのプレゼンターが、のちに「Whisky Galore!」を監督したアレクサンダー・マッケンドリックだった。偶然かもしれないが、これも縁だろう。



 郵便局長マクルーン役のグレゴール・フィッシャー、ワゲット大尉役のエディ・イザード、マカリスター牧師役のジェームズ・コスモの3人の、滋味たっぷり、とぼけた芝居が光る。

 「天使の分け前」など、ウイスキーにまつわる映画を見るたびに、いつもの安いウイスキーではなく、スコッチ、アイリッシュ、バーボンと種類は問わない、せめて12年ものを呑んでみたくなる。

●Story(あらすじ)
 1940年代のはじめの頃。ドイツ軍は、ロンドンを空襲している。ウイスキーをこよなく愛する人たちの住むスコットランドの小島、トディーでは、ウイスキーの配給がストップされ、パブも閉店状態である。

 島で郵便局長を務めるマクルーン(グレゴール・フィッシャー)も、ウイスキーが呑めなくなるのを嘆いているひとり。

 そんな頃、マクルーンの娘ペギー(ナオミ・パトリック)にプロポーズするべく、恋人のオッド軍曹(ショーン・ビガースタッフ)が、戦地を離れて、トディー島にやってくる。「諦めの悪いやつだ」と、マクルーンは皮肉たっぷりに呟く。

 マクルーンのもうひとりの娘カトリーナ(エリー・ケンドリック)は、いささか気の弱い教師のキャンベル(ケヴィン・ガスリー)と婚約したばかり。ところが、キャンベルの母親は頑固一徹、ふたりの結婚を認めない。そもそも、息子からの報告の前に、息子が結婚する情報を得ていて、すこぶる、機嫌が悪い。

 なにをするにも、ウイスキーがないと始まらない島民たちである。結婚式にはウイスキーがつきもの、なくてはならないものである。島民たちのウイスキーへの飢餓感はハンパではない。

 ある日、島の近くに、ニューヨークに向かう貨物船が濃霧のために座礁、沈没しそうになる。船を調べるために、島民たちは、海に出る。ちょうど、船から脱出した船員に出会い、大量のウイスキーを積んでいることが分かる。「5万ケース」という。1ケース12本として、ざっと、60万本。島民たちは、「神様からの贈り物だ」と大喜びする。

 島民たちは、「ウイスキーを救出しよう」と、揃って海に出ようとする。そこに、霧のなかから、マカリスター牧師(ジェームズ・コスモ)が現れ、「これから安息日が始まる。働いてはならない」と宣告する。ちょうど、12時、日曜日になる。

 教会で、牧師の説教が始まる。島民たちは、船が沈没するのではないかと、説教どころではない。

 島の民兵のワゲット大尉(エディ・イザード)は、戦争の知識がないのに、オッド軍曹に、えらそうに命じる。「船の積み荷を見張れ」と。

 オッド軍曹は、すでに、マクルーンから言い渡されている。「島の習慣では、男が結婚するには、婚約パーティを開いて、結婚の誓いをたてること。その場では、ウイスキーを振る舞わなければならない」と。

 オッド軍曹は、島民たちがウイスキーを回収するための名案を思いつく。ワゲット大尉、関税消費税庁が目を光らせているなか、はたして、島民たちは、沈みゆく船から、ウイスキーを回収できるのだろうか。また、マクルーンのふたりの娘は、ぶじ、花嫁になることができるのだろうか。(文・二井康雄)

<作品情報>
「ウイスキーと2人の花嫁」
(C)WhiskyGaloreMovieLimited2016

2018年2月17日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
公式サイト

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