ジャズ名盤講座第1回「ブルーノート~1500番台編」

2018年 9月 6日 00:00 Category : Art

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All About Blue Note(歴史編)



1.ビギナー向け講座:「1500番台とは?」

 世界一のジャズ・レーベルといえば、よほどへそ曲がりのジャズ・ファンでない限りブルーノートという答えが返ってくる。なぜブルーノートが世界一のジャズ・レーベルと呼ばれているのか? それは創業者にしてプロデューサーだったアルフレッド・ライオンが、常に商売抜きで優れた才能を世に紹介し続けたからだ。

 1939年にニューヨークで設立されたブルーノートは、当初ブギ・ウギ・ピアノやニューオリンズ・ジャズなどのクラシック・ジャズをカタログに並べていた。1940年代に入ると、ジャズはビバップと呼ばれるモダン・ジャズの時代を迎える。その路線に、ブルーノートは他のレーベルより一歩遅れて参入した。

 しかし、そこからは快進撃の連続である。無名だったセロニアス・モンクに最初からリーダー・レコーディングを行なわせたこともレーベルの大きな実績となった。ブルーノートには、モンクと同じようにやがてジャズの世界でスターとなるアーティストの初リーダー録音が極めて多い。

 理由は、個人レーベルの常で、予算が潤沢になかったからだ。それゆえ、有名ミュージシャンのレコーディングはできない。そこで自然と無名アーティストの録音の数が増える。それらのいくつもがやがて名盤の評価を獲得し、多くのアーティストがジャズの世界を代表する存在になっていく。それはひとえにライオンが優れた耳と見識、そしてジャズに寄せる強い愛情を持っていたからだ。

 1500番台はそれらのエッセンスといっていい。のちにジャズの世界で人気を獲得したりリーダーシップを発揮したりするミュージシャンを中心に、カタログ・ナンバー1501番から1599番までの98枚(1553番は欠番)はモダン・ジャズの初期~ハード・バップをカヴァーしている。

 これ以前にリリースされていた10インチLPシリーズの5000番台も加えれば、このレーベルから初リーダー作を発表したアーティストには、ホレス・シルヴァー、ギル・メレ、ルー・ドナルドソン、ケニー・ドリュー、ウイントン・ケリー、エルモ・ホープ、ウェイド・レイグ、クリフォード・ブラウン、サル・サルヴァドール、アービー・グリーン、タル・ファーロウ、フランク・フォスター、ジュリアス・ワトキンス、ハンク・モブレー、ルー・メッカ、ジミー・スミス、ケニー・バレル、リー・モーガン、ソニー・クラークがいる。初心者でも、これらの名前のいくつかは知っているだろう。




2.マスター向け講座:「ブルーノートは有能なスタッフ集団だった」

 1940年代から50年代にかけて、ニューヨークのジャズ・クラブでもっとも頻繁にその姿が認められたジャズ・プロデューサーがアルフレッド・ライオンだった。彼は自分の目と耳で確かめて、気に入ったミュージシャンのレコードを作っていた。ブルーノートのように個人で運営されていたレコード会社となれば、煩雑な仕事が山ほどあって、夜な夜なジャズ・クラブに足を運ぶことはよほどの情熱がないと続かない。

 それを助けたのがアイク・ケベックだ。彼は本来スイング派のテナー奏者で、1960年代にはファンキー・ジャズの佳作をこのレーベルに残している。ミュージシャンの間で顔が広いこともあって、ケベックはライオンに請われ、セロニアス・モンクやバド・パウエルをはじめ多くの有能な新人を紹介したのだった。

 ブルーノートは音楽の質ばかりでなく、ジャケット・デザインやレコーディングのクォリティにも気を配る会社だった。カメラマンでアート・ディレクターのフランシス・ウルフは、ライオンと同じドイツからの移民である。そこにエンジニアとして天才肌の感覚を持つルディ・ヴァン・ゲルダーが加わって、ブルーノートは次々とジャズ史に残る名盤を発表していく。

 それはライオンの鋭い嗅覚に加えて、有能なスタッフが一致団結をして協力したからだ。ひと目でブルーノートとわかるジャケット・デザインに加えて、モダン・ジャズの醍醐味を伝える骨太なサウンド──ブルーノートから発表される作品は、どれをとってもジャズ・ファンが納得できるものだった。
 ブルーノートの諸作に刻み込まれた音楽は、多くのミュージシャンに影響をおよぼしてきた。そればかりでなく、レコード制作の面でも、後続するプロデューサーやレコード会社のよき手本となったのである。

 とりわけ、多くのファンを魅了してやまないのが1500番シリーズと呼ばれる、1950年代半ばの数年間に製作されたアルバム群だ。この時期、ジャズはビバップからハード・バップに移行している。その変遷をつぶさに記録していたのが1500番シリーズだった。

 『アート・ブレイキー/バードランドの夜 Vol.1 & 2』(1521、1522)、『ソニー・クラーク/クール・ストラッティン』(1588)、『キャノンボール・アダレイ/サムシン・エルス』(1595)など、ジャズ・ファンをいまだに熱くさせてくれる名盤の数々がこのシリーズには並んでいる。


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