ジャズ名盤講座第1回「ブルーノート~1500番台編」

2018年 9月 6日 00:00 Category : Art

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All About Blue Note(エピソード篇)



1.ビギナー向け講座:「ジャズ・メッセンジャーズ結成秘話」

 アート・ブレイキーの『バードランドの夜』は1500番シリーズの初期を飾る名盤として愛されている。ニューヨークの「バードランド」に、ルー・ドナルドソン、クリフォード・ブラウン、ホレス・シルヴァー、そしてカーリー・ラッセルを擁したブレイキー・クインテットが出演したのは1954年2月の第3週である。録音は最終日の2月21日に行なわれた。

 このライヴが契機となって、ブレイキーとシルヴァーはクインテットをレギュラー化しようと考え始める。しかしブラウンはマックス・ローチとクインテットを結成することに決めていたし、ドナルドソンには自身のプロジェクトを進めたい意向があった。

 そこでシルヴァーとブレイキーは別々に活動することにしたが、秋になってシルヴァーに「ミントンズ・プレイハウス」から仕事の話が舞い込んでくる。それに応えて、彼はハンク・モブレー、ダグ・ワトキンス、アート・テイラーに声をかけてカルテットを結成する。

 1ヵ月もするとカルテットの演奏が形になってきた。それを聴いたアルフレッド・ライオンはレコーディングを計画する。ただし、プレスティッジでハウス・ドラマー的な存在になりつつあったテイラーに代えてブレイキーがスタジオに呼ばれる。さらに直前からグループに加入したケニー・ドーハムも参加し
て、録音はクインテットで行なわれた。

 1954年11月13日、彼らはルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで「ドゥードリン」など4曲を吹き込む。これらを収録した10インチLPの『ホレス・シルヴァー・クインテット Vol.1』は直ちに発売され、高い評判を獲得する。

 続いて年が明けた1955年2月6日、再びヴァン・ゲルダーのスタジオで「ザ・プリーチャー」をはじめとした4曲を録音し、こちらも間髪を入れずに『ホレス・シルヴァー・クインテット Vol.2』としてリリースされたのだった。

 2回目のレコーディングが行なわれた直後、ブレイキーの元にフィラデルフィアのジャズ・クラブから出演依頼が寄せられる。シルヴァーに相談すると、彼のクインテットで出演しようということになった。ただし仕事はブレイキーが持ってきたものだから、シルヴァー・クインテットは名乗れない。その結果、ブレイキーの発案で、このときからクインテットをリーダー名なしのジャズ・メッセンジャーズと呼ぶようになった。ここに、ジャズ史に名を残す名コンボが旗揚げされたのである。




2.マスター向け講座:「1500番台はライヴ・アルバムの宝庫」

 ジャズ・クラブで初めてライヴを録音したのがブルーノートだ。1938年に「カーネギー・ホール」で開かれたベニー・グッドマンの実況録音盤『ライヴ・アット・カーネギー・ホール』(ソニー)や同年の『フロム・スピリチュアルズ・トゥ・スイング』(ヴァンガード)などもライヴ録音だが、これらは狭いジャズ・クラブでレコーディングされたものとは違う。

 ジャズ・クラブでの録音となれば、限られたスペースに大きな機材を運び込まなくてはならない。誰もそんな場所で無理をしてまでレコーディングしようとは考えなかった。ところが夜ごとジャズ・クラブに出没しては好きなミュージシャンや新人を聴きまくっていたアルフレッド・ライオンは、自分が楽しんでいるクラブでの演奏も何とか録音できないものかと考える。

 ライオンはスタジオでも準備に時間をかけず、ミュージシャンがやってきたらすぐにでも録音したいと願っていた。そんな彼に応えて、エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーも短時間で楽器のセッティングが終われるようになっていた。それがライヴなら、ステージにのぼればすぐに演奏=録音が始められる。これほどライオンの要望にかなったシチュエイションはない。

 ただし、当時は性能のいい小型テープ・レコーダーが開発されていなかった。そのため、ホールでは滅多にライヴが録音されていない。機材を運び込むことも可能だが、経費がかかるし、時間もかかる。たいした売り上げが期待できないジャズでは、商売として成り立たない。そんなときに高性能の小型テープ・レコーダーが安価で売り出された。それをライオンとヴァン・ゲルダーは折半で購入したのである。

 これ以前にもジャズ・クラブで録音された演奏は残されている。しかし、それらはいずれもマニアが自作のテープ・レコーダーで録音したものであったり、ラジオ局が放送したテープを用いたものであったりした。最初からレコード化を考えて録音されたものはひとつもない。

 ブルーノートはライヴの場に進出することで、これまで以上にジャズの臨場感を伝えることになった。その第1弾として登場したのが『バードランドの夜』だ。この作品を含めて、1500番台にライヴ・アルバムは7件12枚ある。1500番台の98枚中12枚というのはかなり多い。そこにライオンの熱狂的なファン気質が感じられる。


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