ジャズ名盤講座第4回「パシフィック・ジャズ」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 9月 28日 00:00 Category : Art

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All About Pacific Jazz(ビギナー向け講座)



1.ビギナー向け講座

 ニューヨークでビバップの勢いがそろそろ下火を迎えるようになってきたころ、ロサンジェルスのハリウッドを中心にしたジャズ・シーンでは、新しい動きが起きようとしていた。1950年代初頭の話である。引き金となったのは、マイルス・デイヴィスが9重奏団で吹き込んだ『クールの誕生』(キャピトル)である。

 ニューヨーク派のミュージシャンだったマイルスは、ビバップの熱狂的でアクロバティックなソロ合戦に辟易していた。自分がやりたいのはそれとは違う。もっと落ち着いた雰囲気の中でじっくりとソロを吹きたい。その思いを実現させるために旗揚げしたのが、ブラス・アンサンブルを巧みに用いた9重奏団だった。

 1948年に結成されたグループは、しかしながらビバップの牙城を脅かす存在になれなかった。数回のライヴ演奏を終えたあとは翌年と翌々年に3回のレコーディングを行ない、消滅したのである。そしてそのときのレコードはマイルスの本拠地であるニューヨーク周辺では受けず、発売元のキャピトルが本社を置くハリウッド周辺で活動しているミュージシャンの間で話題になった。

 同じころ、ロサンジェルスを中心に映画産業に携わっていたミュージシャンは、譜面通りの演奏で明け暮れる毎日に行き詰まりを感じていた。そのはけ口として活用されたのが、ハリウッドにあったジャズ・クラブ「ヘイグ」である。ここは仕事を終えたスタジオ・ミュージシャンのたまり場で、彼らは通常の営業が終わったあと、自然発生的にジャム・セッションを繰り広げるようになっていた。それを纏めていたのが大学生のリチャード・ボックだった。

 ジャム・セッションは、やがてミュージシャンだけでなく一般のファンの間でも評判を呼ぶようになる。それを受けて、店のオーナーがボックにひとつの提案をする。スタジオ・ミュージシャンの仕事が休みになる月曜の夜に、通常の営業時間を使ってジャム・セッションを主催しないかというものだった。

 ボックは、それまでに知己を得ていたジェリー・マリガンに相談を持ちかける。彼が深夜に行なわれていたジャム・セッションのリーダー格だったからだ。マリガンは1949年から50年にかけて行なわれたマイルス9重奏団のレコーディングでもアレンジャー兼バリトン・サックス奏者として参加していた。それを終えた直後に、映画音楽の仕事を得てハリウッドに移ってきたのである。

 マリガンの仕事仲間を中心にした「ヘイグ」のジャム・セッションは最初から大評判を呼ぶ。その中には除隊したばかりのチェット・ベイカーも含まれていた。そしてボックは、このセッションで人気を呼んでいたマリガンとベイカーを中心にしたコンボでのレコーディングを企画する。

 当初は「ヘイグ」のライヴを録音するつもりだった。ところがマリガンの意向で、リハーサルもきちんとやって、その上でスタジオ・レコーディングが行なわれる。経費はかさんだが、足りない分はボックが借金して、晴れてスタジオ・レコーディングが敢行される。これがパシフィック・ジャズの記念すべき幕開けとなった。

 1952年にパシフィック・ジャズは創設されたが、当初はボックと、レコーディングの資金を貸してくれたドラム・ショップ「ドラム・シティ」のオーナーであるロイ・ハートの共同経営だった。資本金は350ドルで、これではオフィスを借りることもできない。そこでハートの好意から、「ドラム・シティ」の一角をオフィス代わりに使わせてもらうことになった。

 ボックはピアニストのジミー・ロウルズのレコーディングを最初に実現させるべく、マリガンのグループに彼も加えたセッションを考えていた。ところが、いくつかの理由からロウルズは不参加になり、その結果、この年の8月16日にマリガンとベイカーを中心にしたピアノレス・カルテットで1回目のレコーディングが行なわれる。当時はLPが存在していなかったから、第一弾として登場したのはそのセッションで収録された曲の中から「バーニーズ・チューン/木の葉の子守唄」がSP盤としてシングル発売された。

 この時代、西海岸でモダンなスタイルのジャズを本格的に発売するレーベルはほかに目立つものがなかった。しかしライヴ・シーンでは、東海岸のビバップやハード・バップに対抗できる新しいタイプのジャズが日常的に演奏されていた。パシフィック・ジャズは「ヘイグ」に出入りしていたミュージシャンを次々と起用することで、意図したものかそうでないものかは判然としないが、結果として西海岸で演奏されていたもっとも新しいスタイルのジャズを記録することになった。

 翌年にはレスター・ケーニッヒが設立したコンテンポラリー・レーベルも新しいタイプのジャズを積極的にリリースするようになって、これらふたつのレーベルがウエスト・コースト・ジャズ隆盛の礎になっていく。



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