ジャズ名盤講座第4回「パシフィック・ジャズ」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 9月 28日 00:00 Category : Art

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All About Pacific Jazz(マスター向け講座)




2.マスター向け講座

 パシフィック・ジャズは、東海岸でいえばビバップ〜ハード・バップを背景に成り立っていたブルーノートやプレスティッジに相当するレーベルだ。東海岸のジャズが黒人中心だったのに対し、西海岸のジャズは白人中心だった。この違いが、そのままジャズのスタイルに反映されている。

 西海岸ではジャズがハイセンスな音楽、あるいはクラッシーなひとたちにとってのエンタテインメントと考えられていた。そこも、黒人主体の東海岸におけるジャズの扱われかたとはまったく違う。男性雑誌の「エスクァイア」誌にはじまり、やがて「プレイボーイ」誌や「エスカペイド」誌などがジャズを盛んに取り上げたことも、白人文化に影響を与えている。そんな背景も関係して、ウエスト・コーストでは特有のジャズ文化が育まれていく。

 主役はパシフィック・ジャズであり、少し遅れて登場するコンテンポラリーだった。そして、これらふたつのレーベルでレコーディングするアーティストがウエスト・コースト・ジャズをブームにまで導いていく。コンテンポラリーというライヴァル・レーベルがなければ、パシフィック・ジャズが隆盛を誇ったかどうかはわからない。逆も真なりである。そして、これは東海岸のブルーノートとプレスティッジの関係とも似ている。

 ともあれ1952年に設立されたパシフィック・ジャズは、有能なミュージシャンが周辺にいたことから次々と素晴らしいレコーディングを重ねていく。当初はLPが存在しなかったため、SP盤での発売だった。12インチのLP化に踏み切るのは1956年からだ。話がややこしくなるので、ここではSP盤については触れないことにする。

 パシフィック・ジャズの魅力は、最初の企画番号であるPJ-1200番台に集中している。創立以来リリースされてきたSPと10インチLPの再発も含めて、1950年代にこのレーベルで残された主要な演奏はすべて1200番台に網羅されている。最後を飾った1299番(『キミオ・エトウ&バド・シャンク/コト&フルート』)が1960年の録音で、その後はWP-1401に引き継がれる。

 1200番台は、1958年から社名がワールド・パシフィックに変更されたことにより、レーベルにワールド・パシフィックのロゴが用いられるようになった。正確にはわからないが、1238番の『チコ・ハミルトン/サウス・パシフィック・イン・ハイ・ファイ』でこのレーベルが確認されている。またワールド・パシフィックを意味するWPの符丁は、それより遅れて1243番の『ザ・マスターサウンズ/キスメット』から用いられるようになった。

 WP-1400番台シリーズは1450番まで続き、途中の1433番からはステレオ盤(WPS-21433)も同時に発売が開始されている。モノラル盤はWP-1450番で終了したが、その後もWPSシリーズは継続され、21467盤まで続いた。

 一方1962年からはWP-1800シリーズがスタートし、1833番まではモノラル(WP)にもステレオ(ST)にも同じ4桁の番号が使用されている。1834番のステレオ盤はリリースされず、1835番からステレオ盤はWPS-21835と符丁も番号の桁数も変更されるようになった。モノラル盤は1873番で終了し、以後はステレオ盤のみで、こちらはWPS-21904盤まで継続されている。

 そのほか、パシフィック・ジャズには傍系レーベルもいくつかある。1200番シリーズと同じ1956年にスタートしたのがパシフィカで、こちらは『ジョニー・ホリデイ/シングス』を第1弾にわずか9枚がリリースされただけで終わった。そのほかコンピレーション専門のジャズ・ウエスト・コースト・シリーズが15枚あるが、これら2レーベルはプレス枚数が少なく、短期間しか存在しなかったこともあり、レコード・マニア垂涎のコレクターズ・アイテムになっている。

 パシフィック・ジャズは1964年に創立者のボックともどもメジャー・レーベルのリバティに吸収合併される。その後も彼は1977年までレーベルに携わったが、レコーディングは1970年代初頭で打ち切られている。ちなみにWPSシリーズの最後を飾った21904番は1969年に録音された『ザ・フォーチンズ/ザット・セイム・オールド・フィーリング』だが、再発やコンピレーションを中心にした「パシフィック・ジャズ・ニュー・シリーズ」には、1970年の録音と推定される『リチャード・ホルムズ/カム・トゥゲザー』も含まれている。

 パシフィック・ジャズの功績は、ウエスト・コースト・ジャズの一時代を築いたことにある。ジャケット・デザインや音質の秀逸さにも目を向けられてしかるべきだ。総じて良質な内容を誇ったことが、いまも高い人気を維持している最大の理由だ。タイミングもよかったし、リチャード・ボックという優れたプロデューサーによって運営されていたことも無視できない。



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