ジャズ名盤講座第5回「ベツレヘム」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 10月 5日 00:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

All About Bethlehem(マスター向け講座)




2.マスター向け講座

 優れたレーベルには優れた人材が揃っている。ベツレヘムも例外でない。創立メンバーのふたり、ガス・ウィルディとレッド・クライドについては「ビギナー向け講座」で紹介した。もうひとり、創立直後に入社したクリード・テイラーも極めて重要な人物である。彼はのちにヴァーヴの主任プロデューサーとなり、次いでA&Mに当時としては破格の100万ドルで移籍。のちに独立して伝説的なフュージョン・レーベルのCTI(クリード・テイラー・インコーポレイテッド)を興す人物である。

 テイラーがベツレヘムで働いていたのは1956年夏までだが、その間にカタログの根幹を成すいくつもの名盤を制作した。退職したのは、ABCパラマウントがジャズ部門をスタートさせたからだ。そしてこちらでさらなる活躍を示し、名プロデューサーとして躍進していく。

 テイラー以外、ベツレヘムでプロデューサーを務めた主なひとには、ロサンジェルス録音のヴォーカル物を数多く手がけたサイ・オリヴァー、ジャズ・メッセンジャーズ、ハービー・ニコルズ、チャールス・ミンガスなどのニューヨーク録音を担当したリー・クラフト、あとはアルバート・マルクスやテディ・チャールズなどがいる。

 チャールズは1950年代のプレスティッジやアトランティックで優れた作品を残している白人ヴァイブ奏者だ。ベツレヘムにおける功績の中で一番顕著なものは、マル・ウォルドロンに『レフト・アローン』を吹き込ませたことだろう。アルバムの最後には、チャールズが聴き手になって、マルがホリデイの想い出を語るインタヴューも収録されている。

 レコード、とくにジャズ・レコード専門のレーベルは、個人経営の色彩が強い。ベツレヘムも東西の海岸にオフィスを構えていたものの、基本的にはオーナーであるウィルディの好みが反映されていた。

 ウィルディが音楽と同等に重視したのが音質とデザインである。ウエスト・コーストでのレコーディングは、主としてハリウッドにあったキャピトル・スタジオが使われている。理由は、ヴァル・ヴァレンタインという優れたエンジニアがいたからだ。ヴァレンタインは、クリード・テイラーとのコンビでフランク・ロソリーノやコンテ・カンドリなどのウエスト・コースト・ジャズの名盤を残している。そしてこのコンビはやがてヴァーヴに場を移し、優れたアルバムやヒット作を多数残したのだった。

 ニューヨークで主に使われていたのはラジオ・レコーダーズ・スタジオで、こちらの主任エンジニアはフランク・アビーである。ジョニー・キューというセカンド・エンジニアが手がけた作品も少なくない。そのほか、アトランティックでエンジニアを任されていたトム・ダウドや、ジャズ・レコーディングでは第一人者になっていたルディ・ヴァン・ゲルダーが担当した作品もある。

 ベツレヘムは素晴らしいジャケット・デザインでもひとの目を引く。何人かのデザイナーが起用されているが、レーベルの顔となっているのはバート・ゴールドブラットが手がけたジャケットである。初期の10インチ盤はほとんどが彼のデザインで、とりわけ素晴らしいのが『チャーリー・マリアーノ・セクステット』だ。グリーンの地に、シンプルだがメカニカルな構造を持つサックスを横向きに配したデザインは、アーティスト写真を用いて鮮烈な印象を与えたフランシス・ウルフのブルーノートに匹敵する。そのほか、コンテ・カンドリの『シンシアリー・コンテ』や、スチュ・ウィリアムソンの『サファイア』なども、思わずジャケ買いしたくなるほど素晴らしい。

 ベツレヘムを極めるなら、レコード番号についても知っておいたほうがいい。最初のシリーズが1954年から55年7月までリリースされた10インチ・シリーズだ。こちらはBCP-1001から始まって1040まで続く。そのうち1037と38が欠番と思われるから、38枚のアルバムが1年足らずで発売されたことになる。これはマイナー・カンパニーとしては異例の多さだ。

 続いて12インチLPに規格が変わり、最初のデラックス・シリーズがスタートする。BCP-1から92までがこのシリーズで(欠番なし)、82番以降はコンピレーションになっているから、実質は1957年11月に録音されたBCP-81の『ハービー・ニコルズ/ラヴ・グルーム・キャッシュ・ラヴ』が最後の作品だ、1956年からは平行して6000番シリーズ(BCP-6001~73:6060のみ欠番)も始まり、これらふたつがベツレヘムの主体をなしている。その他のシリーズとしては、ポピュラー・ミュージック寄りのBCP-5001~5と、6000シリーズと連動した形の企画盤EXLP-1~3がある。気になるラスト・レコーディングは1962年11月26日にシンシナティで録音された『ミルト・バックナー/ニュー・ワールド・オブ・ミルト・バックナー』(6072)だった。



Related article

  • ジャズ名盤講座第16回「コンテンポラリー編」ビギナー向け19選!マスター向け19選!
    ジャズ名盤講座第16回「コンテンポラリー編」ビギナー向け19選!マスター向け19選!
  • ジャズ名盤講座第24回「ECM編」
    ジャズ名盤講座第24回「ECM編」
  • ジャズ名盤講座第1回「ブルーノート~1500番台編」
    ジャズ名盤講座第1回「ブルーノート~1500番台編」
  • ジャズ名盤講座第29回「Fantasy+Milestone編」ビギナー向け9選!マスター向け9選!
    ジャズ名盤講座第29回「Fantasy+Milestone編」ビギナー向け9選!マスター向け9選!
  • Selim Slive Elementz 第2弾 Live Recording音源 Ultra Vybeより発売
    Selim Slive Elementz 第2弾 Live Recording音源 Ultra Vybeより発売
  • ジャズ名盤講座第10回「ヴァーヴ編(その3)」ビギナー向け9選!マスター向け9選!
    ジャズ名盤講座第10回「ヴァーヴ編(その3)」ビギナー向け9選!マスター向け9選!

Prev & Next

Ranking

  • 1
    山中俊治ディレクション「骨」展
  • 2
    コムロタカヒロ氏、インタビュー。「KISS THE HEART#3」
  • 3
    舞台「趣味の部屋」レビュー
  • 4
    今週末見るべき映画「幸せのありか」
  • 5
    江戸な縁起ものを暮らしに/其の二「江戸扇子/伊場仙」
  • 6
    デザインから見る、新型MacBookの凄さ(2)
  • 7
    30年ぶりの大規模な「フランシス・ベーコン展」
  • 8
    閉幕まであとわずか、必見のディーター・ラムス展
  • 9
    美山荘(京都・花背)/美味しい宿、美味しい旅(1)
  • 10
    「西野達 別名 大津達 別名 西野達郎 別名 西野竜郎」出版記念展

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加