ジャズ名盤講座第8回「ヴァーヴ」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 10月 26日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About Verve(ビギナー向け講座)



1.ビギナー向け講座(クレフ、ノーグラン、ヴァーヴの歴史をたどる)

 1944年にジャズ好きの青年ノーマン・グランツが開催したJ.A.T.P.(ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック)コンサートからすべてが始まった。これはロスにあるフィルハーモニック・オーディトリアムというクラシック専門の会場を借りてのシリーズ・コンサートである。それらはグランツの手によってすべてが録音され、そのライヴ・テープは1946年からマーキュリーを通してJ.A.T.P.シリーズとしてリリースされるようになった。

 グランツがレコード・プロデューサーとして大きな前進を遂げるのは1951年にクレフを興してからだ。マーキュリーを離れて独立した彼は、積極的にスタジオ・レコーディングを重ねていく。以後はチャーリー・パーカー、オスカー・ピーターソン、アート・テイタム、エラ・フィッツジェラルド、バド・パウエル、ルイ・アームストロングなど、次々と大物アーティストによる作品を制作してレーベルを軌道に乗せる。また大物同士の顔合わせも頻繁に行ない、これがプロデューサー=グランツの名声を確立することになった。

 マーキュリー時代から、グランツはレコードが消費財でなく、音楽=芸術の一種をひとびとに提供する文化と考えていた。そこでジャケットのデザインにも意匠を凝らすため、予算を割いてカヴァー担当ディレクターにイラストレーターのデヴィッド・ストーン・マーチンを迎える。「J.A.T.P.シリーズ」をはじめ、多くのジャケットを彼のイラストで飾ることにより、外見からの特徴も強く打ち出したのである。

 グランツがプロデューサーとして本領を発揮するようになったのがクレフ時代からだ。サウンドにも細心の注意を払い、大物同士の顔合わせであっても単なる顔見世で終わらないしっかりした内容のある作品を制作することを心がけた。それ以上に才能を発揮したのが経営手腕である。

 この時代の個人経営によるジャズ・レーベルはどこも青息吐息だった。ジャズ界切っての名門レーベルと呼ばれるブルーノートですら自転車操業を繰り返し、何度も危機を迎えていた。それゆえ、ギャラの安い新人を中心にレコーディングを重ねていたのである。ところが、クレフは大物を何人も集めてのレコードを売りものにしていた。こちらはネーム・ヴァリューの高いアーティストの作品ということで売れて、それを資金に次なるアルバムの制作を可能にしていた。同じ自転車操業かもしれないが、予算のレヴェルをどこに設定するかでまったく違うクラスのミュージシャンが起用できたのである。

 その成功を土台にして、グランツはさらなる躍進を図るため、1954年に自分の名前から取ったノーグランをスタートさせる。それまでに制作したクレフの作品も順次ノーグランで再発していたが、1957年になって彼は再び新レーベルを設立している。それがジャズ界きっての大カタログを有するようになったヴァーヴだ。クレフとノーグランで制作した約250枚の作品もヴァーヴから再発売され、大物ミュージシャンによるレコーディングも引き続き積極的に行なったことで、ヴァーヴは1960年ごろまでにジャズ界きってのアルバム数を誇るレーベルになっていた。

 このころになるとグランツはプロデューサー業から手を引き、クリード・テイラーなど優れた手腕を発揮してきた外部プロデューサーを起用して、時流にあったモダンなジャズを中心にレコーディングを行なうようになっていく。中でも1962年から始まるスタン・ゲッツを中心にした一連のボサノヴァ作品は世界中でベストセラーを記録し、ヴァーヴの経営基盤を磐石のものにした。その後も、ヴァーヴはビル・エヴァンスやジミー・スミスを獲得して、他のジャズ・レーベルのスケールとはまったく違うビッグ・ヒットを連発していく。

 しかしレーベルが発展・拡大していくにつれて、グランツのジャズに寄せる情熱は薄れ、1960年代半ば、彼はそれまでに残した膨大な録音のすべてをMGMに売却してスイスでの引退生活に入る。一方ヴァーヴはその後も着実に発展し、ウエス・モンゴメリーを中心にしたイージー・リスニング・ジャズで大当たりをするなど、1960年代における最大規模のジャズ・レーベルのポジションを確固たるものにしたのだった。

 こうして好調に発展を続けていたヴァーヴだが、1970年代に入ると世の中はフュージョン・ブームとなり、メインストリーム・ジャズを中心にしていたレーベルの躍進にも翳りが見え始める。それにより一時は休業状態にあったヴァーヴだが、1980年代半ばに積極的なレコーディングを開始したのは、メインストリーム・ジャズの人気が復活したことと無縁でない。

 そして現在は親会社のユニバーサル・ミュージック所有のインパルスも吸収して、以前にも増して豊富な人材と優れた作品を連発するレーベルとして、ジャズ界きっての充実した活動を展開している。





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