ジャズ名盤講座第8回「ヴァーヴ」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 10月 26日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座

All About Verve(マスター向け講座)




2.マスター向け講座(ノーマン・グランツとは?)

 クレフ、ノーグラン、そしてヴァーヴを設立し、ジャズの一大帝国を築いたノーマン・グランツ。ジャズの世界ではプロデューサー=レーベルの設立者という構図が多い。優れたジャズ・レーベルは優れたプロデューサーによって設立され、花を咲かせる。ブルーノートのアルフレッド・ライオン、プレスティッジのボブ・ワインストック、パシフィック・ジャズのリチャード・ボック、コンテンポラリーのレスター・ケーニッヒ、リバーサイドのオリン・キープニュース(彼の場合は共同出資者だが)など、有名レーベルの大半は熱心なジャズ・ファンがみずからの手で会社を興し、アルバムをプロデュースすることによって発展を遂げてきた。ノーマン・グランツもその例に漏れていない。

 熱心なジャズ・ファンであることにかけては人後に落ちないグランツが、ロスでこの世に生を受けたのは1918年8月6日のことだ。ジャズに興味を持ち始めたのはUCLA在学中というから、1940年ごろだろうか。彼が普通のジャズ・ファンと大きく異なっていたのは、在学中からジャズのライヴを企画していたことだ。ロス近郊にあったジャズ・クラブの「トゥルーヴィル」でジャム・セッションを開催するようになったのである。

 グランツはこの企画を実現させるにあたり、クラブ側にいくつかの注文を出している。①ジャム・セッションといえども出演したミュージシャンにはギャラを払う ②店で演奏に合わせて踊るのは禁止 ③客は白人も黒人も平等に扱う 以上の3点を厳守したライヴは、ミュージシャンからも聴衆からも好評を持って迎えられた。

 この時期、東海岸ではブームを巻き起こしたスイング・ジャズに取って代わるビバップが誕生しようとしていた。こちらもハーレムで行なわれていたジャム・セッションが中心で、スイング・ジャズのようなダンス・ミュージックではなく観賞用の音楽としてのものだった。グランツが主催していたジャム・セッションで演奏されていたのがどのようなものだったかわからない。それでも、いわゆるスイング・ジャズとは一線を画したものであったことは想像に難くない。

 グランツはユダヤ系アメリカ人で、時代はドイツを敵に回した第二次世界大戦に突入する前後だった。そうした流れの中にあって、自身も受けている人種差別に辟易した彼は、白人も黒人も関係なく楽しめる娯楽として、自分が大好きなジャズでその壁を取り払おうと考えたのである。

 しかしこの催しは徴兵によって終止符が打たれる。除隊後のグランツはメトロ映画社に職を得て、フィルム・エディターとして働き始める。しかし熱狂的なジャズ・ファンであったことには変わりがなく、この時代にジャズ・ミュージシャンが出演した『ジャミン・ザ・ブルース』という一種のドキュメンタリー映画を同僚でカメラマンのジョン・ミリと組んで製作したのだった。ジャム・セッションの主催とジャズ・ドキュメンタリーの制作。ジャズに携わりたいグランツの血が再び騒ぎ出す。そして、その思いが高じて1944年に最初のJ.A.T.P.コンサートを開催したのだった。

 ただし、当初は決して順風満帆だったわけでない。翌年は終戦で人心が浮き足立っていたこともあり、ジャズのコンサートに足を向けるひとが少なくなってしまった。そこで興行的な失敗を補うため、それまでのコンサートを収録したライヴ・テープをよそに売ることで窮地をしのいでいる。初期の名演として知られる「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」や「オー・レディ・ビー・グッド」がステンソン・レーベルからリリースされたのはそれが理由だ。

 それでも、グランツにはJ.A.T.P.が大きな成功を収める自信があった。1946年には再びシリーズ・コンサートを活発化させ、それらのライヴ音源を間髪空けずにマーキュリーから「J.A.T.P.シリーズ」として続々とリリースするようにしたのである。これが次のコンサートのほどよい宣伝となり、相乗効果的にレコードとコンサートのチケットが売れ始める。

 話題にもこと欠かなかった。グランツの方針は、ナット・キング・コール、J.J. ジョンソン、イリノイ・ジャケー、バック・クレイトン、チャーリー・パーカー、レスター・ヤング、コールマン・ホーキンス、バディ・リッチ、ディジー・ガレスピー、ジョー・ジョーンズ、ロイ・エルドリッジ、ハンク・ジョーンズなどのスターをさまざまな組み合わせでステージに登場させ、お馴染みのナンバーを演奏させることに主眼が置かれていた。まさにきら星のごとくのスターが結集したコンサート。これで話題を呼ばないはずがなかった。

 そしてこの成功で一層の自信をつけたグランツは、やがてスタジオ録音にも手を染めるようになる。もちろん大物同士の顔合わせが一番の売りものだ。そして1951年にマーキュリーを離れた彼は、満を持して自身のレーベル、クレフをスタートさせたのだった。




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