ジャズ名盤講座第9回「ヴァーヴ編(その2)」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 11月 2日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About Verve(ビギナー向け講座)



1.ビギナー向け講座(ヴァーヴ時代~その2)

 ノーマン・グランツがクレフとノーグランを経てヴァーヴを設立したのは1957年のことである。彼が最初のジャズ作品をリリースしたのは、新興レーベルのマーキュリーを通してであった。このレーベルは1945年にシカゴで設立され、当初はカタログの充実を目指し、自社制作以外の音源も積極的に発売する方針が取られていた。そこで条件面で折り合いのついたグランツが、自分の録音したテープを提供したのである。

 マーキュリーとグランツの業務提携は、SP時代を経てLP時代を迎えた1951年まで続く。そして資金調達に目処がついたことから、グランツは独立してクレフをスタートさせる。彼が短期間のうちにノーグランを経てヴァーヴを設立した背景には資本金の増資があった。当初はひとりで資金をまかなっていたが、売りものにしていた大物同士の顔合わせには予算がかかる。そのため、出資者を募り資本金を増やすたびにレーベル名を変更していったのである。

 グランツには、レーベル名が変わるたびにそれまでに出した作品を再発売すればまた売れるという計算も働いていた。ヴァーヴのカタログはMGV8000シリーズから始まっている。新録音も精力的に行なっていたが、初期のカタログの多くを占めていたのはクレフとノーグランから出していた250枚近くのLPで、それらのほとんどがそのまま再発売されている。最初の8000番から8010番まではチャーリー・パーカーの諸作を再編集したものだし、その後も8200番台になるまでの多くはクレフとノーグランの作品で埋められている。

 ノーグランからヴァーヴに切り替わった時期のジャズ・シーンを振り返ってみると、ビバップはほとんど姿を消して、ハード・バップが主流になりつつあった。グランツは最先端のジャズにほとんど興味を示さず、それ以前と同じようにスイング・モダンな演奏やプレイヤーに引き続き大きな関心を寄せていた。それが、むしろレーベル・カラーを鮮明なものにしたのかもしれない。

 1950年代後半、ニューヨークを中心にしたジャズ・シーンで勢いのあったレーベルといえば、ブルーノート、プレスティッジ、そしてリバーサイドである。新興勢力のリバーサイドを別にすれば、ヴァーヴ(前身であるマーキュリー時代からを考えれば)はブルーノートより一歩遅れてスタートを切っただけで、1949年に設立されたプレスティッジより先輩レーベルにあたっている。老舗レーベルとして、これらの二大勢力に比べてなんら劣るところがない。しかもカタログの数は膨大だし、起用してきたミュージシャンにいたっては、ブルーノートやプレスティッジはその足元にもおよばない。

 そんな超の字がつく有力レーベルが、この時代にあってますます独自性を強く打ち出していく。オスカー・ピーターソンを中心にした大物セッションおよび、彼のリーダー・レコーディングは相変わらず頻繁に行なわれていたし、以前に増して大物シンガーにも力を入れるようになってきた。代表はビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、それにアニタ・オデイである。ジャズの巨人にスポットライトを当てたレコーディングもヴァーヴならではだ。こちらにはカウント・ベイシー、デューク・エリントン、ベン・ウェブスター、コールマン・ホーキンス、レスター・ヤングたちがいる。

 そうした《大人のジャズ路線》を歩みながら、一方でジャズの新しい動きにもヴァーヴは着目していた。リー・コニッツ、ソニー・ロリンズ、ビル・エヴァンス、ジミー・スミス、ウエス・モンゴメリー、ウイントン・ケリーなど、当時はまだ新人かようやく中堅の仲間入りをするクラスの意欲的なミュージシャンによる作品も数多く制作し、そちらでも大きな評判を呼んだことは見逃せない。

 見逃せないといえば、1960年代に入ってヴァーヴは新しい路線を打ち出す。それがスタン・ゲッツを中心にした一連のボサノヴァ・レコーディングである。1962年に吹き込んだ『ジャズ・サンバ』が大当たりをして、翌年には『ゲッツ=ジルベルト』がグラミー賞を獲得する。これらのヒットが複線となって、ヴァーヴはポップ・ジャズ路線で優れた作品を連発するようになっていく。これらについては次回で紹介するが、1960年代前半のヴァーヴは、ブルーノートやプレスティッジとは異なる路線でジャズを広く一般のひとたちにまで浸透させたのである。

【前回のおさらい】
 ヴァーヴは1944年にジャズ好きの青年ノーマン・グランツが開催したJ.A.T.P.(ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック)コンサートから始まった。彼は当初このライヴ録音をマーキュリーからリリースしていたが、1951年になって自主レーベルのクレフを設立。これが大物ミュージシャンの顔合わせなどによって評判を呼び、1954年にノーグランとレーベル名を変え、さらに1957年からヴァーヴとして新たな出発を飾ることになった。




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