ジャズ名盤講座第9回「ヴァーヴ編(その2)」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 11月 2日 00:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

ジャズ名盤講座

All About Verve(マスター向け講座)




2.マスター向け講座(オスカー・ピーターソン物語)

 わが国でもっとも人気の高いピアニストは? と聞かれたら、躊躇することなくオスカー・ピーターソンと答える。そのピーターソンが出世街道を歩き始めたのは、1949年にプロデューサーのノーマン・グランツに見出されてからのこと。グランツが、カナダ出張の帰りに飛行場へ向かうタクシーの中でラジオの演奏を耳にしたのが始まりだ。

 その演奏に感銘を受けたグランツは、タクシーをUターンさせて、実況放送が行なわれていたクラブへ急ぐ。そこで演奏していたのがピーターソンだった。カナダ出身の彼と名プロデューサーはこうしてドラマティックな出会いを果たす。そしてピーターソンは、その年、ニューヨークの「カーネギー・ホール」で行なわれたグランツ主催のJ.A.T.P.コンサートに出演して大成功を収める。

  それを機に、ピーターソンはグランツのレーベル(クレフ、ノーグラン、ヴァーヴ)で録音するようになった。当初はベースとのデュオが多く、長く共演することになったレイ・ブラウンとはアメリカ・デビュー以来のつき合いである。またグランツが好んで行なったスター同士の顔合わせにもたびたび起用され、レコーディングでも徐々に大物の風格を身につけていく。

 グランツは膨大な量のレコーディングをしたことで有名なプロデューサーだ。中でもピーターソンには目をかけていた。彼は手始めに1950年から翌年にかけてブラウンとのデュオで何度かピーターソンに吹き込みをさせている。これらの作品が爆発的に売れ、またたく間にこの新人ピアニストは評価を高めていく。

 その結果、もう少し編成を大きくしようということになる。そこでナット・キング・コールから多大な感化を受けていたピーターソンの希望を入れ、コールのトリオと同じようにギタリストが加わることになった。1951年11月の録音からだ。アルバムでいえば、このときの演奏は『ノスタルジック・メモリー』に収録されている。バーニー・ケッセルを迎えてトリオに拡大されたグループは、この後も多くのレコーディングを残していく。

 大物アーティストのセッションでもピーターソンは必要不可欠な人材となり、それによって人気を不動のものにする。トリオなら『ロマンス』、大物とのセッションならレスター・ヤングの『ザ・プレジデント・プレイズ』、『ルイ・アームストロング・ミーツ・オスカー・ピーターソン』といった作品が代表作だ。

 ケッセルがトリオに在籍したのは2年足らずで、1953年夏に行なわれたJ.A.T.P.のツアーから、ハーブ・エリスが加入してくる。そして同年11月にはJ.A.T.P.の来日があり、ここでもトリオは大きくフィーチャーされたのだった。この模様は『J.A.T.P.イン・トーキョー』(パブロ)で聴くことが可能だ。

 このトリオは1958年まで存続し、前任者のケッセル同様エリスもロサンジェルスへ引っ越すことでメンバー・チェンジとなる。ハード・バップが全盛のこのころになると、ドラムス抜きのトリオは主流でなくなり、ピーターソンもギタリストの代わりにドラマーを迎えることにした。そうして参加してきたのがエド・シグペンだ。このトリオは1965年まで活動を続けている。
 ピーターソン・トリオといえば、多くのファンがブラウンとシグペンが加わったこのトリオを心に描く。ギター入りのトリオも人気は高かった。しかしそれ以上に多くの名作を残したことで、こちらのトリオが歴史に名を刻む。

 そのピーターソン・トリオによる名盤中の名盤が『プリーズ・リクエスト』だ。内容からいけば、シカゴの「ロンドン・ハウス」でライヴ収録した『ザ・トリオ/オスカー・ピーターソン・トリオの神髄』も甲乙つけ難い。しかし『プリーズ・リクエスト』が万人に愛される決定的な理由はそのレパートリーにある。誰もが知っているスタンダードの「酒とバラの日々」やボサノヴァの名曲「イパネマの娘」をはじめ、一度聴いたら忘れられない印象的なミュージカル・ナンバーの「ピープル」など、どれもが珠玉のレパートリーと呼ぶに相応しい。

 しかし1964年に吹き込んだこの作品を置き土産に、ピーターソンはヴァーヴを離れる。それはグランツがヴァーヴから手を引いた時期とほぼ同じだった。それでもふたりの関係はその後もアーティストとマネージャーとして続いていく。この事実は、結びつきがいかに強かったかの証でもある。

【前回のおさらい】
 熱心なジャズ・ファンだったグランツがロスでこの世に生を受けたのは1918年8月6日のこと。ジャズに興味を持ち始めたのはUCLA在学中というから、1940年ごろだろうか。その後はジャム・セッションを主催するなどして、やがてJATPをスタートさせてコンサート・プロモーターとしての地位を確立する。そのキャリアを生かした彼のレーベルは、コンサート同様、きら星のようなスターを集めて他の追随を許さぬものとなった。





Related article

  • ジャズ名盤講座第25回「Philips編」ビギナー向け19選!マスター向け19選
    ジャズ名盤講座第25回「Philips編」ビギナー向け19選!マスター向け19選
  • ジャズ名盤講座第22回「エマーシー編」
    ジャズ名盤講座第22回「エマーシー編」
  • 11月3日、4日「ジャズ名盤講座」小川隆夫率いるSelim Slive Elementz 大阪~名古屋ツアー
    11月3日、4日「ジャズ名盤講座」小川隆夫率いるSelim Slive Elementz 大阪~名古屋ツアー
  • ジャズ名盤講座第12回「コロムビア/CBS/エピック編パート1(1917-1959)」ビギナー向け19選!マスター向け19選!
    ジャズ名盤講座第12回「コロムビア/CBS/エピック編パート1(1917-1959)」ビギナー向け19選!マスター向け19選!
  • ジャズ名盤講座第15回「アーゴ/カデット編」ビギナー向け19選!マスター向け19選!
    ジャズ名盤講座第15回「アーゴ/カデット編」ビギナー向け19選!マスター向け19選!
  • ジャズ名盤講座第23回「MPS編」
    ジャズ名盤講座第23回「MPS編」

Prev & Next

Ranking

  • 1
    元祖・アートの島には新作品がぞくぞく:瀬戸内国際芸術祭
  • 2
    深夜までおいしい蕎麦が味わえる店「銀座 真田」
  • 3
    ブルガリ「ソロテンポ」に日本限定エントリーモデル
  • 4
    NY発、デザインコンシャスなコスメ「マリン&ゴッツ」
  • 5
    アレッシイ、2011年春夏コレクション
  • 6
    限定100台、ランボルギーニ「アヴェンタドール・50 アニヴェルサリオ」
  • 7
    太陽王にマカロン、歴史の詰まったサン・ジャン・ド・リュズ
  • 8
    愛車と呼びたくなる新色、リモワの「サルサ レーシンググリーン コレクション」
  • 9
    大岩オスカール氏の作品が焼失:瀬戸内国際芸術祭
  • 10
    メゾンエルメスでディディエ・フィウザ・フォスティノ展

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加