ジャズ名盤講座第10回「ヴァーヴ編(その3)」ビギナー向け9選!マスター向け9選!

2018年 11月 9日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About Verve(ビギナー向け講座)



1.ビギナー向け講座(ヴァーヴ時代~その3)

 1960年代のヴァーヴは、それ以前の素晴らしい歴史と比較しても内容的に遜色がない。1962年にスタン・ゲッツがギタリストのチャーリー・バードと組んで『ジャズ・サンバ』を発表する。極言するなら、これがすべての始まりとなった。

 ブラジルで生まれたニュー・リズム=ボサノヴァにテーマを求めたこの作品は、またたく間にベストセラーを記録する。翌年には、ボサノヴァの生みの親であるジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンを迎えてゲッツが吹き込んだ『ゲッツ=ジルベルト』がグラミー賞を獲得し、世界的なボサノヴァ・ブームを巻き起こす。そしてこのレコーディングで《ボサノヴァの歌姫》ことアストラッド・ジルベルトがデビューを果たしている。

 こうした動きがヴァーヴにとっては路線転換につながった。それ以前の大物を中心にしたレコーディングも継続はされていたが、新人や中堅の起用にも積極的になったからだ。ビル・エヴァンス、ウエス・モンゴメリー、ジミー・スミス、ウイントン・ケリーたちを迎えての《最先端のジャズ》が1960年代中盤以降からはカタログの中心になっていく。

 とくにウエスを中心にしたポップ・ジャズ路線は、ボサノヴァ作品と並んで1960年代後半のヴァーヴで主力になっていく。ウエスの『夢のカリフォルニア』、あるいはスミスの『ザ・キャット』を頂点にしたオルガン・ジャズ作品は、いずれもベストセラーを記録し、ジャズ・ファン以外のひとたちからも広く支持されたのだった。

 グランツは1960年代に入るとほとんどプロデューサー業から手を引き、経営に専念するようになる。代わって実質的なプロデュースを担当していたのがクリード・テイラーである。ボサノヴァ路線もポップ・ジャズ路線も彼が手がけたものだ。テイラーがエヴァンスやウエスを他のレーベルから引き抜いてきた張本人でもあった。したがって、1960年代以降のヴァーヴ作品の多くはテイラーのテイストが反映されたものである。

 1960年代中盤の作品には、ラロ・シフリンやドン・セベスキーなど気鋭のアレンジャーを迎えたオーケストラ作品が多い。これらがボサノヴァやポップ・ジャズの作品に、他レーベルでは真似のできない聴きやすさをつけ加えたのである。ブルーノートやプレスティッジといったジャズ専門のレーベルでも同じような路線のアルバムは作られていた。ところが予算が潤沢にあるわけではないため、めったにオーケストラをバックに迎えたレコーディングはできなかった。ヴァーヴに豪華なレコーディングができたのは、一にも二にも売れ行きがよかったからだ。

 それでも1960年代後半になると、さすがのヴァーヴでもセールスに翳りがさすようになってくる。ロックの台頭も大きかったし、フリー・ジャズやフュージョンの作品が注目を集めるようになってきたからだ。クリード・テイラーが破格の100万ドルでA&Mに引き抜かれたことも大きい。1967年に、彼はヴァーヴでドル箱だったウエスを伴いA&Mに入社する。そこで立ち上げたクリード・テイラー・シリーズが爆発的な人気を博すが、それらの作品はすべてテイラーがヴァーヴ時代に行なっていたことを、より理想的な形で引き継いだものだ。

 ヴァーヴが斜陽していった背景には、ジャズを取り巻く環境がロックの台頭によって大きく様変わりした事実がある。そしてヴァーヴの場合は、テイラーの移籍が大きかった。「時代に飲み込まれた」とひとことで括ることも可能だが、その裏にはさまざまな要因が介在していたように思われる。それだけに、ヴァーヴも他の主要ジャズ・レーベル同様、時代と共に歩んだレコード・カンパニーだった。


【前回のおさらい】
 ノーマン・グランツがクレフとノーグランを経てヴァーヴを設立したのは1957年のこと。1950年代後半からの10年間、ヴァーヴはクレフとノーグランの伝統である「大人のジャズ路線」を歩む一方、ボサノヴァやポップ・ジャズで若いファンからも高い支持を集めるようになっていた。その結果、1960年代前半のヴァーヴは、ブルーノートやプレスティッジとは異なる路線でジャズを広く一般のひとたちにまで浸透させたのである。




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