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ジャズ名盤講座第11回「ヴィー・ジェイ編」ビギナー向け9選!マスター向け9選!

2018年 11月 16日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About Vee-Jay



1.ビギナー向け講座

 ジャズにおけるミュージック・ビジネスは、ほとんどの場合、白人によって運営されている。ジャズ・クラブしかり、レコード会社しかり、音楽出版社しかり、プロモーターしかりである。しかしわずかながら黒人の手によって運営されていたものもあり、ここに紹介するヴィー・ジェイもそうした中の珍しい一例といっていい。

 ヴィー・ジェイは、アーゴ/カデットやデルマークと並んでアメリカ第二のジャズ・シティ、シカゴでジェームス・C・ブラッケンとヴィヴィアン・カーターの黒人夫妻によって1953年に設立された。ちなみに、ヴィー・ジェイは夫妻のイニシャルをレーベル名にしたものである。ついでに紹介しておくなら、ヴィヴィアン夫人はラジオのディスク・ジョッキーとして、これ以前から活躍している人気者だった。一方、夫のブラッケンはインディアナ州ゲイリーで1944年にレコード・ショップをオープンし、そちらでも成功していた。

 ヴィー・ジェイは、音楽、それもジャズをはじめとしたブラック・ミュージックを知り尽くしたふたりが満を持して設立したレーベルである。それだけに、最初から黒人のリスナーを対象にしたレコーディングを基本方針にしていた。つまり、ヴィー・ジェイはレイス(人種)・レーベルと呼ばれる、黒人による黒人のためのレコード会社だった。

 それだけにこのレーベルの特色は、ジャズに関していうならファンキーなジャズを追い続けたことに尽きる。ウイントン・ケリーの諸作で代表されるように、1950年代後半から60年代前半にシーンをおおいに活性化したファンキーなジャズを取りあげることで、レーベルの特色を打ち出すことに成功したのがヴィー・ジェイである。それも、先に大きな成功を収めていたブルーノート同様、若手を中心にして、彼らをリーダーとサイドマンの両方で起用することで、サウンド面でも統一感を打ち出していたことが注目に値する。

 しかしここで大切なことは、ファンキー・ジャズといってもブルーノート・レーベルに聴かれるファンキー・ジャズとはちょっと内容が異なっている点だ。それはこのレーベルがシカゴに本拠地を置いていたこととも大きな関係がある。

 シカゴは「シカゴ・ブルース」という言葉があるくらいジャズ以上にブルースの盛んな土地で、それもいわゆるアーバン・ブルースが主流をなしているところだ。ジャズ・レーベルとして知られるヴィー・ジェイも、カタログを見るとジャズだけでなくR&Bやブルースも取りあげていることがわかる。レコーディングの上でジャズ・ミュージシャンとブルース・ミュージシャンの交流はほとんどなかったものの、ヴィー・ジェイの作品を買う黒人の顧客は、このレーベルにブルージーなサウンドを求めていたことは間違いない。

 いいかえるなら、ヴィー・ジェイはジャズ・レーベルというより、黒人を対象にしたレイス・レーベルの意味合いが強かった。それがこのレーベルのジャズにおける音楽志向にも反映されている。『ケリー・グレイト』、『ケリー・アット・ミッドナイト』といったヴィー・ジェイにおけるウイントン・ケリーの作品を、他のレーベルに残された彼の作品と聴き比べると、ヴィー・ジェイの作品のほうに圧倒的な強いブルース衝動を聴きとることができる。これこそが黒人経営によるこのレーベルの聴きどころだ。

 ヴィー・ジェイはシカゴ出身のミュージシャンの紹介に力を入れたことでも知られている。MJT(モダン・ジャズ・トリオ)+3やエディ・ハリスたちのデビュー作を制作し、とくに後者の『エクソダス・トゥ・ジャズ』がベストセラーになったことからハリスの知名度をあげたことも功績だ。この作品でもシカゴらしいブルージーな味が出ており、こうしたタイプの音楽が受けたこともヴィー・ジェイの背景を考えるとよく理解できる。その他、このレーベルを代表する作品には、ウエイン・ショーターの『イントロデューシング』、リー・モーガンの『ヒアズ・リー・モーガン』、ポール・チェンバースの『ゴー』などがある。

 1960年代前半にはファンキーなスタイルのジャズがひとつの大きな動きになったことも手伝い、ヴィー・ジェイもマイナー・レーベルとしてはかなりの営業成績を残している。しかしそうしたタイプのジャズが徐々に主流から離れたものになっていくにつれ、またジャズ以外の作品の売り上げが大きくなり、それによって手を広げたり放漫経営の煽りを受けたりしたことから経営不振に陥り、1965年には倒産の憂き目を見ている。1970年代に入ってからは、ロスで設立したヴィー・ジェイ・インターナショナルがヴィー・ジェイを復活させて、旧録音や未発表演奏を発表したこともあった。



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