ジャズ名盤講座第13回「コロムビア/CBS/エピック編パート2(1960-1979)」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 11月 30日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About Columbia/CBS/Epic



1.ビギナー向け講座

 コロムビアにおける1960年代のジャズ路線は大きな実りを咲かせた。まずは1960年に発売したデイヴ・ブルーベック・カルテットの『タイム・アウト』(録音は前年)が空前の大ヒットを記録し、ヒット・チャートを賑わすセールスを達成したからだ。セロニアス・モンクがリバーサイドから移籍してきたのが1962年で、すでにヒット作品を連発していたマイルス・デイヴィスも次々と歴史を揺るがす作品を発表するようになっていた。こちらも1959年に録音した『カインド・オブ・ブルー』と『スケッチ・オブ・スペイン』が1960年になって発表されるや、大きな話題に包まれる。

 レーベルの動きとしては、1960年代から70年代をとおしてコロムビアはCBSレコーズの名称を用いることでそのイメージを明確なものにした。また、他社に先駆け通販の部門を設立。こちらは「コロムビア・レコード・クラブ」としてレコード店のない地方都市でのセールスに力が入れられた。内容も画期的で、最初にクラブ用に作られたカタログの中から好きなレコードを8枚選び、それを1セント+配送手数料で買えば、あとは2年のうちに通常の価格で最低2枚を買うのが条件、というものだった。これは、それまで倉庫に眠っていた在庫の一掃に繋がった。現在このクラブは「コロムビアCDクラブ」の名称で、他社のCDもカタログに並べて活発な活動をしている。

 1961年にはレーベルのデザインが一新された。それまでは「Six Eyes」と呼ばれる赤地に黒の文字と模様を配したものだったが、このときからレコードの高品質を謳う「360°SOUND」に変更されている。こちらのレーベルは1960年代末まで用いられたが、同じ「360°SOUND」レーベルでも、時期によって矢印の色が黒だったり白だったり、あるいは「Guaranteed」の文字が入っていたり入っていなかったりで、マニアはそれでオリジナル盤かどうかの見わけをしている。

 1967年には辣腕で知られるクライヴ・デイヴィスが社長に就任。これによりジャズ部門にも変化が訪れる。彼は「売れるアーティスト」、「売れる音楽」をモットーにした経営方針で、音楽業界に一大旋風を巻き起こす。そのあおりを食らったのが、セロニアス・モンク、チャールス・ミンガス、ジョン・ハンディ、ジョージ・ベンソンなど、大物・新人を問わないアーティストたちだった。

 ジャズではマイルス・デイヴィスを中心にこれまで以上の売り上げを目指す方針に変わり、それまで弱体だったロックにこれまで以上の力を注ぐことが決定される。マイルスにとってもこの路線変更は好都合だった。ロックやソウルに興味を向け始めていた彼は、これで心置きなくエレクトリック・サウンドの追求ができるようになったからだ。

 その結果、コロムビアではストレート・アヘッドなジャズ作品が減り、1970年代になるとマイルスの作品を軸に、ウェザー・リポート、マハヴィシュヌ・オーケストラ、ハービー・ハンコック、チック・コリア、トニー・ウィリアムスたちのフュージョン作品を中心にレコーディングが推し進められるようになっていく。

 日本では、その路線変更の時期(1968年)にソニーとの合弁会社であるCBSソニーレコードが設立されている。これにより、CBSの日本盤は発売元が日本コロムビア(現・コロムビアミュージックエンタテインメント)からCBSソニー(現・ソニー・ミュージックインターナショナル)に移る。その結果、内外のミュージシャンを起用した日本独自のジャズ作品もCBSレーベルで制作されるようになったが、大半は国内発売にとどまっている。

 1960年代から70年代にかけて、CBSのジャズ部門でもっとも重要な働きをしたのがプロデューサーのテオ・マセロだった。彼はマイルス作品の担当を皮切りに、モンクとの契約を決め、そのほかの主要な作品の大半をプロデュースしている。とりわけマイルスからの信頼は厚く、1960年代末から始まるエレクトリック路線では、テオの編集作業がなければあそこまで完成度の高いアルバムは作れなかったとまでいわれている。

 1970年代のコロムビアはフュージョン路線でシーンをリードした。しかし、時代は少しずつフュージョンから離れる気配も漂わせるようになってきた。その決定打が1981年に契約したウイントン・マルサリスで、ここからジャズはその歴史に新しいページが加わる。

【前回のおさらい】
 コロムビアは1888年に設立されたシリンダー式蓄音機とワックス・シリンダー(レコードの前身)を卸・販売する会社が母体。その後レコード会社に転進し、史上初のジャズ・レコーディングを1917年に行なってからは、ルイ・アームストロング、ベニー・グッドマン、デューク・エリントン、ビリー・ホリデイ、マイルス・デイヴィスなど大物による作品を発表し、メジャー・レーベルの中で最高のジャズ・カタログを誇る会社になった。



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