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ジャズ名盤講座第14回「インパルス編」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 12月 7日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About Impulse



1.ビギナー向け講座

 老舗ジャズ・レーベルより遅れて登場してきたのがインパルスだ。多くの名門ジャズ・レーベルが1940年代から50年代にかけて活動を本格化させていった中で、インパルスはジャズが新しい時代を迎えようとしていた1961年にABCパラマウントのジャズ専門レーベルとしてスタートしている。

 後発のジャズ・レーベルとしてインパルスが大きな柱に打ち出した路線は、したがって新しい時代のジャズだ。《ニュー・ウェイブ・イン・ジャズ》というキャッチ・フレーズを掲げたこのレーベルは、第1号の専属アーティストにジョン・コルトレーンを迎えている。

 初代のプロデューサ-はクリード・テイラーで、彼はどちらかといえばハードなジャズより聴きやすい演奏にこだわりを持っていた。それだけに、コルトレーンの作品を作る一方、J.J.ジョンソンやギル・エヴァンスなどのアルバムもプロデュースしたのである。しかし、テイラーはしばらくのちにヴァーヴへ移ってしまう。そこで、彼の後任としてプロデューサ-の任についたのがボブ・シールだった。

 シールが手がけた最初の仕事はコルトレーンの「ヴィレッジ・ヴァンガード」におけるライヴ・レコーディングだ。この時点で、彼はコルトレーンのことをほとんど知らなかった。それが功を奏したのか、コルトレーンは自由に演奏を行ない、その結果が歴史的な名演に結びつく。以後のふたりは二人三脚で多くの作品を残していくが、基本的にシールはコルトレーンに音楽のことは任せっきりだったといわれている。

 そのコルトレーンはインパルスで定期的にレコーディングをするようになって、徐々にフリー・ジャズへと傾倒していく。一方、レーベル側も彼の音楽に大きな理解を示し、フリー・ジャズ路線を大きな柱とするようになった。やがてコルトレーンの推薦でアーチー・シェップが専属に迎えられ、さらにはアルバート・アイラー、マリオン・ブラウン、ファラオ・サンダース、デューイ・レッドマン、サム・リヴァースなど、当時のフリー・ジャズ・シーンを代表する有能な若手が続々とこのレーベルと契約を結ぶ。

 時代を反映したレーベル──インパルスにはこのイメージがある。しかし、一方でジャズの歴史を彩る巨人の作品も次々と制作していた。ベニー・カーター、カウント・ベイシー、デューク・エリントン、アール・ハインズ、ジョニー・ホッジス、ライオネル・ハンプトン、ベン・ウェブスター、コールマン・ホーキンスといったスイング期の大スターたちがご機嫌なジャズを聴かせてくれた作品もインパルスには多数残されている。さらには、アート・ブレイキー、チャールス・ミンガス、ソニー・ロリンズ、ハンク・ジョーンズ、ギル・エヴァンス、フレディ・ハバード、ソニー・スティット、ミルト・ジャクソン、カーティス・フラー、マッコイ・タイナーといったモダン・ジャズの重要なミュージシャンによる優れた作品も並んでいる。

 コルトレーンで代表される最先端のジャズを録り続ける一方、このレーベルは新人からヴェテランまで幅広い人材を起用し、ジャズの歴史の大部分をカヴァーするアルバムを制作してきた。それが後発ながら、その後になって老舗ジャズ・レーベルの一角に名を連ねることができた最大の理由だ。

 1960年代も終わりに近づいてくると、多くの老舗レーベルが徐々にその体力というか創造的な制作意欲を失っていく。ブルーノートしかり、プレスティッジしかり、ヴァーヴしかりである。それは、これらのレーベルがモダン・ジャズの黄金時代に最盛期を迎えていたからだ。モダン・ジャズを大きな柱にしていたレコード会社は、どうしても新しいジャズの動きにレーベルのイメージを重ねることができなかった。しかし若いレーベルは、逆にその音楽の変化と共に力をつけることができたのである。その結果、フリー・ジャズと共に、1960年代後半のジャズは多彩な広がりを示すようになってきた。

 その時期に、フリー・ジャズと並んでインパルスが盛んにレコーディングしていたのがジャズ・ロック的な作品である。その最大のスターがガボール・ザボだ。この路線では、オリヴァー・ネルソンやゲイリー・マクファーランドといった有能なアレンジャーまで駆り出して、さまざまなミュージシャンが当時のポップスからレパートリーを拾い、ユニークなサウンドを聴かせてくれた。

 しかし、1969年にはシールが自身のレーベル、フライング・ダッチマンを設立するためインパルスを退社する。その後任として主任プロデューサ-に任命されたのがエド・ミッシェルだ。1970年代のインパルスは、彼が中心になって多彩なジャズ作品が制作されていく。

 その最大の成果がガトー・バルビエリとキース・ジャレットによる一連の吹き込みだろう。このころになると、シェップやソニー・クリスといったひとたちまで電気楽器を導入した作品を発表するなど、まさに時代の流れを感じさせるレコーディングを、インパルスも行なうようになっていた。

 そのインパルスが1970年代末に活動を休止してしまうのも時代の流れであれば、1980年代半ばに活動を再開したのも時代の要求に応えたものだ。復活後のインパルスは、ジャック・デジョネットやマイケル・ブレッカーといった意欲的で創造的なミュージシャンの作品を発表し、常に時代の先端を行くこのレーベルらしい特徴を打ち出してみせた。

 しかし親会社のMCAが、当時インパルスの権利を有していたGRPを吸収したことで、ジャズ系の作品はGRPを通して発表されるという路線変更がなされる。そのため、短期間のうちに新生インパルスが再び消滅してしまった経緯もある。

 ところが1995年になって、再びこのレーベルは新録音を再開する。その背景には、社長に就任した名プロデューサー、トミー・リピューマの強い意志が働いていた。彼はインパルスの再開に先だち、1970年代にフュージョンやロック系の良好な作品を多数制作していたブルー・サムも甦らせている。

 待望の新生インパルスによる第1弾は、マッコイ・タイナーの『インフィニティ』だった。タイナーといえば、インパルスを代表するサックス奏者ジョン・コルトレーンのカルテットで数々の吹き込みに加わり、同時に優れたリーダー作もこのレーベルに残したピアニストだ。まさに復活したインパルスの第1弾に相応しいアーティストがタイナーだった。

 そしてこの路線は、1998年に同じポリグラム傘下にあったヴァーヴと併合したことで、以後はヴァーヴ・レーベルとして継承されていく。インパルスに在籍していたマイケル・ブレッカーやダイアナ・クラールといった人気アーティストがヴァーヴ・レーベルからアルバムを発表するようになって、カタログの幅が大きく広がったことは見逃せない。

 現在、インパルスから発表される新録音はない。ただし、過去に残された名盤の数々は、いまもインパルス・レーベルでリリースされている。ジャズがある限り、いやこの世がある限り、ジャズが新しい時代に入って次々と斬新な演奏が繰り広げられた時代に残された作品は不滅である。



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