ジャズ名盤講座第14回「インパルス編」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 12月 7日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座

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2.マスター向け講座

 インパルスの顔がジョン・コルトレーン。彼は独立した1年後の1961年から1967年にこの世を去る直前まで、精力的にこのレーベルで吹き込みを残している。中でも生涯の傑作と呼ばれているのが『至上の愛』だ。『バラード』と『ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン』も永遠のベストセラーである。しばらく前にコンプリート化された『コンプリート・ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード1961』も最高の内容だった。他ではトップ・クラスのフリー・ジャズ派が一同に会した『アセンション』も強烈な作品である。

 コルトレーンに続くフリー・ジャズ系のアルバムでは、『グリニッチ・ヴィレッジのアルバート・アイラー』、『アーチー・シェップ/フォア・フォー・トレイン』、『チャーリー・ヘイデン/リベレーション・ミュージック・オーケストラ』も時代を彩る傑作だ。コルトレーンの先輩、ソニー・ロリンズも『オン・インパルス』や『イースト・ブロードウェイ・ランダウン』などの力作を残している。

 モダン・ジャズ派では、『チャールス・ミンガス/5(ファイヴ)ミンガス』、『アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』、『ソニー・スティット/ナウ』、『エルヴィン・ジョーンズ/ヘヴィー・サウンズ』あたりが落とせない。スインギーなものでは、『カウント・ベイシー/カンサス・シティ7』、『シェリー・マン/234』、『ベニー・カーター/ファーザー・デフィニションズ』といった傑作がある。

 ジョニー・ハートマン、ロレツ・アレキサンドリア、ランバート・ヘンドリックス&ロス、ジャッキー・パリスのヴォーカル作品も優れていた。ギル・エヴァンス、オリヴァー・ネルソンたちのビッグ・バンド作品、ガボール・ザボを中心にしたジャズ・ロック系作品も見過ごせない。1970年代に残された『キース・ジャレット/生と死の幻想』や『ガトー・バルビエリ/チャプター・スリー』も時代の動きを見事に反映させた傑作だ。

 インパルスに特定のハウス・リズム・セクションは存在しないが、ハウス・ピアニスト、ハウス・ベ-シスト、ハウス・ドラマーと呼べる存在ならいる。ピアニストならハンク・ジョーンズとトミー・フラナガンである。彼らはスインギーなものから当時の主流派までカヴァーできたので、多数の起用に繋がったのだろう。同じことは、ベースのジョージ・デュビビエやドラマーのオシー・ジョンソン、ロイ・ヘインズにもいえる。フリー・ジャズを除くスイング~モダン派の録音に欠かせない人材が彼らだった。彼らによってある種のインパルス・サウンドが作られたといってもいい。

 ところで、インパルスは1961年にABCパラマウントの傍系レーベルとして設立された。ご存知のかたも多いと思うが、ABCはいわゆる総合レーベルで、あらゆるジャンルの音楽を制作してきた。もちろんジャズのアルバムも録音はしている。しかしジャズが専門でないこともあり、ジャズ部門を独立させようということから設立されたのがインパルスだった。したがってインパルスの初代主任プロデューサーには、ABCで辣腕を奮っていたクリード・テイラーが就任している。

 インパルスの前身ということで、わき道にそれるが、もう少しABCについて紹介しておこう。このレーベルは、1955年にサム・H・クラークによって設立されたレコード会社だ。この時期のテイラーはベツレヘムでもプロデュースを担当しており、意欲に燃えてアルバム制作に携わっていた。そんな彼が在職していただけに、ABCには優れた作品がいくつも残されている。

 ABCのジャズ作品でまず思い浮かぶのがクインシー・ジョーンズの『私が考えるジャズ』とオスカー・ペティフォードの『インサイド・ハイファイ』だろうか。これら2作によって、ABCはジャズでも優れた作品を制作するレーベルとしてファンの間で認知されるようになった。

 いずれも好評を持って迎えられたことは、それぞれが続編的なアルバムを吹き込んでいることからもわかる。クインシーは『ゴー・ウエスト・マン』、ペティフォードは『インサイド・ハイファイ Vol.2』を発表し、これらもジャズ史に残る名盤として記憶されることになった。

 その他にも、ABCには注目すべき作品が残されている。たとえばケニー・ドーハムの『ジャズ・プロフェッツ』やアート・ファーマーの『ラスト・ナイト・ホエン・ウィ・ワー・ヤング』。これらは、ぞれぞれのアーティストの代表作に数えられていい作品だ。ズート・シムズもこのレーベルに2作品を残している。中でも『プレイズ・4アルトズ』はひとり多重奏を駆使したユニークな内容で、名盤であると同時に珍盤としても好事家が探し求める1枚だ。

 ところでインパルスの主要作品も大半が現在ではCD化されている。そういうわけで、すでに発売されたものもあるし、それでもまだ手つかずのまま残されている作品もある。それらの中から、コレクターズ・アイテムと思われるものをいくつか紹介しておこう。ガボール・ザボの作品はしばらく前にようやく発売されるようになったが、彼がインパルスに残した吹き込みの中ではインド音楽に取り組んだ『ジャズ・ラーガ』、それと盟友のゲイリー・マクファーランドと組んだ『シンパティコ』あたりが見逃せない。

 そのマクファーランドでは『ポイント・オブ・デパーチャー』がよく知られているが、その影に隠れた感のある『プロフィール』もファンなら聴いておいて損がない。このあたりのアルバムは、インパルスのポップ路線を代表するものだ。

 もっと真摯なジャズを望む向きには、オムニバス盤の『アメリカン・イン・ヨーロッパ Vol.1,2』や『ザ・ニュー・ウェイブ・イン・ジャズ』が必聴だ。これらの作品に収録された演奏の大半はこのオムニバス盤でしか聴けない。とくにバド・パウエルの貴重な録音を含む前者は、マニアなら見逃すことができない作品だ。

 契約の関係で発売できなくなってしまったものもいくつかある。レイ・チャールズの『ジニアス+ソウル=ジャズ』は原盤の権利を本人が持っているため、現在では宙に浮いている。オリヴァー・ネルソンとスティーヴ・アレンが組んだ『ソウルフル・ブラス』も、おそらくはアレンが権利を持っているのだろう。日本のレコード会社が一度オファーを出したものの、発売出来ない旨の返事が返ってきたことがある。

 もう1枚、これは珍盤に属すかもしれないが、ジョン・F・ケネディの演説を収録したアルバムがインパルスには残されている。これは単なる演説レコードとは違い、彼のスピーチのバックで絶妙なオーケストレーションをオリヴァー・ネルソンがつけている。これを知れば食指が動かされるだろう。演説のタイミングと音楽が巧みに組み合わさったこの『ザ・ケネディ・ドリーム』も、マニアなら落とせない。

 ヴォーカル・ファン以外は興味を示さないかもしれないが、名アレンジャーのゴードン・ジェンキンスが奥方でブルース・シンガーのビヴァリー・ジェンキンスと組んだ『ゴードン・ジェンキンス・プレゼンツ・マイ・ワイフ・ザ・ブルース・シンガー』というのも、好事家には恰好のコレクターズ・アイテムになっている。




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