ジャズ名盤講座第16回「コンテンポラリー編」ビギナー向け19選!マスター向け19選!

2018年 12月 21日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座

All About Contemporary(マスター向け講座)




2.マスター向け講座

 コンテンポラリーのオフィスはハリウッドに近い一等地にあった。創業者のレスター・ケーニッヒは、多くのミュージシャンが出入りしやすいようにと考え、レント代は値が張ったものの、無理してここに事務所を構えたのである。理由は、優れたミュージシャンの多くがハリウッドの映画音楽で生活の糧を得ていたことと、彼らが出演するジャズ・クラブがこのあたりに密集していたからだ。

 ディキシーランド・ジャズに夢中だったケーニッヒはモダン派のプレイヤーに疎かった。知己もそれほどない。そういうわけで、まずはハワード・ラムゼイを通してさまざまなミュージシャンと親交を重ねていく。そして、彼らの仕事場に近いところでオフィスを開くことによって、さらに交流を広げようと考えたのである。

 この思惑は見事に当たった。オフィスには、次の仕事が始まるまでの時間潰しにやって来るミュージシャンもいれば、自分を売り込んで来るひともいた。時代も味方してくれた。この時期(1950年代前半)に、ウエスト・コースト・ジャズと呼ばれるスタイルは形成されていくが、その中心にいたミュージシャンを起用してレコーディングするレーベルは、大手ならキャピトル、個人経営のレーベルならリチャード・ボックが創設したパシフィック・ジャズとケーニッヒのコンテンポラリーくらいしか目立つものはなかった。

 そういうわけで、ひとり占めとはいかなかったが、コンテンポラリーはかなり美味しいとこ取りができる状況にあった。とはいえ、いくら発表の場を求めているミュージシャンが多かったといっても、信頼がなければそれも成り立たない。ケーニッヒの素晴らしいところは、ミュージシャンとの間で一度も金銭トラブルを起こさなかったことだ。

 コンテンポラリーが優れたジャズ・レーベルであるのは演奏内容だけにとどまらない。「ビギナー向け講座」でも触れたが、もっとも早い時点(1955年)で12インチLP化に踏み切ったレーベルであることもさることながら、音質にこだわりを示したことで、オーディオ・マニアからも注目されていたからだ。こちらはロイ・デュナンという優れたエンジニアと組むことで、これまたジャズのレーベルではもっとも早い時期にステレオ・レコーディングを採用したのだった(1956年の『シェリー・マン/モア・スインギング・サウンズ』が第一号)。

 しかも驚かされるのは、優れた音質を誇る作品の大半を生み出したスタジオが、実はコンテンポラリーのレコードを保管する倉庫だったことだ。平屋の倉庫には吸音用の壁もなければ、最新の機材もない。あちこちに積み重ねられたレコードの段ボール箱が、偶然ながら自然の吸音装置になっていたのかもしれない。そこをスタジオにして、デュナンは次々と名録音を残していく。

 同じような設定ですぐに思い浮かぶのが、ブルーノート・サウンドを作ったルディ・ヴァン・ゲルダーだ。彼は両親が住む自宅の居間をスタジオに見立て、次々と歴史に残る作品を録音していった。「東のヴァン・ゲルダーに西のデュナン」と呼ばれて比較されるのは、音質のよさもさることながら、こうした常識外れの条件から名録音盤を生み出していたことも理由のひとつだ。

 ケーニッヒは完全主義者でもあった。そこもブルーノートのオーナーだったアルフレッド・ライオンと似ている。どちらにもユダヤ人の血が入っていたのが理由だろうか。音質にこだわり、ジャケット・デザインにこだわり、そして好きなミュージシャンを録音することにこだわったのがふたりである。

 しかも、ケーニッヒはライナーノーツまでほとんど自分で手がける徹底ぶりだった。そのライナーノーツも本職の評論家が驚くほど博識豊かで、ミュージシャンやジャズに愛情を注ぐものになっていた。そのことも特筆しておきたい。

 もうひとつの特徴は、コンテンポラリーが基本的にニュースターを起用するレーベルだったことだ。第一号アーティストになったハワード・ラムゼイからしてまったく無名のベーシストである。ハンプトン・ホーズにしてもシェリー・マンにしても、あるいはバーニー・ケッセルやアンドレ・プレヴィンにしても、みんなこのレーベルで初リーダー・レコーディングを記録している。オーネット・コールマンやセシル・テイラーといったフリー・ジャズ派にまでチャンスを与えていたことも、ケーニッヒの優れた感覚を証明するものだ。

 ウエスト・コースト・ジャズの主要な部分を記録したコンテンポラリーの諸作は、ジャズ・ファンにとって永遠に不滅の財産である。そのコンテンポラリーは1977年に息子が引き継ぐ。ただし、こちらは10枚の作品を作っただけで頓挫している。その後は活動を休止していたが、1984年に150万ドルでファンタジーに買収され、以後は同社のOJCシリーズを通し、名盤の数々が廉価盤として再発されるようになった。






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