ジャズ名盤講座第21回「サヴォイ編」

2019年 1月 25日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About Savoy



1.ビギナー向け講座

 1939年、サヴォイはニュージャージー州ニューアークで電気店を経営していたジャズの熱狂的なファン、ハーマン・ルビンスキーによって設立された。これは奇しくもブルーノートの創立と同じ年だ。当時、レコードは電気店で売られるのが一般的で、そのことから好きなジャズのレコードを作って自分の手で売ってみたいという願望が生まれたようだ。ただし、サヴォイ・ディクテイターズなるグループによる最初のレコードが売り出されたのは1943年のことである。

 ルビンスキーは、ブルーノートのアルフレッド・ライオンや他のレーベルのオーナーと違い、自分が直接プロデュースをすることはしなかった。彼はあくまで経営者のポジションにいて、代わりに優れたA&Rを時代ごとに雇ってはジャズの歴史を飾る作品を残してきた。1940年代はテディ・レイグ、1950年代はオジー・カデナが有名で、彼らの作ったレコードがジャズ・ファンや評論家の間で人気を呼んだことからサヴォイも名門レーベルの仲間入りを果たしたのである。

 ルビンスキーは名前からもわかるようにユダヤ系のひとで、金銭面において非常に細かいというか、有り体にいえばけちな人物だった。それだけにミュージシャンからの評判は芳しいものでなかったが、彼のもとで働いたA&Rたちがミュージシャンの信頼を得ていたため事なきを得たところがある。

 テディ・レイグによれば、ルビンスキーは52丁目のクラブに出入りし、飲み物をいっさいオーダーしないでテーブルに契約書を広げ、そこを事務所代わりに使うような人物だったという。それでも1975年にアリスタが買収するまで活動を続けることができたのは、ひとえにオーナーの金銭感覚があったからだ。

 サヴォイの黄金時代は1945年にテディ・レイグが入社したことで始まる。彼がチャーリー・パーカーやデクスター・ゴードンと契約したことで、それまでは中途半端な制作方針だったレーベルのレコーディングに筋がとおるようになった。すなわち、もっとも新しいビバップを録音すること。これをテーマに、レイグは次々と素晴らしい吹き込みを実現させていく。中でもパーカーとの一連のセッションはジャズ史の中で燦然と輝くものだ。極言するなら、パーカーの重要なレコーディングがあるからサヴォイの名前が永遠のものになったといってもいい。

 レイグの貢献でサヴォイはビバップのトップ・レーベルになった。退社する1949年までに彼が手がけた主要なミュージシャンには、パーカーとゴードンのほか、ファッツ・ナヴァロ、マイルス・デイヴィス(実際はパーカーのグループ)、J.J. ジョンソン、ソニー・スティット、レイ・ブラウン、ケニー・ドーハム、アレン・イーガーといったひとたちが含まれる。彼らの初レコーディングがすべてサヴォイに残されていたことも特筆に価する。

 サヴォイは自社レコーディングのほかに、センチュリー、バップ、ハイ・ロー、シグナル、プログレッシヴ、ディスカヴァリー、ディー・ジーといったマイナー・レーベルの権利も所有し、1940年代から50年代にかけて、ディジー・ガレスピーやアート・ペッパーの重要な作品を発売したことでも見逃せない。前者では『チャンプ』、後者では『サーフライド』が代表作だ。

 しかしレイグが去ったあとは活動が低調になり、一時はR&Bの分野にも進出したが、たいした実績をあげることができなかった。そんな窮地を救ったのが1954年に入社したオジー・カデナである。彼は、ケニー・クラーク、ミルト・ジャクソン、ハンク・ジョーンズ、キャノンボール・アダレイ、ドナルド・バード、カーティス・フラーなど、ハード・バップ~ファンキー・ジャズ系のアーティストに強く、その結果、1950年代もジャズのもっとも新しい動きを伝えるレーベルとの評価をサヴォイにもたらせている。とくにフラーの『ブルースエット』は、わが国を筆頭に世界中でいまも売れている永遠のベストセラーだ。しかし1959年にカデナが退職してからのサヴォイは、その魅力をいっきに失っていく。




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