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ジャズ名盤講座第22回「エマーシー編」

2019年 2月 1日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About EmArcy



1.ビギナー向け講座

 クリフォード・ブラウンの歴史的名演や、ダイナ・ワシントン、サラ・ヴォーンなどの膨大な吹き込みを行なったことで知られるシカゴの名門レーベル、エマーシーが誕生したのは1951年のことである。その6年前の1945年に、バール・アダムス、アーヴィング・グリーン、アーサー・タルメージの3人が設立したマーキュリーのジャズ部門として、新たに誕生したのがエマーシーだった。ジャズ録音はマーキュリー時代から行なわれていたが、エマーシーが誕生してからいっそうの活況を呈していく。

 エマーシーの特色は、シカゴという街の利点を生かし、R&B的なジャズ作品を多数制作したところにある。また、ダイナ・ワシントン、サラ・ヴォーン、ヘレン・メリルなど、シンガーの作品が多いこともこのレーベルの強い指向を窺わせる。エマーシーは1959年に活動を休止したが、1980年代に入って児山紀芳氏がプロデューサーとなり、レコーディングを再開。現在はユニバーサル・ミュージック・グループの一部門として、このレーベルを用いた新作も引き続き制作されている。

 マーキュリーのジャズ・レコーディング第一号はエロール・ガーナーのセッションだった。その後は、社長に就任したアダムスが黒人芸能界の顔利きだったことから、ダイナ・ワシントンやエディ・ヴィンソンを引っ張ってくる。さらにはジャズのカタログを充実させるべく、JATPのプロデューサーであるノーマン・グランツと提携し、JATPのライヴ・シリーズや、グランツが行なったスタジオ・レコーディングの発売も実現させている。こちらの共同事業は、彼がすべてのマスター・テープを引きあげてクレフ(ヴァーヴの前身)を設立する1951年まで継続された。

 この間、マーキュリーの経営陣にはコロムビアなどで名プロデューサーの名をほしいままにしていたジョン・ハモンドも参画し、クラシック・ジャズの宝庫として知られるキーノート・レーベルの原版権を獲得。さらには、彼の推薦でアレンジャー兼プロデューサーのミッチ・ミラーを起用。こちらはポピュラー畑に強く、フランキー・レイン、ヴィック・ダモン、パティ・ペイジなどのヒット盤を制作している。もうひとり、ハモンドが紹介したボブ・ファインはニューヨークで活躍していた有能なエンジニアで(のちにリバーサイドが多用するリーヴス・サウンド・スタジオの主任になる人物)、彼が音質面で貢献したことも見逃せない。

 さらに、このころ(1950年代初頭)にもうひとりの優れたプロデューサーが入社してくる。ボブ・シャッドだ。彼は入社するやいなやジャズ専門のレーベルを立ちあげる。レーベル名はMercury Record Companyの頭文字、MRCを発音どおりに綴ったエマーシーとした。

 エマーシーが発展する上で重要な要素になったのが、この時期に開発されたLPレコードである。それまでは78回転のSP盤だったため、いまでいうところのシングル・レコードと同じで、片面に3分前後しか演奏を収録することができなかった。新レーベルのエマーシーを通し、シャッドはLP単位(当初は10インチ盤)で次々と優れた作品を発表していく。

 エマーシーを代表する作品となれば、クリフォード・ブラウンの諸作に落ち着く。児山氏の尽力で、いまでは未発表だった演奏や別テイクも含めた10枚組の『ザ・コンプリート・クリフォード・ブラウン・レコーディングス』で集大成されている。オリジナル・アルバムでいうなら、『スタディ・イン・ブラウン』と『クリフォード・ブラウン~マックス・ローチ・イン・コーポレイテッド』が両横綱といったところか。もちろん、これもシャッドのプロデュースによるものだ。これら2枚からは、ブラウンの至芸ともいえる生涯の名演を堪能することができる。あとはストリングスと共演した『ウィズ・ストリングス』も忘れられない。ホットなアドリブに命を懸けたブラウンだったが、このアルバムからは胸に焼きつくような素晴らしい歌心の数々を聴くことができる。

 シャッドがこのレーベルに起用したアーティストには、このほか、ジェリー・マリガン、サラ・ヴォーン、ヘレン・メリル、キャノンボール・アダレイ、クインシー・ジョーンズ、ベン・ウェブスター、ポール・ブレイなど、世代もスタイルも超越した面々がいた。そこにこのプロデューサーの素晴らしさがある。そしてそれぞれが名盤になったことでエマーシーの名声は磐石のものになった。




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