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ジャズ名盤講座第35回「Roost+Roulette編」Roostの魅力を味わう名盤14選!Rouletteの魅力を味わう14選!

2019年 5月 3日 00:00 Category : Art

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ジャズ名盤講座



All About Roost



ビギナー向け講座

 バド・パウエル最高の演奏は? と問われて、多くのひとはルーストで残された『バド・パウエルの芸術』と答えるだろう。それほどここに収められた47年録音の8曲にはパウエルの凄さがまばゆいばかりのキラメキとともに息づいている。このレーベルがいまも多くのファンの間で語り継がれているのは、いちにも二にもこのアルバムが残されているからだ。

 そのルーストは1942年にテディ・レイグによって設立された。レイグはその後にサヴォイでチャーリー・パーカーの録音も担当したプロデューサーとして知られているから、当初はルーストに専念していたわけではない。ルーストがファンの注目を浴びるようになるのは40年代後半になってからだ。

 ところでファンならピンとくるひとも多いと思うが、ルーストというレーベル名はニューヨークのブロードウェイにあったジャズ・クラブ「ロイヤル・ルースト」から取られている。レコードのセンター・レーベルには《ロイヤル・ルースト》と大きく書かれているし、レイグが「ロイヤル・ルースト」の常連だったことや、同クラブを経営していたモンティ・ケイやクラブで司会を務めていたシンフォニー・シッドが初期の時代においてルーストの協力者だったことからもうなずける。そういうわけで、ルーストはいわゆる「ロイヤル・ルースト」のハウス・レーベル的存在からスタートした。ただし、しばらくするとこのクラブのふたりは同じブロードウェイでオープンした「バップシティ」に移り、ルーストから手を引いている。

 話は逸れるが、ルーストの背景と似ているのがスティープルチェイスだ。60年代末のことだが、デンマーク人のニルス・ウインターはコペンハーゲンにある「モンマルトル・ジャズハウス」を根城に、同クラブのライヴを自身のレーベル、スティープルチェイスで発表していた。それと同じような感じを覚えるからだ。ルーストも、設立されてからしばらくは「ロイヤル・ルースト」に出演するミュージシャンの作品を多く手がけていた。パウエルはもちろんのこと、ソニー・スティットやスタン・ゲッツといったプレイヤーたちはしばしば「ロイヤル・ルースト」に出演し、ルーストで録音していたのである。

『バド・パウエルの芸術』と並んでジャズ史に残る遺産ともいうべき作品がスタン・ゲッツの『ザ・サウンド』である。クールなサウンドで人気を高めていたころのゲッツの全貌をとらえているのがこの作品だ。ソニー・スティットの『ペン・オブ・クインシー』は新進アレンジャーとして頭角を現しつつあったクインシー・ジョーンズによる斬新なアレンジもさることながら、スティットの快演が隅々にまで散りばめられている傑作だった。

 こうした諸作はコレクションのもっとも基本的なものに入ると思うが、ぼく個人としてはギタリストのジョニー・スミスが残した数々の作品に強い愛着を覚えている。『ヴァーモントの月』や『ジョニー・スミス・カルテット』で示す端正なスタイルには白人ギタリストによるもっとも好ましい姿が認められ、聴けば聴くほどのめり込みたくなる美しさがある。ルーストでもっとも多くの作品を残したアーティストがこのスミスだ。後期のものになるとポピュラー色が濃くなるものの、彼の初期作品からはゲッツに通じるクールな味わいが堪能できる。

 ルーストは50年代後期に販売権をルーレットに委譲したものの、レコーディングは64年まで継続している。ただし、ルーレットから発売されたルースト盤は71年を最後に発売されなくなった。

 64年までレコーディング活動をしたルーストだが、その20年以上におよぶ録音を通してこのレーベルが行なった特筆すべきものは、時代に流されずビバップにもとづく演奏を追い続けたことと、黒人と同じ比重で白人のアーティストも取りあげたことである。スタン・ゲッツ、ジョニー・スミス、ジーン・クイル、ビヴァリー・ケニーといった白人アーティストによる作品には、ジャズを語る上で重要なものが多い。

 またSP時代や10インチLP時代に発表され、そのまま埋もれてしまった作品も少なくない。時代とともにこのレーベルは取り残され、ついには倒産してしまった。それでも、ルーストがジャズ・シーンに残したものは言葉でいい尽くせないほど大きい。それだけに、未CD化の演奏など、いつの日か集大成してもらいたいと思う。




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