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眼鏡作家・ヤマシタリョウが創る『江戸金枠「鏡花」展』が始まる

2007年 9月 14日 11:00 Category : Art

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 金属を鋳造し、竹を削って1本の眼鏡を創る。技術と革新の結晶を紡ぎ、もはやアートの域にまで達した、ヤマシタリョウが創る眼鏡。眼鏡作家・ヤマシタリョウの個展『江戸金枠「鏡花」展』が、本日・9月14日(金)より、浅草のギャラリーefにて、開催される。

 ヤマシタリョウは、老舗の眼鏡工房で技術を学んだ後に独立し、1998年自らのアトリエを東京・世田谷に構える。「大量生産は肌に合わない」と、デザインから金属の鋳鍛造・成形まで、制作工程のすべてをひとりで手がける、数少ない眼鏡作家のひとりだ。


「人を幸せにする眼鏡を創りたい」
以前インタビューした際、眼鏡作家・ヤマシタリョウはこう言った。彼が言うには、「人の個性を印象づけるひとつの手段として、眼鏡というのは非常に大切なもの。それなのに現在の大量生産の世の中では、既製品を買うという選択肢しか残されていない。そこでオートクチュールというシステムを取り入れ、より自由な発想で、その人に一番似合う眼鏡を作ろうと思った」と語る。

 そのオートクチュールの作品製作と並行して行なわれているのが、企画展を通したオリジナルの作品発表だ。眼鏡はさらに「自由」という名の翼を手に入れ、軽やかに羽ばたいてゆく。


プロモアルテギャラリー 江戸金枠『飾り眼鏡』展(2006.9)/photo:RYO YAMASHITA
▲以前に行なわれた個展の模様だ。
展示されているのが、眼鏡だということに最初は気付かない人もいるかもしれない。活け花のように、竹に活けられた眼鏡の数々は、そこにある佇まいを見ているだけで気持ちが安らぐ。



photo:Toshitaka Nakamura
▲こちらは、鉄に菜種油をつけて焼く「油焼き」という手法を用い、時間をかけて錆の加工を施し、絶妙な色を実現した作品。テンプルには、肌への触り心地が非常に滑らかで、見た目にも美しい色合いを醸す、厳選された竹素材を使用。ヤマシタ氏自ら京都や熊野に出向き、竹の吟味を行っている。


photo:Toshitaka Nakamura
▲こちらは江戸金枠の作品。18金や14金などを厳密な配合により溶解し、鋳型に流し込んでインゴットを作る。そのインゴットは鉄床で叩き締めて、鍛造と圧延を繰り返し、作品のような美しい色合いの1本の金を仕上げていく。鉄を叩く作業は、並大抵のものではない。1本作るのには、眼鏡を使う人との話し合いの期間を含め最低でも3~4ヶ月かかる。均一料金で売られており、一日で完成してしまう眼鏡が多数流通している世の中で、なぜヤマシタ氏はこのような大変な作業を行うのだろうか。

「眼鏡を作る際には、その方に実際にお会いしてお話をするところから始めていきます。そして、眼鏡が出来上がるまでの数ヶ月という時間は、ただ制作に費やされるのではなく、作り手と使い手の関係を積み上げる時間でもあるのです。それが、江戸時代から伝わる職人と消費者との関係でもあり、工業化された今、失われている人と人との関係性でもあります」

 また、ヤマシタ氏は、眼鏡をパーソナルアートと位置付け、江戸時代の技術のみに固執することなく、さらに自由な発想で新たなものづくりを行っている。

「眼鏡は、そこに置いて在るとひとつの作品として成立します。しかし、一旦顔に掛けると、それはパーソナルアートとしてその人の個性を引き立てます。さらに、眼鏡を掛けて街を歩けば、パブリックアートにもなる。展示した眼鏡は個性的と言われますが、ぜひ一度掛けてみていただきたい」

 初めて作品を見る方は、少し躊躇するかもしれない。しかし、一度ヤマシタ氏の眼鏡を掛けてみると、金属の鋳造からすべて一人の手で作られた世界にたった一つだけのフレームは、その人の肌に溶け込み、表情をさらに豊かに見せてくれる。

 今回の展示のテーマは「鏡花」。中国の古代宮廷文化の思想に通底する、文字の研究家・王超鷹氏との出会いによって生まれたタイトルだ。自然の営みに敬意を払い、その造形に美を見出していた古代中国の人々が、眼鏡に出会ったならきっと「鏡花」という言葉を当てただろう、という王超鷹氏の見解は、ヤマシタに改めて自らの眼鏡づくりへの確信をもたらした。

 会期は9月14日(金)~10/8(日・祝)まで、下町・浅草の材木問屋の内藏として建てられた土蔵を有志のアーティストたちが再生したアートスペース、ギャラリーef。江戸の建築を現代に伝える力強い空間で、江戸眼鏡の美しい世界をじっくりと見つめて欲しい。現代のものづくりの在り方を、改めて考え直させてくれる展示となるだろう。

【江戸金枠「鏡花」展】
9月14日(金)~10月8日(日・祝)
会場:ギャラリーef
東京都台東区雷門 2-19-18
開館時間:12:00-21:00(火曜休廊)
お問い合わせ:03-3841-0442

RYO YAMASHITA 山下眼鏡工房

取材/上條桂子

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