今週末見るべき映画「僕らのミライへ逆回転」

2008年 10月 10日 11:00 Category : Art

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 なんともおバカさん映画のたたずまいと思っていたけれど… レンタルビデオ屋さんが舞台、たった三人、しかも古いビデオカメラで名作、傑作、ヒット映画のリメイクを手がけるという「僕らのミライへ逆回転」(東北新社配給)を見た。原題は「BE KIND REWIND」、ビデオ返却のときは、巻き戻すこと、といった意味である。ビデオの巻き戻しと、過去の映画を作ろうとすることのシャレであろうか。


 それほど期待はしないまま、ほどほどに笑って見ているうちに、これは映画へのオマージュ、映画好きの作家が映画好きに捧げた映画ではないかと思うようになる。そして、強い力で映画に引き込まれていった。作り手の映画への深い愛を感じる、すてきな映画。映画への愛に満ちた、楽しい映画である。

 監督・脚本はミシェル・ゴンドリー。「ヒューマンネイチュア」、「エターナル・サンシャイン」、「恋愛睡眠のすすめ」を撮った人である。どうでもいいような映画は撮るわけはない。

 電磁波の影響について発電所に抗議に出かけた男が電磁波を浴びる。その結果、友人のレンタルビデオ屋においてあるビデオが全部消えてしまう。さあ、どうするか。なんと、客の無知を利用して、お手軽、イージーに、古いビデオカメラで、客が注文した「ゴーストバスターズ」をリメイクする。いい加減なものであるが、なんとそれが、客の評判を呼ぶことになる。

 もう、あり得ない話ながら、リメイクが続く。「ラッシュアワー2」、「キング・コング」、「シェルブールの雨傘」、「ライオン・キング」、「ロボコップ」、「2001年宇宙の旅」、「キャリー」、「ドライビングMissデイジー」、「モハメド・アリ かけがえのない日々」、「メン・イン・ブラック」、「ラストタンゴ・イン・パリ」などなど著名な映画が続々と出てくる。どれも劇中の有名なシーンばかり。しかも、ドタバタそのものの作りながら、当人たちはいたって真面目、オリジナルのシーンが分かれば、もう、笑いころげてしまう。

 はじめのうちは、たしかに、いつまでこのようなばかばかしさが続くのかと思っていたが、次第に、お粗末なリメイクを真面目に続ける展開に魅せられるようになる。そして、ラストには、何ともいえない幸福感に満たされているのである。導入のばかさ加減から、次第に観客を引きつけていく作劇術、ミシェル・ゴンドリーはただものではない。


 レンタルビデオ屋の店員がモス・デフ、電磁波を浴びる友人にジャック・ブラック。「ゴーストバスターズ」を借りる常連の女性客がミア・ファロー、著作権法違反と押し掛ける弁護士がシガーニー・ウィーヴァー。なんと「ゴーストバスターズ」の主演女優である。脇役が主役よりも格上というのも愉快。しかも、ミア・ファーローもシガーニー・ウィーヴァーも、チョイ役ながら、真面目に演じることを楽しんでいるようで、これまた愉快。

 作り手たちの映画を愛する気配が、映画が進むにつれて、漂ってくる。これは映画好きを幸せな気分にさせてくれる、稀有な映画だろう。

 蛇足ながら、あらかじめ、ファッツ・ウォーラーというジャズ・ピアニストがどのような人かをざっと知っておけば、この映画は倍楽しめることと思う。

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