今週末見るべき映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

2009年 2月 6日 20:45 Category : Art

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 老人で生まれ、年とともに若返っていく人生があれば…。そのような奇妙な設定の短編小説を映画化したのが「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(ワーナー・ブラザース配給)である。


(c) 2008 Paramount Pictures Corporation and Warner Bros. Entertainment All Rights Reserved.

 もとは、映画「華麗なるギャツビー」の原作者でもあるスコット・フィッツジェラルドが、1922年に書いた短編集「ジャズ・エイジの物語」に収められている短編小説である。作家のもっとも充実した時期に書かれた短編だけに、示唆に富む好短編である。

 映画は、原作で書かれた時代を少しずらせて、1918年に老人として生まれ、0歳で死ぬという設定で、約80年間のベンジャミン・バトンの生涯を描く。「フォレスト・ガンプ/一期一会」を書いたエリック・ロスの脚本が優れていて、ベンジャミン・バトンのたどる数奇な人生を、時には重く、時には軽快に、時代の移り変わりに合わせて、見事に伝える。

 主人公ベンジャミン・バトンに扮するのはブラッド・ピット。見た目は老人の幼少の頃から、老人になる見た目は十代まで、それぞれの時代を、まことに自然に、違和感のない演技を見せて、まさに力演。



 生まれたばかりの男の子が、しわだらけ、白内障で聴力も乏しい。まるで老人と同じようだと医者は言う。母親は赤ん坊を産んですぐ死ぬ。あまりにも異様な赤ん坊に驚いた父親は、赤ん坊を老人ホームの前に捨てる。わずか15ドルのお金を添えて。

 老人ホームを営む黒人女性が、ベンジャミンと名付けて育てることになる。彼女は、いま生きていることに感謝すること、人生はなにが起こるかわからないことなどを、ベンジャミンに教える。そして、年とともに、ベンジャミンは若返り、成長していく。

 つまりは時間が逆の人生を生きるベンジャミン・バトンのビルドゥングス・ロマン(教養小説)である。人生のさまざまな出会いと別れ、喜びと悲しみを通して、生きることの大切さを感じていく主人公の、これは壮大な一代記なのである。

 見た目は老人、しかしベンジャミンがまだ子どもであることを見抜く少女が成長、ベンジャミンと結ばれるヒロイン、デイジーにケイト・ブランシェットが扮する。「エリザベス」や「バベル」で見せた達者な演技を、ここでも披露、思春期から、死ぬ寸前の老け役までを、見事にこなしている。

 構成は、死を目前にしたデイジーの現在と、ベンジャミンが人生を振り返るモノローグが交互に現れる二重構造である。老いの身をベッドに横たえ、娘にベンジャミンの書き残したハガキや日記を読んでもらうデイジー。そこに、数奇な人生をたどるベンジャミンのモノローグが重なっていく。

 長尺2時間47分、まったく長いと感じさせない。人生の出会いと別れ、喜びと悲しみ、生と死、そして永遠の意味を、かずかずのエピソードを交えて、豊かに綴った、これは監督デビッド・フィンチャーの会心作。

 2月22日に発表されるアカデミー賞に、作品賞、監督賞(デビッド・フィンチャー)、主演男優賞(ブラッド・ピット)、助演女優賞(タラジ・P・ヘンソン)、脚色賞(エリック・ロス)、美術賞、撮影賞(クラウディオ・ミランダ)、衣装デザイン賞(ジャクリーン・ウエスト)、編集賞(カーク・バクスター、アンガス・ウォール)、メイクアップ賞、音楽賞(アレクサンドル・デプラ)、視覚効果賞、録音賞の13部門にノミネートを果たしている。

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