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今週末見るべき映画 「人生に乾杯!」

2009年 6月 20日 00:00 Category : Art

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 「人生に乾杯!」(アルシネテラン配給)のタイトルには深い意味があるように思われる。人生は、乾杯!に値するものなのか、それとも、乾杯!となるように築きあげるものなのか? 原題はロシア語で「おしまい」。これまた、深い意味を伝えているかのようである。

 舞台はハンガリー。自由主義経済に近い体制であったとはいえ、旧社会主義国である。いまは自由経済に移行、かつて誰にでも手をさしのべていた国民への福祉などの政策は、必ずしも十分でない状況になりつつある。


 貧しい老後を余儀なくされた夫婦がいる。夫は81歳である。やむを得ず、郵便局から金を奪う。そして、逃げる。追う女性捜査官を人質にして、どこまでも、逃げる。ニュースを知った大衆は、この二人に喝采さえ送り、模倣犯まで現れる始末。

 暗く湿った話と思いきや、これが明るくユーモラスに描かれる。もちろん、いまという時代が生んだ切実な話ではある。 

 お金を奪って逃げる。まるで、ボニーとクライド、そう、ウォーレン・ビーティとフェイ・ダナウェイ主演の傑作「俺たちに明日はない」の老人版の趣。展開の歯切れがよく、老人の逃避行は軽快なタッチで進行する。

 アメリカの巨大な自動車メーカーさえ、倒産し、国有化となる時代である。資本主義、自由経済の真の意味が、比喩たっぷりに問いかけられている。より多くの国民の最低生活が保障された時代から、資本主義自由経済に移行したとき、いろんな格差が顕著になる。年金を受ける年齢になっても、光熱費やアパートの家賃も支払えない。持っていた金目のものは手放さざるを得ない。ことはハンガリーだけの話ではない。

 とにかく金が要る。夫はひとりで郵便局に押し入る。なんとも、間の抜けた雰囲気で、迫力はない。紳士的ですらある強盗だが、これがうまく運ぶ。はじめは夫の犯行だとは信じなかった妻も、やがて夫と行動をともにして、強盗行脚が続ける。

 平行して、恋人らしい関係の、まだ若い男女の捜査官が、老夫婦を追いかける状況が描かれる。もちろん、かつての国のありようは知らない世代である。男がバカなパーティで騒いだことが発覚して、その関係は、一見うまくいっているようで、かなりギクシャクしている。

 この老夫婦と若い捜査官カップルの対比が、あざやかである。自由な時代の若い世代と、社会に縛られながらも、どこかのどかな時代を過ごした老人の世代。はたして、人生に乾杯!できるのは、どちらの世代だろうか?

 あざやかな問いを投げかけたのは、ガーブル・ロホニ。まだ40歳代、長編劇映画の監督は本作が初めてである。ハンガリーにまた、才気あふれる監督が登場した。映画はさらに問いかける。かつて乾杯に値する人生があった、ではいまは? 

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