今週末見るべき映画「インビクタス/負けざる者たち」

2010年 2月 5日 18:25 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

 昨年春、クリント・イーストウッドが、南アフリカ共和国で、大統領だったネルソン・マンデラとラグビーのワールドカップを描いた映画を撮っている、と聞いた。このほど、日本で公開される。

 実話である。南アフリカ共和国で開催された1995年の第3回ラグビー・ワールドカップの決勝戦が、クリント・イーストウッド監督の新作「インビクタス/負けざる者たち」(ワーナー・ブラザース配給)のクライマックスとなる。

 南アフリカでの、黒人として初の大統領となったネルソン・マンデラを、モーガン・フリーマンが演じる。モーガン・フリーマンは、すでにマンデラ本人にも会っている。リアルなのは当然である。マンデラは、白人や黒人など、いろんな民族で構成される南アフリカを、差別のない国にしようと、ワールドカップに出るラグビーチーム、スプリングボクスを国をあげて支援しようとする。映画は、マンデラが大統領になったころから始まり、ラグビー・ワールドカップでの、スプリングボクスの奮戦ぶりを描いていく。

 これがじつにきめ細かく、爽やか。素直に心打たれる。スポーツによって、人心をまとめ上げようとするマンデラの政策が、マンデラの人となりと重なっていく。

(C) 2009 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

 映画「マンデラの名もなき看守」に描かれたように、マンデラは人格者である。アパルトヘイト(人種隔離政策)に異を唱え、黒人の権利を得るために闘う。結果、国家反逆罪で27年もの間、投獄されることになる。南アフリカにおける政治の実情については詳しくは知らないが、いまなお、人種差別は根強く残っていると聞いている。

 それにしても、クリント・イーストウッドの演出は、ぶれがなく正攻法、前半から、映画の背景となる南アフリカの様子を丹念に描いていく。サッカーに打ち込むのは黒人たち、ラグビーは白人のスポーツである。そのようななかに、マンデラを乗せた車が走る。マンデラが採用したガードマンは、白人ばかり。いつまでも、憎しみあっていても仕方がない。マンデラは「赦す」ことを最優先する。

 さりげなく、ユーモラスなシーンも多く描かれる。サッカーは暴れ者の闘う紳士のスポーツ、ラグビーは紳士の闘う暴れ者のスポーツ、と。ラグビーの試合は、迫力たっぷり。試合の進行とその周辺を描くクリント・イーストウッドの余裕ある演出ぶりが、十分、楽しめる。

 「チェンジリング」「グラン・トリノ」と続けての傑作のあとである。ウェルメイドに徹しての余裕、まだまだ先があるように思える。

Related article

  • 日本初、マレーシアの映画の現在を見つめる「シネ・マレーシア2013」
    日本初、マレーシアの映画の現在を見つめる「シネ・マレーシア2013」
  • 今週末見るべき映画「歌謡曲だよ、人生は」
    今週末見るべき映画「歌謡曲だよ、人生は」
  • エルメス製作、渾身のドキュメンタリーフィルム
    エルメス製作、渾身のドキュメンタリーフィルム
  • 今週末見るべき映画「ザ・コーヴ」
    今週末見るべき映画「ザ・コーヴ」
  • 謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス 【今週末見るべき映画】
    謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス 【今週末見るべき映画】
  • 心に吹く風 【今週末見るべき映画】
    心に吹く風 【今週末見るべき映画】

Prev & Next

Ranking

  • 1
    コムロタカヒロ氏、インタビュー。「KISS THE HEART#3」
  • 2
    山中俊治ディレクション「骨」展
  • 3
    刀剣における日本の伝統美を映し出す職人技 日本橋三越本店で河内國平個展「光=映=日本刀」
  • 4
    ボンジュール、アン 【今週末見るべき映画】
  • 5
    今週末見るべき映画「幸せのありか」
  • 6
    江戸な縁起ものを暮らしに/其の二「江戸扇子/伊場仙」
  • 7
    デザインから見る、新型MacBookの凄さ(2)
  • 8
    ジャズ名盤講座第5回「ベツレヘム」ビギナー向け19選!マスター向け19選!
  • 9
    30年ぶりの大規模な「フランシス・ベーコン展」
  • 10
    閉幕まであとわずか、必見のディーター・ラムス展

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加