今週末見るべき映画「マイレージ、マイライフ」

2010年 3月 20日 16:30 Category : Art

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 不況、リストラの風は、日本でも、いまなお吹いている。友人たちも何人か、定年を前にリストラ、目下、職探しの最中である。日本では聞かないが、アメリカには、企業になりかわって、リストラを宣告する代理業があるらしい。映画「マイレージ、マイライフ」(パラマウント ピクチャーズ配給)は、ジョージ・クルーニーが、企業に依頼されたリストラ宣告会社のベテラン社員ライアンに扮する。


 毎日のように、全米を飛行機で飛び回り、自信満々、てきぱきと仕事をこなす。年に322日も、出張先のホテル暮らし。アトランタには、生活臭さのないマンションがあるけれど、住む家の必要はない。いわば、気ままな独身貴族を謳歌している。

 ライアンは、リストラを宣告された側の思惑、とまどいは全く無視、ひたすら、巧みなトークでリストラを宣告する。ライアンは、そういった生き方に何の疑いもなく、今日も颯爽と空港やホテルにチェックイン。夢は、マイレージのポイントを1000万ポイント貯めること。これを達成した人は少なく、なにやら、表彰されるらしい。まさにマイレージ人生。人生というスーツケースを、ひたすら軽くした生き方を選んでいる。不況を反映してかの時代背景、そういった設定の面白さがあふれている。 

 今年の第82回アカデミー賞では、作品賞、監督賞(ジェイソン・ライトマン)、主演男優賞(ジョージ・クルーニー)、助演女優賞(ヴェラ・ファーミガ、アナ・ケンドリック)などにノミネートされたが、受賞には至らなかった。


 ある日、ライアンと同じように、あちこちを飛び回っているキャリア・ウーマンのアレックスと知り合う。似たような境遇、たちまち意気投合、すぐにベッドを共にする。

 ライアンは、教育係として、仕事の現場に新人の女性ナタリーを連れていくことになる。皮肉にも、ナタリーは、わざわざ出張しなくても、ネット上のやりとりで仕事を進める合理化を提案する。ライアンにとっては、仕事を奪う敵ですらある。
 
 ふとライアンは、ある出来事から、自らの人生を振り返る。そして、大きな失望にいきあたる。若くても、年をとっていても、誰にでも、人生の曲がり角、ターニング・ポイントはある。とりあえずの成功を手に入れても、ある日、どこかで、これまでの人生が「よし」なのか、「だめ」なのか、どう修正するかを、決断する時が訪れる。

 コメディ・タッチの軽快な展開である。やがてそれが、少しずつ、ほろ苦い状況になっていく。この、笑いのオブラートに包んだほろ苦さや、さりげなく、時代の空気を描くことこそ、かつてのアメリカ映画の伝統でもあり、面白さでもある。まだ若きジェイソン・ライトマンが、この伝統を引き継いだ。

 長い距離、飛行機に乗った結果、マイレージはたくさん貯まる。しかし、「心」のマイレージは、かぎりなくゼロに近い。そんな哀しみをたたえて、本作は、アメリカの「いま」という時代を、鋭く切り取ったと思う。

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