今週末見るべき映画「ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実」

2010年 6月 19日 00:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

 ベトナム戦争が終結して35年になる。このほど、1974年に製作されたドキュメンタリー映画「ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実」(エデン配給)が、日本で初めて劇場公開される。


 いちどテレビで放映されたが、なぜ今まで劇場公開されなかったのか、不思議だった。私たちはもう、ベトナム戦争があったことを忘れてしまったのだろうか?

 沖縄からは、米軍の飛行機がベトナムに飛び立っていた。ベトナム戦争反対の運動は、日本でもかなりの広がりであった。昭和26年の朝鮮戦争のときもそうだったが、ベトナム軍需のおかげか、日本の好景気、高度成長に結びついてもいる。東京近郊の基地では、死体洗浄のアルバイトがあった、とも聞いている。

 「ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実」は、あらゆるドキュメンタリー映画のお手本とも言える傑作である。無駄のない構成、効果的な編集は、見る者を釘付けにする。いろんな人物の演説、発言が、次々と出てくる。アメリカの歴代大統領、政治家、戦争に従軍した兵士、ジャーナリストやアメリカの一般市民。もちろん、ベトナムの人たちの声も。合間に、過去のニュース映像、戦争時の実写フィルム、戦意高揚を狙った劇映画の一部分などが挿入される。


 登場人物の発言は、どのような立場であっても、それぞれの真実だろう。映画は、冷静にして客観的。声高に、戦争反対を叫ばない。だから、どの立場にも組みしない。見事に編集された部分部分から、観客がそれぞれのベトナム戦争を理解することになる。

 アメリカの政治家たちのほとんどの発言は、絶えず、責任を転嫁し、自らが決めた政策なのに、まるで人ごとのよう聞こえる。戦争の現場を体験した兵士たちは、愛国心に燃える者から、批判的な者まで、さまざまである。

 悲惨な被害を受けたのは、死んだり傷ついたアメリカの兵士、その家族だけではない。目ざとい一部の資本家や政治家を除いて、真の被害者は、ベトナムの一般人だろう。国土を爆撃され、家や畑を破壊される。家族を失い、満足に生きることもできない。その生の声は、重く、哀れ。

 なぜ、このような戦争が起きたのか。アメリカはベトナムで何をしたのか。その経緯はどのようなものであったのか。戦争は、アメリカとベトナムに、どのような結果をもたらしたのか。映画は、淡々と、発言と映像を積み重ね、ドキュメントするだけである。

 1975年、第47回アカデミー賞の最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞。監督・製作は、ピーター・デイヴィス。アメリカは、いまなお、イラクその他で、軍事行動を遂行している。

Related article

  • マンチェスター・バイ・ザ・シー【今週末見るべき映画】
    マンチェスター・バイ・ザ・シー【今週末見るべき映画】
  • 今週末見るべき映画「白夜のタンゴ」
    今週末見るべき映画「白夜のタンゴ」
  • エンドレス・ポエトリー 【今週末見るべき映画】
    エンドレス・ポエトリー 【今週末見るべき映画】
  • 今週末見るべき映画「華麗なるアリバイ」
    今週末見るべき映画「華麗なるアリバイ」
  • 心と体と 【今週末見るべき映画】
    心と体と 【今週末見るべき映画】
  • パターソン 【今週末見るべき映画】
    パターソン 【今週末見るべき映画】

Prev & Next

Ranking

  • 1
    iMacとMac miniがアップデート、69,800円から
  • 2
    近未来都市「マカオ」、その建築
  • 3
    ボルボ「V70 2.5T R-DESIGN」発売開始
  • 4
    1960年代の建築運動「メタボリズム」を一望、15日まで
  • 5
    ラグジュアリーな「三角コーン」って?
  • 6
    世界初公開のカチナ!「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」
  • 7
    必見の「ウィリアム・エグルストン:パリ—京都」
  • 8
    東京デザイナーズウィークレポート
  • 9
    今週末見るべき映画「イエロー・ケーキ」
  • 10
    北欧の人々の豊かな暮らしのある風景。ホンマタカシ写真展「北欧建築とか。」

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加