今週末見るべき映画「ルイーサ」

2010年 10月 15日 12:00 Category : Art

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 このところ、アルゼンチンの映画が、相次いで公開され、うれしい限り。なぜなら、アルゼンチン・タンゴが好きだから。アルゼンチン・タンゴの巨匠たちが、一同に介してのドキュメンタリー「伝説のマエストロたち」や、今年のアカデミー賞で、最優秀外国語映画賞を受賞した「瞳の奥の秘密」など、いずれもコクのある秀作であった。

 やはり、アルゼンチン映画「ルイーサ」(Action Inc配給)の舞台は、首都ブエノスアイレス。地下鉄会社が公募した、地下鉄を舞台にした脚本コンクールの大賞を受賞した作品の映画化である。新たな人生を踏み出さざるを得ない、初老の女性を、鋭い人間観察と、ほどよいユーモアで描いた物語。練られた脚本、達者な演技と相俟っての、これまた秀作である。


 ひとり暮らしの女性、ルイーサは60歳。職を失い、経済的に最悪の状況に陥る。それまでの、判で押したような、まったく同じ繰り返しの日々でなくなる。いままでの生き方を変えざるを得ない。貯金もない。すぐに、日々の糧を稼がなくてはならない。そこで、ルイーサは、どのような行動を起こすのか?

 ルイーサに扮する、舞台女優のレオノール・マンソの圧倒的な演技が、ぐいぐい、見るものを引きつける。ルイーサが、地下鉄で出会う物乞いの老人、オラシオに扮するジャン・ピエール・レゲラスが、飄々とした風貌で、レオノール・マンソを支える。

 ルイーサは、世間知らずといっていい。だけど、恐る恐るながらも、気丈夫に、いままでの人生から、一歩、踏みだそうとする。


 南半球で最初に建設されたという、ブエノスアイレスの地下鉄はもちろん、コリエンテス大通りとヌエベ・デ・フリオ通りの交差する場所に聳えるオベリスクや、オンセなどの町並みなど、ブエノスアイレスのいまが、活写される。

 レオノール・マンソは、サミュエル・ベケットの傑作戯曲「ゴドーを待ちながら」などを演出したキャリアを持つ演出家でもある。初老の女性の、直面する人生の曲がり角を演じて、貫禄である。

 専門用語で、銀残し(ブリーチバイパス)というネガ処理。コントラストの強い映像から、ルイーサの心象風景が、くっきり、浮かび上がるよう。

 誰しも、遅かれ早かれ、大きな人生のターニング・ポイントに出会う。一歩、踏み出さないことには、生きていけない。貧困、孤独、迫り来る老いに直面しての、ルイーサのとった行動は、なにかしらの生きる力、勇気を、見るものに与えてくれるはず。

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