「極める」という言葉を辞書で引くと、「これより先はないというところまで行き着く」「極点に達した状態になる」といった内容が記されている。私たちは普段「~を極めた○○」などという言葉を安易に使ってしまいがちだが(それはライターという職種に多く存在するが)、果たしてその本質をどこまでつかんでいるのだろうか?
いま一度、この言葉の意味を(自戒を込めて)問いかけたいと思う。なぜなら、これから紹介するプロジェクトは、「極める」という言葉をなくしては語ることのできない存在だからだ。

1000年を超える歴史を持ち、その製造技術はほとんど口伝でのみ伝えられていく日本刀。日本人であれば誰しも、この最高峰の伝統工芸にある種の「極み」を想像することは容易いだろう。
そこには、ほとんどの人は近付くことのできない神秘的な工匠の奥に、日本人の精神と美意識が宿っていることを歴史から学んでいるからだ。しかし、当然のごとく時代は変遷している。どれほど崇高な技巧であっても、その価値を享受する者がいなければ、あらゆるものごとはやがて途絶えてゆく。
だが、今年3月に発表された「aikuchi」は、世界的なデザイナーであるマーク・ニューソンを招き入れ、日本が誇る刀匠とのコラボレーションをはかるという大胆な試みによって、日本刀を現代の最高峰のアートピースに革新してしまった。
